企業概要
富士通ゼネラルは、ルームエアコン・ビル用エアコン・ヒートポンプ式温水暖房システムなどの空調関連機器を製造・販売する電機メーカー。1936年に八尾敬次郎が蓄音機メーカーとして創業、戦後には”ゼネラル”ブランドでテレビ・クーラー・冷蔵庫などを製造。1984年に富士通と資本業務提携を締結、翌年の1985年に現社名の富士通ゼネラルへ社名変更。1993年に世界で初めてプラズマディスプレイを商品化。1990年代には名門テレビメーカーとして君臨したが、2008年にはテレビ市場の競争激化により撤退。現在では空調機器を主力製品として事業展開。
・富士通Gの空調機器メーカー、海外売上高比率80%以上のグローバル企業
・売上高・利益いずれも安定的、財務体質も自己資本比率45%と良好
・平均年収722万円と準大手クラスの待遇、福利厚生もそこそこ充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:62(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用数は年間60人~70人と企業規模なり。一般知名度は低くないうえ”富士通”ブランドを掲げる大手空調機器メーカーゆえに、選考倍率は決して低くはならない。
採用大学:【国公立】九州大学・北海道大学・筑波大学・横浜国立大学・埼玉大学・静岡大学・東京都立大学・電気通信大学・長岡技術科学大学など、【私立】早稲田大学・同志社大学・明治大学・立教大学・法政大学・日本大学・東京理科大学・東京電機大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
富士通ゼネラルの売上高は2,500億~2,800億円レベルで安定していたが、2022年に過去最高となる売上高3,710億円まで増加*1。営業利益は2021年・2023年を除けば140億円~200億円ほどで推移している。
*1:2022年の業績拡大の理由は、①世界的な原材料価格の高騰を受けた販売価格の値上げ、②為替レートの円安推移による為替効果での増収効果、③ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー不足に陥った欧州市場におけるヒートポンプ式温水暖房システムの販売急造、など。
✔セグメント別の状況
富士通ゼネラルは、空調機事業(ルームエアコン・ビル用エアコン・ヒートポンプ式温水暖房システム・サービスメンテナンスなど)、テックソリューション事業(消防システム・防災システム・外食産業向けソリューション・車載カメラ・パワーモジュールなど)、その他事業(家電リサイクル・電磁波障害コンサルティング)の3事業を有する。
かつての当社は映像機器部門や家電部門を保有していたが、現在では空調機事業が売上高の約89%を稼ぐ事業構造となっている。テックソリューション事業として展開するBtoBソリューションは、売上高に占める割合は小さいが、全社利益の約41%を占めるまでに拡大している。
✔最終利益と利益率
富士通ゼネラルの純利益は30億~130億円レベルで推移しているが、2024年には▲39億円と赤字転落している*2。営業利益率は2020年までは5%~7%で推移していいたが、同年以降は1%~4%に低下。
*2:2024年に純損失▲39億円に転落した理由は、テックソリューション事業における不採算事業からの撤退による特別損失78.9億円の計上が主要因(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
富士通ゼネラルの自己資本比率は概ね45%~50%ほどで推移しており、負債に依存しすぎない事業運営ができている*3。純資産は増加傾向が続いており、2024年には純資産1,394億円に到達。
*3:当社はリーマンショック直後の世界的な景気後退局面も含めて純利益を堅実に確保。過去15年間で着実に利益を積み重ねたことで財務体質を良化させてきた経緯がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
富士通ゼネラルの平均年収は700万円前後で推移しており、大手電機メーカー未満・中堅メーカー以上の給与水準。大卒総合職なら30歳で年収550~650万円、課長職レベルで850~900万円ほど。平均年齢は42.6歳と大手電機メーカーと同水準。
✔従業員数と勤続年数
富士通ゼネラルの従業員数は緩やかな増加傾向が続いており、直近の2022年には1,729人に到達。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は8,300人ほど。平均勤続年数は17年前後の水準であり、大手企業として標準的な水準。
総合評価
企業格付け:CCC
富士通グループの空調機器メーカーであり、エアコン業界ではダイキン工業に次ぐ準大手の立ち位置。かつてはプラズマディスプレイなど映像機器・家電製品を主力としていたが、2000年代以降に事業再編。競争力が高かった空調機器へ集中したことで、利益を安定的に確保できる事業ポートフォリオを確立した。業績においては売上高・利益いずれも安定的だが、2022年には過去最高となる売上高3,710億円に急増。為替レートの円安推移による増収効果もあるが、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー不足に陥った欧州市場において同社のヒートポンプ式温水暖房システムの拡販が進むなどの追い風を享受。2024年には純損失に転落しているが、従前よりの課題であったテックソリューション事業の再編に関わる一過性の損失であるため、然程の問題にはならないだろう。2023年から富士通が当社株式の売却を模索していることが報道されてきたが、2025年1月にパロマ・リームホールディングスが当社株式の公開買い付けを実施することが決定(参考リンク)。富士通グループを2025年中には脱することとなった。富士通がデジタルソリューションに注力する状況において、シナジーの薄い空調機器メーカーである富士通ゼネラルの売却を検討するのは当然と言えば当然ではある。
就職格付け:CCC
かつて独立系の映像機器メーカーであった時代に富士通グループ入りを果たしながら、現在では業態転換によって空調機器メーカーへと生まれ変わっている独特の生い立ちの企業。海外売上高比率が80%以上を占めるグローバル空調機器メーカーであり、国内市場よりも海外市場の方が存在感は大きい。給与水準は平均年収722万円(2024年)と大手家電メーカーには及ばないながらも、電機メーカーとしては上位級の給与水準を確保。大卒総合職なら30歳で年収550~650万円、課長職レベルで850~900万円ほどが目安となるだろう。強いて言えば、業績変動による給与水準の乱高下がない点は強みだろうか。福利厚生もそこそこ充実しており、悪くない。家賃補助制度は30歳まで月3万円/月の支給と凡庸だが、年間休日128日と休みは大手電機メーカーをやや上回る。長期休暇においては9~10連休。総じて、ホワイト色が強めで安定した企業である。