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【勝ち組?】井関農機の就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

井関農機は、トラクター・田植え機・コンバイン・耕運機などを主力とする農機メーカー。1924年に井関邦三郎が農機メーカーとして創業。戦前には除草機・籾摺り機を主力とした他、戦時中には航空エンジンも製造。終戦後には愛媛県知事から緊急復興を命じられ農機生産を早期再開、食糧生産量の回復に貢献した。1960年代にはトラクター・コンバイン・田植え機を発売。現在ではクボタ・ヤンマーに続く農機業界3位の地位を占め、スタート農業の実現に向けたロボットトラクターの開発にも注力。

POINT

・愛媛地盤の農機メーカー、国内シェア3位・海外売上高比率は約35%
・売上高・利益いずれも横ばいで成長性は薄い、財務体質はまずまず
・平均年収629万円で年功序列色が強い、愛媛県内では上位の待遇

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:58(中堅)

上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:中難易度

総合職の採用人数は年間20人~25人と企業規模なり。良くも悪くも農機メーカーはマニアックな業態であるため相対的に倍率は低く穴場感は強い。愛媛大学と親密な関係。
採用大学:【国公立】愛媛大学・岡山大学・徳島大学・香川大学・高知大学・高知工科大学など、【私立】立命館大学・東京理科大学・岡山理科大学・広島工業大学など(出典:マイナビ2025

業績動向

✔売上高と営業利益

井関農機の売上高は2020年まで1,500億円前後で横ばいであったが、同年以降は微増傾向に転換*1。2023年には売上高1,699億円に達している。営業利益は長期的に20億〜40億円で横ばいが続いている。
*1:売上高の増加要因は、①国内市場におけるメンテナンス収入の増加、②欧州市場における販売増加、③世界的な原材料価格高騰をうけた値上げ効果による増収、など。

✔セグメント別の状況

井関農機は、農機関連事業(トラクター・田植え機・コンバイン・耕運機・アイガモロボットの製造販売、部品販売・アフターサービスなど)のみの単一事業会社である。
当社は終戦後にはオートバイ製造やポルシェ製トラクター輸入など事業多角化していたが、現在では農機事業のみに特化している。海外売上高比率が約35%ほどだが、その大半は欧州市場における販売である(当社は50年以上前に欧州市場に進出した経緯があり、特にフランス国内には200拠点以上を有する)。

✔最終利益と利益率

井関農機の純利益はあまり安定していない。2020年に▲56.4億円の赤字に沈んでからは利益回復傾向にあったが、2023年には純利益0.2億円まで急後退している。営業利益率は長期的に1%~2%ほどで推移しており、利益率の低空飛行が続いている。

✔自己資本比率と純資産

井関農機の自己資本比率は長期的に30%前後の水準で横ばい。低くもないが高くもなく、特筆すべきことがない水準である。純資産も横ばい傾向が強く、過去8年間は620億〜740億円で推移している。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

井関農機の平均年収は長期的に500万円台で推移していたが、2022年からは平均年収600万円台に浮上。直近では平均年収629万円に達しており、愛媛県では上位クラスの待遇を得られる。大卒総合職ならば30歳で年収400~450万円、課長職レベルで700万~790万円ほどに達する。

✔従業員数と勤続年数

井関農機の単体従業員数は長期的に700人レベルで横ばい。直近の単体従業員は784人となっており、知名度の割には小規模な組織体制。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は5,400人ほど。平均勤続年数は長期的に15年前後で推移しており、中堅メーカーとしては良好な水準。

総合評価

企業格付け:C

創立100年に迫る老舗農機メーカーであり、戦前から日本農業の近代化・機械化に貢献してきた歴史を持つ企業。主力は日本市場であるものの、欧州市場においても50年以上に渡って事業展開。北米・アジア圏においても農機販売を行っている。業績は売上高・利益いずれも安定型で景気動向にも左右されにくいが、利益率の低さが長年の課題。営業利益率は1%〜2%レベルが定着しているうえ、純利益も損益スレスレの年は珍しくない。こうした状況を踏まえて2023年には抜本的構造改革「プロジェクトZ」を発表(参考リンク)。営業利益率5パーセントを目指すために、①生産拠点の再編、②開発リソースの見直し、③販売会社の統合、④成長分野への投資、などを断行する構え。2024年には構造改革に伴う先行費用として約35億円を投じる見込みである。この構造改革の成否は未だ見通しが不明だが、長年に渡って低利益率に甘んじてきた当社が(販売会社統合や生産工場再販などの)聖域にもメスを入れて成長を再び取り戻そうとする姿勢には敬意を払いたい。

就職格付け:CC

愛媛県を代表する企業の1社にして、農機業界第3位の農機メーカー。さすがに業界2強のクボタ・ヤンマーと比べれば企業規模・知名度は大きく劣るが、業界4位の三菱マヒンドラ農機に対してはリードしているために現在の地位は当面安泰。給与水準においては長年に渡って平均年収500万円台が定着していたが、直近の2023年には平均年収629万円まで浮上。都会の大手企業と比べれば見劣りはするが、愛媛県内においては上位5社に食い込むほどの待遇である。大卒総合職ならば30歳で年収400~450万円、課長職レベルで700万~790万円ほどに達するため、生活コストの安い愛媛県内であれば良い暮らしができる。福利厚生も企業規模の割には充実しており、独身若手社員は月額5,000円で独身寮に入れるほか、既婚者には住宅手当も支給される。残業が少ない社風であり、平均残業時間は10時間強/月で安定。愛媛県の出身者であれば、就職先の候補として入れておきたい企業である。

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出典:井関農機株式会社(有価証券報告書)