企業概要
ファーストリテイリングは、カジュアル衣料品のユニクロ・ジーユーなどを展開するファストファッション企業。1949年に柳井政雄が創業したメンズショップ小郡商事から発展、1984年にユニクロ1号店が出店。創業当初は個人商店の紳士服店であったが、柳井正の入社以降は自社企画商品を拡充。現在では流行に左右されないアイテムを主力としつつ、設計・材料調達・製造・物流・販売までを自社で行うことで高品質・低価格を実現。カジュアル衣料品の売上高においてZara・H&Mと世界首位を争う。
・世界トップクラスのアパレル企業、ユニクロ・GUなどを展開
・売上高は成長基調が続き2兆円を突破、利益率も高いうえ財務も堅い
・平均年収1,147万円と高待遇、ただし平均勤続年数が4.92年に留まる
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:69(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
採用人数は年間300人以上と門戸は広いが、これは地域正社員もあわせての採用実績。グローバルリーダー職は出身大学の旧帝大・早慶クラスがボリューム層となっている。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・大阪大学・一橋大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・上智大学・同志社大学・中央大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔営業収益と営業利益
ファーストリテイリングの売上高は成長基調が続いており、2013年に売上高1兆円を突破した5年後には売上高2兆円に到達*1。営業利益も売上高に比例して遂げており、直近では2,973億円に到達。
*1:ファーストリテイリングの売上高の成長は、中国市場での躍進に支えられている。同社はグレーターチャイナ市場と呼称。中国で好まれる機能性やデザインを採用、巨大市場での勢力拡大を続けている。
✔セグメント別の状況
ファーストリテイリングは国内ユニクロ事業(日本国内のユニクロ事業)、海外ユニクロ事業(海外のユニクロ事業)、ジーユー事業(日本国内・海外のジーユー事業など)、グローバルブランド事業(セオリー・プラステ・コントワーデコトニエ・プリンセネスタムタムなど)、その他事業の5事業を有する。
✔最終利益と利益率
ファーストリテイリングの純利益は売上高に連動して成長基調ではあるが、年度による好不調が激しい。ただし、2020年以降は好調が続いており、直近では2,733億円を記録*2。自己資本利益率は直近で17.5%とかなり高い利益率となっている。
*2:2022年はCOVID-19の感染収束により国内外での衣料需要が急回復、店舗・ブランディングの強化による販促効果、急激な円安進行も利益の追い風となった。
✔自己資本比率と純資産
ファーストリテイリングの自己資本比率は長期的には微減しているが、過去8年間は概ね40%近傍で推移*2。純資産は堅調な増加を継続しており、直近では1.62兆円に到達。
*2:ファーストリテイリングは事業拡大の為の社債発行を2015年と2018年にそれぞれ約2,500億円規模で実施。これにより自己資本比率が横這いとなっている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ファーストリテイリングの平均年収は増加傾向にあり、直近で959万円に到達。採用職種はグローバルリーダーと地域正社員の2種類、前者は平均年収900~1,200万円程度と推定。平均年齢は38歳となっており社員の年齢構成はやや若めである。
✔従業員数と勤続年数
ファーストリテイリングの単体従業員数は右肩上がりで増加を続けており、直近では1,707人まで増加。子会社・関連会社を含めた連結従業員数は5.98万人の大所帯である。平均勤続年数は直近でも4.92年と、大手企業としては著しく短い水準に留まっている。
総合評価
企業格付け:AA
■業界ポジション
グローバル衣料業界で世界首位級、日系アパレル企業としては断トツ首位(当社の売上高2.7兆円に対して業界2位のしまむらでも6,300億円ほど)。SPAと呼ばれる垂直統合型サプライチェーンを構築、企画・生産・物流・販売までのプロセスを自社一貫化することで高い競争力を完成させている。
■業績動向
成長傾向。2013年に売上高1兆円を超えてからも成長ペースは加速、2023年には売上高2.7兆円規模にまで拡大。流行に左右されにくいベーシックな品揃えに特化しつつ、徹底的に高品質な商品を作り込む戦略が成功している。過去30年間で売上高は190倍以上に増えており、まさに日系企業における成長企業の模範的存在である。
■財務体質
良好。驚異的な成長ペースを続けつつも財務規律はしっかりと堅持しており、直近でも自己資本比率55.1%と大いに良好な水準を維持。自社工場は殆ど保有せず、パートナー会社に生産を委託するビジネスモデルゆえに設備投資の負担も軽く済むのも大きな美点。
就職格付け:BBB
■給与水準
直近の平均年収は1,147万円と繊維業界・アパレル業界において断トツ首位。実質的な総合職であるグローバルリーダー職であれば更に平均年収は高く、新卒初任給も30万円/月を確約。マネージャークラスならば年収1,100万〜1,400万円にも達する。完全実力主義を掲げており、年功序列的な思想は一切ない。実力が足りなければ昇給もストップするため、常に向上心を持って上を目指し続けることが求められる。
■福利厚生
極めて限定的。家賃補助制度はあるが、その他の福利厚生は基本ない。退職金制度もなく確定拠出年金のみとなるため、退職金も込みで月々のサラリーが高いことを理解する必要はある。平均勤続年数が5年未満と短いため、安定した終身雇用はあまり期待しない方が良いか。
■キャリア
グローバルリーダー職・地域正社員の2職種制。グローバルリーダー職は事実上の総合職として企画・開発・経理・人事・物流などを担当する一方、地域正社員は各エリア内の店舗運営に特化したキャリアを歩む。いずれの職種も入社後の数年間は店舗からスタートして店長を経験するのが基本(キャリア採用は除く)。完全実力主義故に昇格ペースは個々人によりまったく異なり、年功序列による昇格は一切ない。