企業概要
伊藤園は、緑茶・麦茶・ウーロン茶などを主力とする飲料メーカー。1966年に茶葉商店として創業。1974年に静岡県に生産拠点を構えてメーカーへと転身、中国企業と提携してウーロン茶を日本国内で普及させた。1980年代から清涼飲料水を手掛けるようになり、「お~いお茶」を発売。1990年には世界初となるペットボトル緑茶の製品化に成功して、茶系飲料分野で国内首位へと上り詰めた。コーヒー店チェーン「タリーズコーヒー」を展開するタリーズコーヒージャパンは当社の完全子会社。
・茶系飲料において国内首位の飲料メーカー、タリーズコーヒーも展開
・売上高は2018年からやや減少傾向、財務は堅いが低利益率
・平均年収550万~600万円で推移、平均勤続年数17.2年と長め
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:59(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用実績は年間130名~190名と、採用枠は非常に多い。幅広い大学から採用しており、有名企業ながら学歴に囚われず入社できる可能性が開かれている。
採用大学:【国公立】千葉大学・秋田大学・山形大学・群馬大学・徳島大学など、【私立】関西大学・法政大学・日本大学・国士舘大学・中京大学・神奈川大学・など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
伊藤園の売上高は2018年の5,041億円に到達して過去最高を記録したが、同年以降は減少傾向*1。営業利益は170億~220億円で大いに安定しており、景気動向にも利益が左右されにくい安定性がある。
*1:売上高が2018年から減少している理由は、①COVID-19感染拡大による外出自粛でペットボトル飲料販売・タリーズコーヒー売上高が落ち込んだ点、②2021年から企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」を適用した点、が主要因。
✔セグメント別の状況
伊藤園は、リーフドリンク事業(緑茶・麦茶・ウーロン茶などの製造販売など)、飲食関連事業(完全子会社・タリーズコーヒージャパンによる飲食店運営)、その他事業(海外におけるサプリメント販売など)、の3事業を有する。
リーフドリンク事業が売上高・利益のそれぞれ85%以上を占める最主力事業となっている。同事業の筆頭商品は茶系飲料であり、茶系飲料だけで年間1,400億円以上を販売。野菜飲料やコーヒー飲料も展開するが、売上高500億円にも満たないため構成比としては少ない。
✔最終利益と利益率
伊藤園の純利益は長年に渡って80億~140億円ほどで安定的に推移。営業利益率は3%~4%ほどで推移し続けている。利益率は低めだが、安定している点は強み。
✔自己資本比率と純資産
伊藤園の自己資本比率は長期的に45%~50%の高水準で推移している。純資産は緩やかな増加が継続しており、2022年には1,721億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
伊藤園の平均年収は長期的に540万~600万円ほどの水準で推移。飲料業界の有名企業ではあるが、大手飲料メーカーとは大きな差がある。総合職の場合、30歳で年収430万~490万円、課長職で年収750万~850万円が目安。
✔従業員数と勤続年数
伊藤園の単体従業員数は長期的に5,200人~5,400人ほどの水準で推移。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は7,900人規模。平均勤続年数は増加傾向が続いておりが、直近でも17.2年と長め。
総合評価
企業格付け:CC
■業績動向
安定的。売上高は2018年をピークにやや減少するも、利益はかなり安定的で景気後退にも強い。COVID-19感染拡大でコンビニ・自販機の販売が落ち込んだ2020年・2021年にも営業利益160億円以上を確保。課題は営業利益率5%に満たない利益率の低さであるが、長年に渡って克服できない状況が続いている。
■財務体質
良好。長年に渡って自己資本比率50%前後で安定しており、適度な財務規律が保たれている。低利益率ながらも安定した利益を活かして、利益剰余金を着実に増やし続けてきた経緯がある。
■ビジネス動向
世界的な健康志向の高まりが追い風。国内市場はトップシェアの地位を盤石とするため、ブランド価値向上への投資も進める。北米市場における茶系飲料の需要増加を受けて、海外事業へのテコ入れも図る。2026年までに営業利益率7%を目指すとするが、達成までの具体的・現実的なロードマップは見えない。
就職格付け:C
■給与水準
大手飲料メーカーとしては下位。長年に渡って平均年収500万円台での推移が定着、2022年には平均年収600万円に到達したが大手飲料メーカーとは落差。総合職でも30歳で年収430万~490万円ほどに留まるため、それなりの給与水準に到達するには勤続年数を重ねる必要。
■福利厚生
そこそこ。住宅補助制度により、居住地に応じた手当が月額3.6万円まで支給。が、元々の給与水準が高くないため有難みは微妙。会社都合の転勤時には借上げ社宅が与えられ自己負担は家賃額の4割となる。特筆すべき福利厚生としては、社宅に入居した若手社員に年1回の帰省費を支給する帰省手当があることだろうか。
■キャリア
営業職・販売職・事務職・研究開発職・生産職の5職種制。原則としては入社時の職種でキャリアを重ねていく。年功序列色が強いため入社10年目前後でグループリーダーに昇格するが、課長職への昇格は能力次第。研究開発職は静岡県内で勤務し続けることができるが、営業職は全国転勤が発生する。