企業概要
ワコムは、ペンタブレット・液晶タブレットを主力とする電子メーカー。1983年に村上東が電子機器メーカーとして創業、1984年には世界初のペンタブレットを発売。当時はCAD製図用途が主であったが、1990年に米・ウォルトディズニーが「美女と野獣」の制作に導入したことを機にクリエイティブ分野への展開を強化。現在ではペンタブレット分野において世界シェア首位を誇る。韓・サムスン電子など世界的電機メーカーへセンサー部品・モジュールも販売しており、海外売上高比率は90%を超える。
・ペンタブレット領域で世界シェア首位、海外売上高比率90%以上
・売上高・利益いずれも2021年から減少、ただし特需の反動減の要素大
・平均年収904万円と埼玉県トップクラスの待遇、少数精鋭の組織体制
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:67(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られるため、安定的かつ豊かな人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:最難関級
新卒採用はエンジニア採用のみかつ若干名と極めて狭き門。中途採用における即戦力採用が社であるが少数精鋭の組織体制ゆえに採用枠は狭い。並みの大企業よりも入社難易度は遥かに高い。
採用大学:非公開(出典:ワコム新卒採用)
業績動向
✔売上高と営業利益
ワコムの売上高は過去8年間に渡って増加傾向が続いており、直近の2023年には1,187億円に到達。営業利益は2020年・2021年に130億円レベルまで急伸したが、同年以降はやや減益。
*1:2020年・2021年に利益急増した要因は、①COVID-19感染拡大期に巣篭もりでのイラスト趣味ブームによる販売拡大、②国内の教育業界でペンタブレットを大量導入したことによる特需、③世界的なパソコン・タブレットの販売急増による部品・モジュール販売の好調、など。
✔セグメント別の状況
ワコムは、ブランド製品事業(デザイン・イラストレーション・アニメ制作・教育向けペンタブレットおよび関連ソフトウェア、ビジネス用途向けディスプレイ・ペンタブレットなど)、テクノロジーソリューション事業(デジタルペン・マルチタッチセンサー・タッチパネルの部品・モジュール販売など)、の2事業を有する。
当社は自社ブランドで多種多様なペンタブレット・液晶タブレット製品を販売しているが、これらの製品群は売上高の約28%に過ぎない。当社は売上高・利益の殆どをテクノロジーソリューション事業による部品・モジュール販売から得ている。
✔最終利益と利益率
ワコムの純利益は2020年・2021年にピークを迎えたが、同年以降は減益*2。営業利益率は好調時には10%を超えるが、平常時なら3%〜5%ほどで推移している。
*2:2022年に減益に沈んだ理由は、前年までのペンタブレット特需一服による反動減が主要因。当社自身の問題というわけではなく、COVID-19後の特需による需要先食いの反動減としての側面が大きい。
✔自己資本比率と純資産
ワコムの自己資本比率は長期的に40%〜50%台の高水準で安定的に推移。純資産は2021年に435億円に到達したが、同年以降はやや減少傾向にある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ワコムの平均年収は緩やかな増加傾向が続いており、直近では904万円に到達。埼玉県下ではトップクラスの給与水準を誇る。総合職の場合、30歳で年収550万~650万円、課長職レベルで年収950万~1,100万円が目安。2021年は平均年収1,122万円に急伸したが、これは前年の利益急増を従業員に還元したことが主要因。
✔従業員数と勤続年数
ワコムの単体従業員数は390人〜400人ほどに過ぎず、知名度の割には少数精鋭の組織体制となっている*3。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1,160人ほど。平均勤続年数は直近で11.3年となっている。
*3:当社は生産の殆どを海外企業に委託するファブレスメーカーであるため従業員が少ない。本社工場は研究開発および少数生産のみに活用しており、最小限の人員規模に留めている。
総合評価
企業格付け:BBB
埼玉県加須市に本社を置くペンタブレット技術におけるリーディングカンパニー。必ずしも一般知名度が高いわけではないが、卓越したユーザビリティによりイラストレーター界隈においては著名企業。実際のコアビジネスはペンタブレット技術から派生したセンサー部品・モジュールの販売であり、韓・サムスン電子の「Galaxy」シリーズなどにも当社製品が組み込まれている。業績面は2020年・2021年をピークに停滞するが、これはCOVID-19直後の世界的なIT機器販売急増・ペンタブレットブームで需要を先食いした反動減の要素が大。当社はペンタブレット領域において世界シェア首位であることに加えて、特許戦略による技術防衛にも長けており、今までに築いたニッチトップポジションを維持する限りはまず安泰であろう。
就職格付け:BB
平均年収904万円と埼玉県下トップクラスの給与水準を誇る優良企業。総合職の場合、30歳で年収550万~650万円には到達するうえ、課長職レベルで年収950万~1,100万円となる。福利厚生は給与にコミであるため、借上げ社宅制度や家賃補助制度などは基本的にはない。が、本社所在地が(住宅コストが安い)埼玉県加須市であることを思えば特段の問題にはならないだろう。従業員への還元にも前向きであり、2021年には前年の業績好調を反映して年収1,100万円を超えるまでの急増を遂げた。埼玉県の出身者であれば真っ先に狙いたい有料企業ではあるが、少数精鋭の組織体制かつ採用数も少ないため入社難易度は非常に高い。