企業概要
三菱マテリアルは、三菱グループの非鉄金属メーカー。1891年に三菱グループの炭鉱部が独立して三菱鉱業として発足。戦前から夕張炭鉱や金属製錬を主力事業としたが、終戦後の1950年にはGHQによる過度経済力集中排除法により三菱工業セメントと三菱金属に分割。1960年代から1980年代には自動車部品・電子材料・原子力など多種多様な素材を扱う総合素材メーカーへと躍進。1990年には分割されていた2社が40年ぶりに再び合併し、三菱マテリアルとして再出発。現在では廃基盤リサイクル・低アルファ線はんだで世界シェア首位、伸銅国内品・超硬工具においてシェア首位。
・三菱グループの非鉄金属メーカー、事業の選択と集中を進める
・売上高は横ばいで利益率が低迷、財務体質も普通
・平均年収709万円だが住宅補助が手厚い、僻地勤務リスクあり
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:65(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間80人〜120人ほどだが、事務系採用は30名に満たない。非鉄金属業界自体がニッチ寄りだが、三菱グループ企業だけあって一定の知名度はあるため選考倍率は低くはない。
採用大学:【国公立】大阪大学・神戸大学・金沢大学・千葉大学・静岡大学・名古屋工業大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・明治大学・立教大学・東京理科大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
三菱マテリアルの売上高は1.3兆~1.8兆円レベルでの横ばいが続いている。2020年には売上高1.81兆円まで急増*1したが、一過性の増加に留まった。営業利益は年度ごとの波はあるが、長期的に230億〜730億円での推移が定着している。
*1:2021年に売上高が増加した理由は、①COVID-19感染終息後の景気回復による鋼材需要の高騰、②自動車メーカーの新車生産台数増加による販売増加、③銅・硫酸などの価格上昇、④為替レートの円安推移による為替効果、が主要因。
✔セグメント別の状況
三菱マテリアルは、金属事業(銅・金・銀・鉛・錫・硫酸・パラジウムなどの製造販売、家電リサイクルなど)、高機能製品(銅加工品・電子材料・電子部品・新素材など)、加工事業(自動車・航空・医療・金型業界向け超硬製品、自動車部品など)、再生可能エネルギー事業(地熱発電・水力発電)、その他事業(セメント・エンジニアリングなど)、の5事業を有する。
当社は銅・金・銀などの非鉄金属製錬を主力事業としつつ、電子材料や自動車部品などの領域へも進出。現在では総合素材メーカーと呼べるほどに事業多角化が進んでいる。他方で最近では事業再編も進めており、スパッタリングターゲットや多結晶シリコンからは順次撤退。2022年にはUBEとセメント事業を統合するなど、選択と集中を進める。
✔最終利益と利益率
三菱マテリアルの純利益は年度によりばらつきがあり不安定。2019年には純損失728億円に沈んだが*2、2020年以降は回復傾向。営業利益率は2017年までは4%台であったが、同年以降は1%〜3%ほどの低空飛行が続いている。
*2:2019年に純損失に転落した要因は、①子会社の独占禁止法違反による課徴金103億円の発生(参考リンク)、②アルミニウム関連の減損損失203億円、③焼結事業における事業再編損失引当金繰入302億円、が主要因。
✔自己資本比率と純資産
三菱マテリアルの自己資本比率は25%〜30%レベルで長期的に推移しており、大手メーカーとしてはやや低めの水準。純資産も4,800億〜5,500億円での横這いが続いている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
三菱マテリアルの平均年収は650万〜720万円ほどの水準で長期的に推移している。大卒総合職は30歳で年収580万〜620万円ほど、課長職レベルで800万〜950万円ほどと推定。平均年齢は緩やかな増加傾向がみられるが、直近でも42.6歳と大手メーカーの標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
三菱マテリアルの単体従業員数は2020年に6,100人以上に増加したが、2022年には再び減少。直近2年間は5,400人前後の組織規模となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.83万人ほど。平均勤続年数は長期的に17年以上で安定。直近では18.2年に到達しており、従業員の定着は良い。
総合評価
企業格付け:BB
三菱グループにおける大手素材メーカーであり、銅などの非鉄金属分野に強みを持つ。創業当時は炭鉱運営や鉄道事業も主力であったが、国内炭鉱の競争力低下という時代の趨勢を受けて非鉄金属を中心とする総合素材メーカーへと転換してきた経緯がある。業績は横ばい傾向が強く成長性は薄いものの、売上高1.54兆円(2023年)と事業規模は大きく、住友金属鉱山と並んで業界トップクラス。ただし利益面は苦戦が目立ち、2018年以降は営業利益率3%未満と苦しさも目立つ。2020年には子会社の独占禁止法違反や減損損失が相次ぎ、純損失728億円に転落する事態となった。最近では選択と集中を進めており、スパッタリングターゲットや多結晶シリコンからは順次撤退。2022年にはUBEとセメント事業を統合した。こうした努力が身を結んで再び利益と成長を取り戻せるかが注目される。
就職格付け:BB
非鉄金属業界におけるトップ企業の一角であり、長年に渡って三菱グループの鉱山開発・非鉄金属製錬を担ってきた名門企業。給与水準は平均年収709万円(2023年)と、同業の住友金属鉱山(平均年収823万円・2023年)と比べると低めの感は否めない。大卒総合職の場合は30歳で年収580万〜620万円ほど、課長職レベルで800万〜950万円ほど。給与面では業界トップの割に目を見張るものはないが、当社の美点は充実した福利厚生制度にある。主力事業者には独身寮・社宅が揃う他、都市部勤務でも借上げ社宅制度により自己負担は1万〜3万円程度で済む。平均年収に含まれない住宅補助が年間70万〜100万レベルで享受できると考えれば、見た目の平均年収の低さにも納得はいく。ただし主力事業所は僻地も多く、香川県・福島県・岐阜県の非都市部への勤務可能性も大いにあることは理解しておきたい。