企業概要
住友大阪セメントは、セメント・石灰石・建材・電子部品などを展開する住友グループの大手セメントメーカー。1907年に八茎鉱山の広瀬金七らが創業した磐城セメントを源流とし、1963年に住友セメントへと社名変更。1994年には同業の大阪セメントと合併、現社名の住友大阪セメントとなった。事業多角化に熱心であり、①魚礁などの海洋製品、②廃熱発電による電力供給、③セラミックス・化粧品材料、④電子部品材料などを展開。現在ではセメント分野において太平洋セメント・宇部三菱セメントに次いで国内3位。
・住友Gの大手セメント・素材メーカー、セメントの国内シェアは第3位
・売上高は横ばいだが利益はやや苦戦傾向、ただし財務体質はかなり優良
・平均年収690万円で年功序列型の給与体系、住宅手当が厚い点は優秀
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:62(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用数は年間30人~50人ほど。セメントメーカーというマイナー業界であるため人気度は高まりにくく、中堅大学からも採用はある。穴場感もある狙い目。
採用大学:【国公立】大阪大学・北海道大学・神戸大学・滋賀大学・信州大学・岐阜大学・電気通信大学・豊橋技術科学大学など、【私立】早稲田大学・同志社大学・立教大学・学習院大学・日本大学・東海大学・成蹊大学・拓殖大学・大和大学・芝浦工業大学・大阪工業大学など(出典:住友大阪セメント新卒採用)
業績動向
✔売上高と営業利益
住友大阪セメントの売上高は2020年まで2,300億~2,500億円で安定推移していたが、2021年に1,842年に急減*1。同年以降は2,050億~2,220億円ほどで推移している。営業利益は2020年までは140億~190億円で推移していたが、2022年には▲85億円に下落*2。
*1:住友大阪セメントの売上高が2021年に急落したのは、会計基準の変更が主要因であり事業不調によるものではない。2020年3月31日から収益認識に関する会計基準が新たに適用され、同基準に従ったことが変化点(参考リンク)。
*2:2022年に赤字転落した理由は、①世界的な資源価格の高騰によるセメント事業の大幅減益、②大規模な土木・建築工事を伴う公共事業の減少、③人手不足・建築コスト上昇による建築需要の停滞、など。
✔セグメント別の状況
住友大阪セメントはセメント事業(セメント・生コンクリート・セメント系固化材など)、鉱産品(石灰石・ドロマイト・タンカル・シリカ微粉など)、建材(コンクリ構造物補修材料、重金属汚染対策品、魚礁・藻場礁、電気防食工法など)、光電子(光通信部品・光計測機器)、新材料(各種セラミック材料・ナノ粒子材料、抗菌剤、化粧品材料など)、その他(不動産賃貸・エンジニアリングなど)、の6事業を有する。
当社はセメント事業で売上高の約71%を稼ぐが、利益における同事業の割合は約8%に過ぎない状況。非セメント事業による利益創出によって利益を支えている実情があり、主力事業の利益低迷が痛い。
✔最終利益と利益率
住友大阪セメントの純利益は2016年に過去最高となる純利益162億円を記録したが、2022年には純損失▲57億円に転落*3。ただし、2024年には純利益90億円まで回復している。営業利益率は2022年に▲4.18%まで悪化したが、同時期を除けば3%~7%ほどで推移している。
*3:2022年に営業赤字に陥った理由は、世界的な資源価格の高騰が主要因。セメント製造には石炭火力自家発電設備を用いるが、石炭価格が急騰したことでセメント製造コストが急増した。
✔自己資本比率と純資産
住友大阪セメントの自己資本比率は2020年までは60%前後で推移していたが、同年以降はやや減少。2024年は自己資本比率54.1%となっているが、依然として高水準であるため財務体質は健全。純資産は長期的に1,840億~2,050億円ほどのレンジで横ばい推移が続いている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
住友大阪セメントの平均年収は長年に渡って690万~710万円ほどの水準で安定している。大卒総合職は30歳前後で年収500万円ほど、課長職レベルで年収800~950万円が目安。平均年齢は長期的な増加傾向が続いているが、2024年は43歳と大手企業の標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
住友大阪セメントの従業員数は長期的に微増傾向が続いているが、2024年は1,254人の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2,886人ほど。平均勤続年数は18.8年(2023年)と、大手企業の標準的な水準を上回る。
総合評価
企業格付け:CCC
セメント業界において太平洋セメント・UBE三菱セメントに続く、国内第3位の大手セメントメーカー。セメント事業を中核としつつも、電子部品・セラミックス・化粧品材料など幅広く事業展開するため、素材メーカーとしての側面も有している。国内セメント需要は1990年代には8,000万トン/年に達したが、現在では4,000万トン/年にまで半減しており、成長産業ではない業界。そのため、当社は事業多角化によって非セメント分野に活路を求めつつ、同業他社(大阪セメント)と合併することで規模拡大を果たした点に特徴がある。業績においては売上高こそ横這いだが、2015年頃から利益は減少傾向がみられる。2022年には石炭価格の高騰が直撃して純損失▲57億円に転落する事態に陥ったが、2023年には値上げ対応によってコスト高騰分を吸収。再び黒字圏へと回復している。財務体質においては自己資本比率54.1%(2024年)を確保しており、かなりの高水準を維持できている。多少の業績悪化が起こったとしても余裕で耐え凌げるだけの財務基盤を整えられている。
就職格付け:CCC
創業100年以上の歴史を持つ大手セメントメーカー。セメント業界というマイナー業界ゆえに一般知名度は高くないものの、住友グループに属することを象徴する社名から一般人にも大企業であることは彷彿とさせられる。社名に「大阪」が入るものの、これは合併前の大阪セメントに由来するものであり、現在では本社・主力事業所いずれも大阪以外である(大阪府に所在する当社の拠点は営業拠点と建材工場のみである)。給与水準においては平均年収700万円前後で長年に渡って推移しており、良くも悪くも安定的。年功序列色が強い企業であるために、大卒総合職・30歳で年収500~600万円ほど、課長職レベルで年収800~950万円が目安となるだろう。福利厚生においては企業規模以上に恵まれており、借上げ社宅制度では家賃10万円以内の物件なら1万円/月程度の自己負担で居住できる(借上げ社宅制度は額面年収を少なめに留めることができ、税金負担も抑制できる点において家賃補助制度よりも優秀である)。借上げ社宅制度による住宅コストの抑制分を加味すれば、実質的な生活水準は平均年収+100万円ほどになるといえ、可処分所得を高く持ちやすい。強いて言えば、当社の主力拠点は東京・千葉・栃木・岐阜・大阪・兵庫・高知・山口・福岡に広く分散しており、転勤範囲の広大さには注意を要する。