企業概要
北海道電力は、北海道全域において発電事業・電気小売事業を展開する電力会社。1951年に日本発送電・北海道支社と中国北海道配電が合併により設立。1989年に道内初となる泊原子力発電所を稼働。電源構成における原子力発電比率を約45%まで高めることで、低コストかつ安定した電力供給に努めてきた。が、2011年の福島第一原子力発電所事故から10年以上に渡って泊原子力発電所は長期停止中。最近では洋上風力の規模拡大に向けて石狩湾洋上風力発電事業に参画。
1.北海道エリア全域への電力供給を担う電力会社、地元財界の雄
2.売上高は過去最高だが大幅赤字、財務体質も自己資本比率が冴えない
3.平均年収750万円で北海道ではトップ級、住宅補助も手厚いが転勤多め
業績動向
✔売上高と営業利益
北海道電力の売上高は2020年まで5,800億~7,200億円ほどで安定していたが、2022年には過去最高となる8,889億円まで急伸*1。営業利益は長期的に250億~530億円ほどで安定していたが、2022年には営業赤字225億円に転落*2。
*1:2022年にはロシアによるウクライナ侵攻で燃料油価格が急騰。燃料価格の上下変動を電気料金に転嫁する燃料費調整額が急増したことで売上高が急増した経緯。
*2:北海道電力が20222年に営業損失にしている主要因は、①燃料費価格・卸電力価格の上下変動による損失、②燃料価格の高騰による燃料費調整制度の⼤幅な期ずれ差損、など。
✔セグメント別の状況
北海道電力は、北海道電力事業(火力・原子力・再生可能エネルギーの発電・販売など)、北海道電力ネットワーク事業(送電線・配電線などの送配電ネットワークなど)、その他事業(北海電気工事・ほくでんサービス・北海道総合通信網・ほくでん情報テクノロジーなど)、の5事業を有する。
北海道電力は北海道電力事業・北海道電力ネットワークが売上高の約94%を占めており、事業多角化はあまり進んでいないようにも見える。しかし、利益においては北海道電力事業・北海道電力ネットワークが2022年は赤字転落しているため、その他事業だけが黒字計上している。
✔最終利益と利益率
北海道電力の純利益は2020年に362億円を記録*3したが、同年以降は減少傾向。営業利益率は2019年までは5%~7%程と電力会社の中では高めだが、2021年以降は低迷傾向。
*3:2020年の純利益の増益は、①大寒波による電力小売量の増加、②燃料調達・施設修繕コストの低減、が主要因。
✔自己資本比率と純資産
北海道電力の自己資本比率は長期的に15%未満で推移しており低水準。直近の2022年には11.7%に過ぎず、低迷が続いている*4。純資産は2020年をピークに減少しており、直近では2,581億円まで下落。
*4:経済産業省の有識者審議会は一般電気事業の適切な自己資本比率を30%と掲げるが、東北電力の自己資本比率はこれを下回る推移が続いている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
北海道電力の平均年収は直近で750万円となっており、北海道ではトップレベルの給与水準。業績悪化時にも給与水準はほとんど変わらず、安定性も高い。大卒総合職なら30歳で年収520万~620万円ほど、課長職レベルで年収980万~1,150万円レベル。
✔従業員数と勤続年数
北海道電力の従業員数は2020年の分社化で急減少。5,216人(2019年)から2,361人(2021年)まで4,500人規模の減少となった*5。平均勤続年数は直近で19.7年とかなり長く、従業員の定着はよい。
*5:送配電インフラの透明化を目的とした政府方針に従い、送配電事業を東北電力ネットワークとして分社化(参考:資源エネルギー庁)。
総合評価
企業格付け:BBB
北海道全域への電気供給を担う電力会社。長年に渡って北海道財界をリードしてきた名門企業であり、北海道拓殖銀行が経営破綻した後は事実上のトップ企業へと躍進。同じく北海道地盤であるツルハホールディングスやニトリなどに業績面では追い抜かれたとはいえ、地元である北海道における存在感はやはり当社に軍配が上がる。2011年~2013年にかけては福島第一原子力発電所事故の影響によって大幅赤字に転落して厳しい時期が続いていたが、2015年頃から業績はやや好転。しかし最近では世界的な燃料価格の高騰によって再び業績悪化に見舞われており辛い状況ではある。電力会社の大幅な業績悪化を受けて、経済産業省が2023年6月からの電気料金値上げを認可したため、利益体質の改善が期待される。2023年の決算では電気料金引き上げや燃料費調整制度の期ずれによって大幅増益が予定されており、営業利益490億円・純利益310億円まで回復することが見込まれている。
就職格付け:BBB
ほくでんグループの中核企業であり、グループ会社には北海道電力ネットワーク・北海電気工事・北海道パワーエンジニアリングなどを擁する。給与水準は平均年収750万円と大手電力会社と比べると低めであるが、それでも北海道においてはトップクラスの給与水準である。課長職レベルならば年収1,000万円にも達するため、北海道において年収1,000万円を狙える貴重な企業である。福利厚生においても恵まれており、電力会社ならではの家賃補助制度・社宅・独身寮が整備されている。おおよそ住宅コストの70%ほどが会社負担となるため、実際の生活水準は額面の平均年収よりも高い。老朽化が進んだ社宅・独身寮が増えている点にだけは注意が必要だが文句は言えない。給与・待遇だけで言えば当社を上回る会社は日本国内に数多あるが、当社の強みは「北海道という居住コストが安価な地域でそれなりの待遇を得られる」点だろう。東京都内で当社の年収であれば一般庶民レベルの生活にしかならないが、北海道であれば豪邸が建つ。北海道出身者であれば筆頭候補たりうる名門企業だろう。