企業概要
住友林業は、林業・木材・戸建住宅・分譲住宅・マンション・商業施設・事業施設などを手掛ける大手住宅メーカー。1691年に別子銅山の周辺森林開発を目的に創設された老舗企業。創業から200年以上に渡って林業を主力としたが、1960年以降には建材・注文住宅など現在の主力事業へ進出。2000年初頭にはアメリカ・オーストラリアへ進出、現地の特性・気風にあわせたブランドを展開。グローバルでの躍進に成功した稀有な日系ハウスメーカーであり、現在では売上高の約50%を海外で稼ぐ。
・創業300年以上の大手住宅メーカー、海外売上高比率60%以上
・売上高・利益は2021年を境に急増、財務体質も概ね健全
・平均年収914万円と住宅メーカー最高峰の給与水準、福利厚生も充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:70(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
昨今の業績拡大により採用強化を進めており、総合職の採用人数は年間100人~200人に及ぶ。意外にも総合職の出身大学は多様性に富み、ハイレベル大学の出身者でなくとも実力さえあれば採用される。
採用大学:【国公立】大阪大学・名古屋大学・神戸大学・広島大学・宇都宮大学・岩手大学・鳥取大学・小樽商科大学など、【私立】慶応義塾大学・上智大学・国際基督教大学・関西大学・立命館大学・日本大学・國學院大學・桜美林大学・東京家政大学・日本体育大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
住友林業の売上高は2018年をピークに急激な落ち込みに見舞われたが、2020年以降は急回復を遂げて過去最高となる売上高1.67兆円に到達*1。営業利益は2020年以降に売上高を超えるペースでの急増を遂げ、2022年には過去最高となる1,583億円に到達している。
*1:住友林業の業績が2021年から急伸した理由は、①世界的な物流混乱と住宅需要拡大による木材価格の急騰(ウッドショック)、②COVID-19以降の不動産ブームによる住宅価格が高止まりによる販売単価の上昇、③為替レートの円安推移による海外販売の為替効果、など。
✔セグメント別の状況
住友林業は木材建材事業(木材・建材の仕入加工販売)、住宅・建築事業(戸建・集合住宅の建築請負・メンテナンス・リフォーム、分譲住宅など)、海外住宅・不動産事業(海外における分譲住宅・戸建住宅・集合住宅・商業施設の開発販売)、資源環境事業(バイオマス発電・森林事業)、その他事業の5事業を有する。
住友林業は木造日本家屋に強いイメージが先行するが、海外市場での事業拡大に成功。現在では売上高の約60%以上が海外市場であり、地域特性に合わせたブランド展開によって現地ニーズを巧みに掌握。アメリカやオーストラリアなど購買力が高い先進国に根を下ろすことで高単価・高利益な事業展開に成功。
✔最終利益と利益率
住友林業の純利益は2020年までは300億円レベルでの推移が続いていたが、2021年から急増傾向。2022年には過去最高となる純利益1,084億円まで到達。営業利益率も2020年までは凡庸な水準にあったが、2021年以降は住宅メーカーとしては上位級となる営業利益率8%~9%に伸長。
✔自己資本比率と純資産
住友林業の自己資本比率は概ね35%前後の水準で推移してきたが、直近の2023年には自己資本比率41.6%に到達。純資産は長期的な増加傾向が続いており、2022年には純資産8,232億円に到達*2。
*2:住友林業は国内外に広大な土地・林木を所有しており、国内保有林4.8万haだけでも、日本国土の800分の1に匹敵する。これらの保有林は資産価値が低く算定されるため、森林資産の保有規模に比べて純資産が小さく見える特性がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
住友林業の平均年収は平均年収850万円前後の水準で安定的であるが、2021年以降は業績好調によって平均年収も増加傾向。総合職の場合、30歳で年収550万~650万円、課長職レベルで年収1,100万~1,200万円ほど。営業職は歩合制となり、優秀であれば若くして年収1千万円を超えることも普通。
✔従業員数と勤続年数
住友林業の単体従業員数は緩やかな増加傾向にあり、直近では5,235人に到達。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.4万人ほど。平均勤続年数は16.1年と、大企業としては標準的な水準。
総合評価
企業格付け:AA
林業分野においては日本国内で最大となる上場企業だが、現在では大手ハウスメーカーとしてよく知られる。創業300年以上の歴史を持つ超長寿企業であり、日系上場企業としてトップクラスの歴史の長さを持つ企業でもある。木造住宅に限れば日本国内で断トツ首位かつブランド力は最高峰。業績は売上高1兆円レベルでの停滞が20年近くに渡って続いていたが、2020年以降は大化けして業績急伸。とはいえ、2021年のウッドショックによる木材価格の高騰と為替レートの円安推移が重複した一過性の要因に支えられた側面も大であり、売上高1.6兆円規模が永続するかは今なお不明瞭。海外展開においては業界トップクラスの実績があり、アメリカ・オーストラリアなどの先進国市場で成功したのは日系ハウスメーカーとして唯一に近い快挙である。日本国内の住宅需要の頭打ちする中でも、将来的な業績成長に向けた足掛かりを固めつつある。
就職格付け:AA
高級ハウスメーカーとして著名かつ住友グループの財閥系企業でもあることから、企業イメージは抜群。公式キャラクターの『きこりん』を街中などで見かけることも多いため、日本人の多くが存在を認知している企業であろう。給与水準は平均年収850万~900万円レベルとハウスメーカーとしては業界首位の大和ハウス工業に並ぶ。総合職であれば30歳で年収550万~650万円、課長職レベルで年収1,100万~1,200万円ほどにはなる。やはり特筆すべきは営業職であり、営業マンとして優秀であれば年収1,000万円に若くして到達できるのは魅力。福利厚生もそこそこ充実しており、家賃補助制度はエリアや家族構成によるものの家賃の最大75%を会社が負担。持家取得補助も存在しており、住友林業の住宅であれば数百万円単位での割引を得られる。創業300年以上を生き延びてきた安定性も魅力であり、太平洋戦争を生き延びたことは当然、江戸時代の寛政の改革・天保の改革や明治維新などもすべて耐えている。