企業概要
楽天グループは、インターネットサービス・情報通信サービス・金融サービスなどを展開するIT会社。1997年に三木谷浩史がインターネット販売サイトとして創業。2000年には東京証券取引所での株式公開を果たし、その後は同業他社を次々と傘下に収めて日本を代表するIT会社へと飛躍。2004年にはプロ野球チーム運営にも進出して楽天イーグルスを創立。現在では、70以上のインターネットサービス・金融サービスによって『楽天経済圏』と呼称される巨大グループを形成。
・インターネット業界首位、多種多様なサービスで『楽天経済圏』を形成
・モバイル事業の難航で巨額赤字を連続計上、財務体質も社債発行で悪化
・平均年収794万円だが、平均勤続年数が4年前後に留まり伸び悩む
就職偏差値
✔就職偏差値:64(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
グループ全体での採用数は年間300人~700人の大量採用で門戸はかなり広い。総合職の出身大学もハイレベル大学~中堅大学まで幅広く、大学名には極めて寛容。
採用大学:【国公立】東京工業大学・神戸大学・広島大学・香川大学・京都府立大学・山口大学・広島市立大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・立命館大学.日本大学・獨協大学・成蹊大学・国士舘大学・デジタルハリウッド大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
楽天グループの売上高は過去8年以上に渡って右肩上がりの成長が続いており、直近では2兆円を突破。日本発祥のネットビジネス企業としては業界2位のLINEヤフーを抑えて首位の売上高を誇る*1。営業利益は2018年をピークに急悪化、2020年以降は巨額の営業損失を連続計上する状況*2。
*1:当社が事業拡大を続けている理由は、①楽天カード・ポイントを中核とした『楽天経済圏』による顧客囲い込みに成功した点、②バーコード決済・モバイル通信など社会情勢に応じたサービスに柔軟に積極進出してきた点、③数多くの同業他社を買収してきた点、にある。
*2:2020年頃から当社はモバイル通信事業に参入したが、想定を上回る初期投資に苦しめられた他、通信品質の問題などで顧客獲得に苦戦。同事業の巨額赤字が全社利益を毀損している状況。
✔セグメント別の状況
楽天グループは、インターネットサービス事業(インターネット小売・旅行予約・広告、デジタルコンテンツサイト)、フィンテック事業(クレジットカード・ネット銀行・ネット証券・暗号通貨媒介・生命保険・損害保険・電子マネーなど)、モバイル事業(楽天簿モバイル・電力供給サービスなど)、の3事業を有する。
当社は祖業であるインターネットサービスを主力としつつ、クレジットカード・ネット銀行・ネット証券などの金融領域に積極進出してきた。直近でもインターネットサービス事業・フィンテック事業は黒字だが、モバイル事業だけで▲3,000億円以上の赤字を計上しているため全社利益は大幅赤字に沈んでいる。
✔最終利益と利益率
楽天グループの純利益は2019年からモバイル事業の難航によって赤字が続いているうえ、2022年からは純損失3,000億円以上へと赤字幅が拡大。営業利益率も2020年からは▲6%~▲10%が続いており、本業での赤字が慢性化している状況。
✔自己資本比率と純資産
楽天グループの自己資本比率は過去8年間に渡って低下傾向にあるうえ、直近では3.7%と極めて低水準*3。純資産は2021年を除けば長期的に0.6兆~0.8兆円レベルでの横ばいが続いている。
*3:当社はモバイル事業への巨額投資のため、総額1兆円を上回る社債を発行して資金調達した経緯がある(参考リンク)。この巨額返済と利子支払いに苦しむ状況にある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
楽天グループの平均年収は緩やかな増加傾向が続いており、直近で794万円ほど。大卒初任給で30万円/月(月40時間分の固定残業代を含む)。30代中盤には年収700万円を超えるが、年功序列による昇給は一切ないために一定の成果が求められる。
✔従業員数と勤続年数
楽天グループの単体従業員数は長期的に増加傾向が続いており、直近では1万人を超えている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3.08万人ほど。平均勤続年数は4年前後で伸び悩んでおり、従業員の定着はあまりよくない。
総合評価
企業格付け:B
日本発祥のIT企業としては最大規模を誇り、売上高においては業界2位のLINEヤフーを抑えて首位に立つ企業。かつては『楽天市場』が主力であったが、クレジットカード・ポイント制度を中核とした『楽天経済圏』によって成長。今では70以上のインターネットサービスを提供しており、生活に必要なほぼすべてを『楽天経済圏』内にて充足できるほど。ただし業績は2020年のモバイル事業参入から極めて苦戦しており、巨額赤字を連続計上。2019年からの純損失は累計1兆円にも達しており、当社の企業規模からすると非常に苦しい。財務体質も急速悪化しており、高利回りの社債発行を重ねることで凌いではいるが、この債務返済についても累計1兆円以上に及ぶ。この状況を打開するために虎の子であった楽天銀行・楽天証券の株式を売り出して資金確保に努めているが、慢性赤字のモバイル事業を繋ぐために稼ぎ頭であるはずの金融部門を切り出してしまったことは将来的な成長への逆風とならないかが懸念される。
就職格付け:CCC
日系IT企業としてはトップクラスの知名度を誇り、日本人であれば何かしらのサービスは利用したことがあるであろう企業。実態は今や大企業であるものの、メガベンチャーの気風も持ち合わせるために「大企業は嫌だがベンチャーも怖い」求職者からの人気を集めてきた。給与水準は、大卒初任給で30万円/月とかなりの高水準であるが、これは月40時間分の固定残業代を含むために残業代で稼ぐ余地がないのは注意点である。入社後は年功序列による定期昇給は一切ないため、一定の実力・成果を示さなければ昇給にはならない。福利厚生としては社員食堂無料・ストックオプション制度などがあるが、住宅補助制度は(新卒者向けの独身寮を除いて)ないために住宅コストは全額自己負担となるのが辛いところ。退職金制度が2018年から導入されたことは朗報であるが、最低でも3年間の勤続年数がなければ対象にはならない。平均勤続年数が4年前後での横ばいが続いており、従業員の入れ替わりはそれなりに大きい。