企業概要
東芝は、社会インフラ・電子機器・デジタル製品などを主力とする大手電機メーカー。1875年に田中久重が電信機メーカーとして創業。1932年には東京電気と合併して『東京芝浦電気』となり、国内最大級の電機メーカーへと拡大。終戦後には家電・発電機・産業機器など事業多角化を推進、1990年代には汎用メモリで世界首位級へと躍進。2000年代には競争激化に苦しみつつも、数多くの世界発となる製品を生み出し続けた。が、2015年に不適切会計問題が発覚、各事業の分社化・売却により社会インフラ事業を中核とする事業形態へと再編。
・社会インフラを中核とする総合重電メーカー、経営危機からの再建が進む
・売上高3兆円レベルに縮小するも、財務体質の健全化に成功
・平均年収926万円で福利厚生もかなり良好、平均勤続年数21年超
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:67(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間330人~370人とかなり多め。事務系採用枠は100名ほどに過ぎず、技術系採用枠が圧倒的に多い。一時期は不適切会計問題で人気を落としたが、最近ではやや回復傾向。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・名古屋大学・東北大学・神戸大学・筑波大学・横浜国立大学・電気通信大学・九州工業大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・上智大学・明治大学・立教大学・関西学院大学・関西大学・法政大学など(出典:就職四季報)
業績動向
✔売上高と営業利益
東芝の売上高は2015年に発覚した不適切会計問題に端を発した事業売却*1を経て、現在では3.0兆~3.8兆円ほどで推移している。営業利益は2023年まで350億~1,580億円ほどで推移しているが、2024年には1,985億円に上振れしている。
*1:当社は2016年に米原子力子会社・ウエスチングハウスの経営破綻によって純損失9,656億円を計上(参考リンク)。債務超過に陥ったことで半導体メモリ事業(東芝メモリ)、家電事業(東芝ライフスタイル)・医療機器(東芝メディカルシステムズ)、産業機械事業(東芝機械)などを売却。これにより企業規模が縮小した経緯がある。
✔セグメント別の状況
東芝は、エネルギーシステム事業(原子力発電システム・火力発電システム)、インフラシステム事業(公共インフラ、鉄道・産業システムなど)、ビルソリューション事業(エレベーター・エスカレータ、照明器具、空調機器など)、リテール&プリンティング事業(POSシステム・複合機など)、デバイス&ストレージ事業(半導体・ハードディスク装置など)、デジタルソリューション事業(IoTソリューション・ERP・産業用コンピュータなど)、その他事業(電池など)、の7事業を有する。
かつての当社は数多くの家電製品を展開していたが、現在では社会インフラを中核とするBtoB分野へと事業再編が進められている。最大の稼ぎ頭はインフラシステム事業とデバイス&ストレージ事業であったが、デバイス&ストレージ事業はキオクシアとして分社化・上場を果たしている。
※当社は2023年からセグメント情報が非公開となったため、2022年のセグメント情報を掲載しています。
✔最終利益と利益率
東芝の純利益は2017年・2018年に8,000億~1兆円ほどに上振れたが、これは旧・東芝メモリの株式売却益が主要因*2。同年以降は▲1,140億~2,790億円で推移している。営業利益率は2023年まで1%~4%で停滞していたが、2024年には5.64%に上振れしている。
*2:当社は2016年に債務超過に陥ったことを受けて、東芝メモリの株式を段階的に売却。この売却益が2017年・2018年に計上されたことで純利益が急増した経緯がある。
✔自己資本比率と純資産
東芝の自己資本比率は2015年の不適切会計問題によって2016年に債務超過に転落していたが、同年以降は回復傾向。2022年は自己資本比率35.2%となっており、財務健全性は問題がない水準となっている。純資産は1.0兆円~1.69兆円での横ばい傾向が続いている。
※当社は2023年から自己資本比率・純資産が非公開となったため、2022年までの情報を掲載しています。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
東芝の平均年収は810万~920万円ほどで推移しており、電機メーカーとしては高めの水準。ただし、この平均年収は持株会社の従業員から算出されており、事業会社の従業員の平均年収は含まれていない。大卒総合職の場合、30歳で年収550万円~640万円ほど、課長職レベルで年収1,150万~1,250万円ほどが目安。
※当社は2023年から平均年収が非公開となったため、2022年までの情報を掲載しています。
✔従業員数と勤続年数
東芝の単体従業員数は2022年まで2,600人~3,700人ほどで推移していたが、2023年には5,818人まで上振れしている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は9.51万人ほどの巨大組織となっている。平均勤続年数は21.1年(2024年)となっており、大手企業の標準的な水準を上回る。
総合評価
企業格付け:BB
戦前から『東京芝浦電気』として発展した名門中の名門たる総合重電メーカーであり、かつては家電・半導体・重電・産業機械など極めて広範な事業範囲を擁する一大グループとして君臨した企業。が、利益水増しの不適切会計問題(2015年)と米原子力子会社・ウエスチングハウスの経営破綻(2017年)による経営危機を経て、現在では社会インフラを中核とする重電メーカーとして再出発を遂げている。業績においては経営危機からは脱することに成功しており、過去8年間に渡って売上高3兆円レベル・営業黒字を確保できている。2000年代の売上高7兆円超と比べれば縮小の感はあるが、経営危機からの脱出を考えればやむを得ない。財務体質においては自己資本比率35.2%(2022年)とまずまずの水準であるが、2016年に債務超過に転落していたことを思えば迅速な立て直しができた方であろう。
就職格付け:BB
平均年収926万円(2022年)と電機メーカーとしては上位級の待遇であり、日立製作所(935万円・2024年)と比べても引けを取らない。…が、当社は事業会社を子会社化しているため、平均年収が持株会社の従業員5,818人の平均年収であるため、単体従業員数2.8万人の平均年収として算出している日立製作所とはフラットな比較はできない。実際には、大卒総合職の場合、30歳で年収550万円~640万円ほど、課長職レベルで年収1,150万~1,250万円ほどが目安となるだろう。福利厚生においては大手企業なりの待遇が用意されており、若手社員は独身寮・借上げ社宅などにより月額の住居費負担は1万~3万円ほどに抑えられる。経営危機を経て従業員の定着を高めるため、テレワークを活用したハイブリッド勤務(週1~4日ほどの出社)や副業解禁なども推進するなど、魅力的な働き方の拡充にも取り組む(参考リンク)。