企業概要
出光興産は、石油・天然ガス・石油化学製品などの製造・販売を手掛ける石油元売企業。1911年に出光佐三が開業した機械油商店を源流とし、1938年にはタンカー日章丸を就役させて石油輸送へ進出。戦時下ですべての事業を喪失するも、戦後には油槽所・タンカー事業へと再進出。1951年には経済制裁下にあったイランへ自社タンカーを派遣して日章丸事件を引き起こした。現在では売上高で国内2位を誇る大手石油元売会社であり、石油化学製品・高機能材・再生可能エネルギーなど事業を多角化。2019年には同業の昭和シェル石油を完全子会社化。
・国内2位の大手石油元売会社、2019年に昭和シェル石油を合併
・売上高・利益いずれも増加基調、財務体質は標準的な水準
・大卒総合職なら30歳・年収750~900万円、福利厚生も手厚い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:73(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間70人~100人ほどだが、大卒総合職の出身大学は旧帝大・早慶がボリューム層。映画「海賊と呼ばれた男」公開後は採用倍率がやや上昇傾向。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・北海道大学・九州大学・広島大学・千葉大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・上智大学・明治大学など(出典:朝日新聞社)
業績動向
✔売上高と営業利益
出光興産の売上高は右肩上がりの成長が続いており、直近の2022年には9.46兆円に到達*1。営業利益は年度により好不調が分かれるが、2021年には過去最高となる4,345億円に到達。
*1:2019年に同業の昭和シェル石油を完全子会社化したことで同社の売上高が加わった。2021年には原油価格が1バレル62ドルから128ドルまで急騰、ガソリン販売価格が高騰したことで売上高が急増した。
✔セグメント別の状況
出光興産は燃料油事業(石油精製製品の製造・販売・トレーディングなど)、基礎化学品事業(オレフィン・アロマ製品などの製造販売)、高機能材事業(潤滑油・機能化学品・電子材料・機能舗装材・アグリバイオなど)、電力・再生可能エネルギー事業(火力・太陽光・風力による発電・販売、太陽電池事業など)、資源事業(原油・天然ガス・石炭などのエネルギー資源の探鉱・開発・生産・販売)の5事業を有する。
出光興産は再生可能エネルギー・高機能材などの事業多角化を推進しているが、売上高の約78%を石油事業に依存している。利益は原油開発を主力とする資源事業で約69%を占めており稼ぎ頭。国内における石油需要が将来的に縮小した場合に備えた事業多角化が急がれる状況。
✔最終利益と利益率
出光興産の純利益は年度により好不調が分かれており、▲360億~2,700億円のレンジで推移している。2021年には純利益2,795億円に到達して過去最高を更新*2。営業利益率は0~6%レベルで推移しており、利益率が安定しない。
*2:2021年の営業利益の急増は、原油価格の高騰によって石油事業において在庫評価益が約2,332億円ほど発生したことが主要因。石油元売会社には石油備蓄法により70日間分の石油を備蓄する義務があり、原油価格の大幅変動が起こった場合には備蓄による在庫が損益に大きく影響を及ぼす。この点についてはENEOSが詳細を解説しているため参考にしたい(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
出光興産の自己資本比率は緩やかな回復基調が続いており、直近の2022年には33.2%にまで回復。大手企業としては標準的な自己資本比率。純資産は右肩上がりで増加、直近では1.63兆円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
出光興産の平均年収は850~970万円ほどの水準で安定的。出光興産は持株会社制ではないうえ、現業職を含む単体従業員5,000人以上の平均年収であるから相当の高水準である。大卒総合職は30歳前後で年収750~900万円ほど、課長職レベルで年収1,200~1,300万円が目安。
✔従業員数と勤続年数
出光興産の従業員数は2019年の昭和シェル石油との合併を経て5,000人規模へと拡大。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.4万人ほど。平均勤続年数は17.7年前後であり、大手企業としては標準的な水準。
総合評価
企業格付け:AA
かつて日本石油(現・ENEOSホールディングス)の販売店として創業しながら、戦前には石油輸入・精製までを手掛けるまでに成長。戦後の1949年には石油元売会社として指定されて以降は、石油開発~石油精製~石油販売までのサプライチェーンを担う企業として成長を果たした。現在においても創業家である出光家は日章興産という企業を通して発行済み株式数の約10%ほどを保有しており、一定の影響力がある。業績は大手石油元売会社の中では唯一、右肩上がりの売上高の増加が継続。2019年に同業の昭和シェル石油を合併して規模を拡大した後に、世界的な資源価格の高騰が発生したことで売上高9兆円を超えるまでに拡大。利益体質は原油価格・景気動向に左右されやすいが、これは石油元売業界の宿命なので致し方ない。財務体質も自己資本比率33%と標準的な水準をクリアしており問題はない。
就職格付け:AA
百田尚樹の小説”海賊とよばれた男”でモデルとされた企業として著名。1953年に日章丸事件を引き起こしたことで、産油国との直接取引の道を切り開いた歴史を持ち、長年に渡って日本の資源資源供給を支え続けている名門企業でもある。2019年に同業の昭和シェル石油を合併したことで国内首位のENEOSホールディングスとの差を一気に縮めた。合併時には”出光昭和シェル”を通称としたが、2年後には早々に”出光”へ戻すなど対等合併とは思い難い一面も。給与水準は平均年収は850~970万円ほどの水準で安定的であるが、着目すべきは現業職を含む単体従業員すべての平均年収である点。大卒総合職の給与水準は更に恵まれており、30歳前後で年収750~900万円ほど、課長職レベルで年収1,200~1,300万円が目安。福利厚生も恵まれており、住宅手当・借上げ社宅によって家賃10万円ほどの物件にも1~2万円/月の負担で居住可能。副業・兼業も解禁しており、勤務時間外であれば自由に稼ぐことが認められている。ボランティアや海外留学などの目的であれば最長2年間の休職も可能。総じて、高給与&ホワイト企業。