企業概要
村上開明堂は、自動車用バックミラー・電子ミラー・光学部品などを製造する自動車部品メーカー。1882年に漆器用金具メーカーとして創業、それから昭和中期までは金具・ガラス・鏡・プラスチック製品などを製造していた。が、1958年にトヨタ自動車向けにバックミラーを生産したことを転機として自動車部品メーカーへと業態転換。創業以来の金属・鏡の技術を活かしてバックミラー専門メーカーとして躍進した。現在では国内シェア40%・世界シェア4%ほど、日系自動車メーカーとの取引関係が深い。
・バックミラーで国内首位の中堅自動車部品メーカー、静岡県が地盤
・売上高は成長するも利益は横ばい、財務体質は堅実で利益率も良好
・平均年収681万円で静岡県内での勤務可能性が高い、独身寮は家賃格安
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:56(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用数は年間7名〜15名に留まるが、一般知名度が極めて低いために選考倍率は高まりにくい。静岡県出身者のUターン就職先としては有望であろう。
採用大学:【国公立】金沢大学・静岡大学・信州大学・三重大学・岩手大学・山梨大学・静岡県立大学など、【私立】立命館大学・学習院大学・南山大学・日本大学・駒澤大学・玉川大学・神奈川大学・東京理科大学・芝浦工業大学・東京電機大学・工学院大学・静岡理工科大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
村上開明堂の売上高は2021年まで720億〜770億円ほどで推移していたが、同年以降は増加傾向*1。2024年には過去最高となる1,092億円に到達している*2。営業利益は50億〜80億円レベルで安定的に推移しており、2024年には過去最高となる88億円に到達している。
*1:2022年に売上高が急増した理由は、業績悪化に陥った自動車部品中堅・ミツバから同社子会社・大嶋電機製作所を買収したことが要因。大嶋電機製作所はドアミラー・ランプなどを手掛けており、当社とのシナジー性が高いと判断しての買収であった(参考リンク)。
*2:2024年に売上高が増加した理由は、①世界的な原材料費・労務費の高騰を受けた値上げ対応の進行、②為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
村上開明堂は、日本事業(自動車用バックミラー・電子ミラー・光学部品の製造)、アジア事業(タイ・中国・インドネシアにおける製造)、北米事業(米国・メキシコにおける製造)、の3事業を有する。
村上開明堂は世界5ヵ国で事業展開するが、売上高の半分弱を日本国内において確保している。ただし、利益面では約50%をアジア事業で確保しており、海外市場の利益率の高さが際立つ。主要取引先はトヨタ自動車・日産自動車・本田技研工業・マツダ・三菱自動車工業・スズキ・ダイハツ工業など。
✔最終利益と利益率
村上開明堂の純利益は長年に渡って30億〜60億円レベルで安定的。ただし、2022年に売上高が急伸した割に純利益は伸び悩んでいる印象。営業利益率は6%〜8%レベルで長期的に推移しており、自動車部品メーカーとしては高めの利益率である。
✔自己資本比率と純資産
村上開明堂の自己資本比率は長期的に70%レベルで安定的に推移。安定した利益体質を加味すれば、財務健全性は十分に良好であろう。純資産は増加傾向が続いており、2024年には922億円に到達している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
村上開明堂の平均年収は長年に渡って580万~640万円ほどの水準で安定的に推移していたが、2024年には681万円に上振れしている。大卒総合職の場合、30歳で430万〜550万円、課長職レベルで750万〜880万円ほど。平均年齢は43.1歳(2024年)と大手企業の標準的な水準を上回る。
✔従業員数と勤続年数
村上開明堂の単体従業員数は長期的に890人〜960人ほどで横這い。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3,740人ほど。平均勤続年数は18.7年(2024年)と大手企業の標準的な水準を上回る。
総合評価
企業格付け:DD
自動車用バックミラーにおいて日系首位のシェアを誇る日系自動車部品メーカー。鏡タイプのバックミラーのみならず、最近では車体後部のカメラからの映像を投影する電子ルームミラーも手掛けており、自動車の安全性向上に大きく貢献している。業績においては2022年から売上高を伸ばしており、2023年には売上高1,000億円の大台を突破。業績不振に陥った同業のミツバから買収した大嶋電機製作所(現・村上開明堂東日本)による規模拡大に加えて、為替レートの円安推移も追い風となっている。利益確保力は底堅いものがあり、自動車業界が急激な業績悪化に見舞われたCOVID-19感染拡大期においても利益をしっかり確保した実績を有する。最近こそ営業利益率が低下傾向だが、2017年頃には営業利益率10%を上回っていた時期もあり自動車部品メーカーとしては利益率もかなり高めである。財務体質においては極めて堅実であり、自己資本比率70%を上回っており無借金経営に等しい水準。…と総じて優秀であるが、いかんせん売上高1,000億円規模なので、自動車部品メーカーとしての企業規模は中堅下位クラス。バックミラーという枯れた技術であるが故に当面は安泰だが、電子ミラー・カメラの普及が将来的に進んでくると大手電機メーカーなどが競合になるリスクはあるかもしれない。
就職格付け:DD
物珍しい社名の通り、創業140年以上の歴史を持つ老舗メーカー。自動車部品メーカーへと転じたのは1950年代であるが、それから数えても60年以上の歴史がある。創業者一族である村上家の影響力が強い企業であり、現在の代表取締役社長も同家出身者。給与水準においては平均年収681万円(2024年)と、中堅自動車部品メーカーの標準的水準。大卒総合職の場合、30歳で430万〜550万円、課長職レベルで750万〜880万円ほどにはなる。福利厚生においても中堅メーカーそのものであるため特筆すべき点はないが、独身寮の家賃は5,000円/月と極めて良心的。若手社員は格安価格で生活できるため貯金が捗るだろう。就職を考えるにあたってのポイントは、本社・工場・物流センターすべてが静岡県内に集中している点。静岡県に根を下ろして生活したい場合には確実にその狙いを果たせるため、無用な転勤リスクに苦しまずに人生を過ごせる。平均年収はそこまで魅力的な水準ではないが、静岡県内であれば居住コストが安いため、都心部で同額を得るよりも実質的な幸福度を高く持てるのは大きな強み。静岡県での就職を考える場合には隠れ優良の中堅企業として選択肢に入るだろう。