企業概要
九州電力は、九州地方全域において発電事業・電気小売事業を展開する大手電力会社。1899年に熊本財界の有力者たちが設立した熊本電氣を源流とし、1951年に九州電力として再編・発足。戦後しばらくは石炭火力発電・地熱発電に依存していたが、オイルショックを経て1974年には玄海原子力発電所を稼働開始。1990年には甑島風力発電所を稼働させ、日本で初めて風力発電所として運用開始。九州エリアに本社を置く企業としては最大の売上高を誇り、九州財界に大きな影響力を持つ。
・九州地方を代表する大手電力会社、九州財界のリーダー的存在として君臨
・業績不振が長年に渡って続いたが2023年は利益急増、財務体質は微妙
・平均年収752万円と九州エリアでは最高峰の待遇、福利厚生も優れる
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:69(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間120名~160名ほど、うち技術系採用枠が80名前後を占める。九州出身者のUターン地元就職先の最高峰として知られ、旧帝大出身者も珍しくはない。
採用大学:【国公立】九州大学・大阪大学・神戸大学・東京工業大学・九州工業大学・豊橋技術科学大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・同志社大学・中央大学・東京理科大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
九州電力の売上高は2021年まで約1.5兆円レベルで安定していたが、2022年には過去最高となる売上高2.22兆円に急増*1。営業利益は2016年から減少傾向にあり、営業赤字730億円を計上*2。が、2023年には営業利益2,549億円まで急回復。
*1:2022年にはロシアによるウクライナ侵攻で燃料油価格が急騰。燃料価格の上下変動を電気料金に転嫁する燃料費調整額が急増したことで売上高が急増した経緯。
*2:2022年の営業赤字の原因は、①燃料油価格の上昇による発電コストの増加、②原子力発電所の稼働減少、③卸電力市場における電力価格の上昇による購入電力コストの増加、など。
✔セグメント別の状況
九州電力は、発電・販売事業(火力・原子力・再生可能エネルギーの発電・販売など)、送配電事業(九州域内における一般送配電など)、その他エネルギーサービス事業(電気設備の建設・保守、ガス・LNG販売など)、海外事業(海外における発送電など)、ICTサービス事業(データ通信、通信工事・保守、データセンターなど)、都市開発事業(都市開発・不動産・社会インフラ)、その他事業(老人ホーム・人材派遣など)、の7事業を有する。
当社のコア事業は発電・販売事業と送配電事業の2事業であり、売上高の約90%を電力関連で稼いでいる。事業多角化として不動産・ICTサービスなども幅広く展開するが、売上高・利益に占める割合はそれほど高くはない。
✔最終利益と利益率
九州電力の純利益は2017年から下落傾向が続いており、2022年には純損失564億円を計上。が、2023年には純利益1,664億円まで急回復。営業利益率は通常時には2~5%ほどの水準が続いていたが、2023年には11.9%まで急上昇。
*3:2023年に利益急増した理由は、①燃料価格の下落による燃料費調整の期ずれ影響(参考リンク)、②原子力発電所の再稼働による燃料費の減少、など。
✔自己資本比率と純資産
九州電力の自己資本比率は長年に渡って10%台での推移が続いている*4。直近の2023年には自己資本比率15.5%に留まっており、他電力会社と比べても低めの推移である。純資産は5,700億~6,800億円で推移していたが、直近の2023年には9,210億円まで急増。
*4:経済産業省の有識者審議会は一般電気事業の適切な自己資本比率を30%と掲げるが、当社の自己資本比率はこれを下回る推移が続いている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
九州電力の平均年収は2016年以降は750万円ほどの水準で安定的*5。総合職であれば30歳で年収480万~550万円ほど、課長職レベルで年収900万~1,050万円に達する。九州地方の大手企業としてはトップクラスの給与水準を誇る。平均年齢は多少の上下変動はあるものの42歳前後の水準で安定的。
*5:九州電力は2011年の福島第一原子力発電所事故を発端とする原発停止で深刻な業績悪化に陥った経緯があり、2015年までは従業員の給与カットが行われていた。2016年以降は業績好転したことで給与水準が回復。
✔従業員数と勤続年数
九州電力の単体従業員数は2020年の分社化によって1.06万人(2019年)から0.53万人(2020年)まで約5,000人も減少している*6。平均勤続年数は20年を優に上回る高水準で安定推移しており、従業員の定着のよさが伺える。
*6:送配電インフラの透明化を目的とした政府方針に従い、送配電事業を九州電力送配電として分社化(参考:資源エネルギー庁)。
総合評価
企業格付け:A
九州エリア全域への電力供給を担う大手電力会社、電力業界では東北電力に続く第5位に位置している。業績は2010年代を通して苦境に直面しており、2011年の福島第一原子力発電所事故による混乱で2011年から2014年にかけて累積7,000億円を上回る純損失を計上した経緯がある。2018年には玄海原子力発電所が再稼働したものの、2022年には世界的な燃料価格の高騰によるコスト増によって純損失564億円を計上。が、2023年には燃料価格の下落によって純利益1,664億円までの急回復を遂げた。財務体質は2011年~2014年の巨額の純損失で負った痛手から回復できておらず、自己資本比率は10%台での低空飛行が続く。抜本的な財務体質の回復までは当面の時間を要するであろう。
就職格付け:AA
九州エリア屈指の名門企業であり、九州経済連合会の歴代会長を多数輩出してきた地元財界のリーダー的存在。給与水準は平均年収766万円と東北電力に続く水準にあり、九州エリアにおいて最高峰の待遇となっている。総合職であれば30歳で年収480万~550万円ほど、課長職レベルで年収900万~1,050万円に達する。絶対値としては超高給とまでは言えないが、生活コストが安い九州エリアに生活拠点を置ける点を見過ごしてはならない。同エリアであれば見た目の年収を優に上回る生活を送れる他、地元屈指のブランド企業であるが故に精神的充足感も大きいだろう。福利厚生も充実しており、勤務地周辺に独身寮・社宅は完備されている。リフレッシュ休暇制度により年間5日の連続休暇取得を義務付けており、土日休みと組み合わせることで7連休を自由に生み出すことができる。当然ながら平均勤続年数は20年オーバーであり社員の定着は極めて良好。九州エリアでは憧れの企業の筆頭格であり、九州出身者であれば地元の親族友人からの社会的名声も抜群である。