企業概要
森永製菓は、ビスケット・チョコレート・アイスクリームなどを製造販売する製菓メーカー。1899年に森永太一郎が東京都・赤坂でマシュマロ店として創業。戦前からチョコレート・キャラメル・ガムなど洋菓子を幅広く手がけた。1984年にはグリコ森永事件に巻き込まれ、多大な損失に直面。2008年には米国進出を果たし、現地に生産工場を開業。現在では菓子メーカーとして業界4位の売上高を誇る他、森永乳業と共に森永グループを形成している。
・菓子業界で第4位、ゼリー飲料と冷菓が全社利益を支える
・売上高・利益いずれも安定的だが成長性も薄い、財務体質は大いに健全
・平均年収759万円で福利厚生も良いが、待遇の割に入社難易度が高い
就職偏差値
✔就職偏差値:65(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。給与・待遇は大手企業の中でも上位クラス、満足度の高い人生を安定して歩むことができる可能性が高い。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:至難
総合職の採用数は年間20人~40人とかなり少なめであるうえ、一般知名度の高さと企業イメージもあって極端な高倍率に。よほどの情熱と実績を持ったうえで応募する必要がある。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・九州大学・神戸大学・東京工業大学・千葉大学・島根大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・上智大学・東京農業大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
森永製菓の売上高は長期的に1,900億〜2,100億円ほどで横ばいだが、2020年頃には1,682億まで減少*1。営業利益は長期的に150億〜210億円ほどで安定的。
*1:売上高が2020年に急減した理由は、①同年から「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)」を適用したこと、②COVID-19感染拡大期における菓子販売の減少、③日本ケロッグとの「プリングルズ」販売店契約の終了、など。
✔セグメント別の状況
森永製菓は、菓子食品事業(ビスケット・ガム・チョコレート・ココアなど)、冷菓事業(チョコモナカなどのアイスクリーム菓子)、in事業(ゼリー飲料・プロテインバーなど)、通販事業(通販専用ドリンク類)、米国事業(アメリカ)、中国他事業(中国・台湾・その他地域)、その他事業(ステラおばさんのクッキー、不動産賃貸・食品卸売・アレルゲン検査)、の4事業を有する。
当社は菓子メーカーのイメージが強いが、実際には菓子食品事業・冷菓事業・in事業が3本柱となっている。とりわけin事業は、同事業だけで全社利益の45%を稼ぎ出すドル箱事業となっており、今や菓子・冷菓を上回る利益貢献を果たしている。
✔最終利益と利益率
森永製菓の純利益は、長期的に100億〜150億円ほどで推移。2021年のみ純利益277億円に増加しているが、これは一過性の要因*2。営業利益率も長期的に9%〜10%ほどで推移しており、食品メーカーとしてはやや高め。
*2:2021年に純利益が急増した理由は、同年に当社が保有していた森永乳業の政策保有株を売却したことが主要因。この売却によって特別利益219億円を得たことで利益急増した経緯がある(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
森永製菓の自己資本比率は長期的に50%~60%レベルでの推移となっており、安定した財務基盤を確立できている。純資産は2021年頃まで右肩上がりの増加傾向にあったが、同年以降は1,100億~1,200億円ほどで横ばい。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
森永製菓の平均年収は2017年までは800万円を超えていたが、同年以降は760万円〜780万円で推移*2。大卒総合職であれば30歳で500万~550万円ほど*2、課長職レベルで1,000万~1,100万円ほど。平均年齢はやや増加傾向だが、直近でも43.5歳と大手企業の標準的水準。
*2:平均年収は780万円ほどと業界上位級だが、年功序列色が強いため若手社員の昇給スピードが遅めとなっている。
✔従業員数と勤続年数
森永製菓の単体従業員数は長期的な微増傾向が続いており、直近では1,504人となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3,100人ほど。平均勤続年数は19.3年と極めて長めであり、従業員の定着がよい。
総合評価
企業格付け:BB
製菓業界において第4位に位置する森永グループの大手菓子メーカー。戦前から菓子製造において存在感を発揮、チョコレート・ビスケット・マシュマロなどの大衆化に貢献した名門である。が、人口減少と少子高齢化による国内市場の飽和によって、業績は横ばい傾向。売上高・利益いずれも良く言えば安定的、悪く言えば成長しろが薄い。菓子業界としては高めの営業利益率を誇るが、これは1994年に参入したゼリー飲料「in」シリーズの卓越した利益交換の賜物。祖業の菓子事業の約4倍もの利益を稼ぎ出しており、当社の高利益率を根幹から支えている。第2の利益の柱である冷菓事業と合わせると、この2事業だけで全社利益の約70%弱を稼いでいる。財務体質は大いに健全な水準で安定しており、自己資本比率は60%前後で安定的。総じて安定企業であるが、稼ぎ頭のin事業と冷菓事業に何かしらの逆風が起こった場合には利益水準が相当に落ち込むリスクはあるか。
就職格付け:BB
日本人ならば誰もが知るであろう大手菓子メーカーの一角。代表的な製品には「チョコボール」「ハイチュウ」「チョコモナカジャンボ」などが揃う。給与水準は過去8年間に渡って微減傾向にあるが、それでも平均年収730万〜750万円ほどで推移しており、菓子業界においては最上位クラスの待遇。年功序列色が強いため若手社員の昇給ペースは遅いが、勤続年数を重ねて課長職レベルになれば年収1,000万円には届く。福利厚生もかなり良好であり、若手社員は入社10年目まで借上社宅に月額家賃額の30%の自己負担で居住できる。その後も非管理職であれば月額2万円の住宅補助が支給される。が、当社最大のネガティブポイントは入社倍率の圧倒的な高さ。有名企業かつ菓子業界という敷居の低そうなイメージから応募者が殺到するが、総合職の採用数は年間20人〜40人ほど。大抵の人気企業を遥かに上回る倍率に達するため、入社する難易度は著しく高い。仮に入社できたとて給与面では中堅上位メーカー級の待遇であり、事業規模は売上高2,000億レベルと知名度の割にはかなり小さい。生半可な判断で応募する前に、己の覚悟をしっかり自問自答しておきたい。