企業概要
キリンホールディングスは、ビール・洋酒・清涼飲料水・医薬品などを主力とする大手飲料メーカー。1870年にウィリアム・コープランドがビール醸造所として設立。1888年には『キリンビール』を発売して国内シェアを拡大。戦時中には国策によりブランドを廃止されるも戦後に復活。1972年には国内シェア60%以上を掌握したが、1990年代からはアサヒの猛追でシェアを落とした。現在は、国内外においてビール・洋酒・清涼飲料水などを幅広く展開。傘下の協和キリンを通じて展開する医薬品事業も強い。
・飲料業界3位、国内外で酒類・清涼飲料水を展開するほか医薬品も強い
・売上高・利益いずれも安定型、財務体質は健全な水準を維持
・持株会社は平均年収977万円、総合職・30歳で年収650~700万円が目安
就職偏差値
✔就職偏差値:72(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
グループ全体での採用数は年間100人~120人と採用数はそこそこ多め。さすがに飲料業界の名門だけあって、総合職の出身大学もハイレベル大学が中心、就職難易度はかなり高め。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・九州大学・神戸大学・広島大学・岡山大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・同志社大学・明治大学・立命館大学・関西学院大学など(出典:ダイヤモンドオンライン)
業績動向
✔売上高と事業利益
キリンホールディングスの売上高は1.8兆~1.9兆円で安定的に推移していたが、2023年には売上高2.13兆円に到達*1。飲料メーカーとして業界3位の規模を誇る。事業利益は2020年・2021年を除けば1,900億レベルで長期的に安定しており、2023年には2,015億円に到達*2。
*1:2023年の売上高増加の要因は、①COVID-19終息による酒類販売の復活、②オセアニア酒類事業のライオンブランドによる販売増加、③清涼飲料水における免疫ケア飲料の販売好調、など。
*2:2023年の利益増加の要因は、①医薬事業の協和キリンにおける『クリースビータ』などの戦略商品の販売好調、②北米におけるコーク・ノースイースト社における価格改定・コスト削減、など。
✔セグメント別の状況
キリンホールディングスは、国内ビール・スピリッツ事業(キリンビールブランドによるビール・発泡酒・洋酒など)、国内飲料事業(キリンビバレッジによる清涼飲料など)、オセアニア酒類事業(ライオンブランドによるビール・洋酒など)、医薬事業(協和キリンによる医薬品)、その他事業(国内ワイン・北米飲料・バイオケミカルなど)、の5事業を有する。
当社は『キリンビール』が著名だが、国内ビール・スピリッツ事業が売上高に占める割合は約32%に過ぎない。2009年に買収した豪・ライオンネイサン社が牽引するオセアニア酒類事業が売上高の約13%を占めることも特徴的。利益面では医薬事業が全社利益の約37%を占めており、稼ぎ頭の事業となっている。
✔最終利益と利益率
キリンホールディングスの純利益は2017年に2,419億円に達した*3が、同年以降は下降気味。ただし、2022年・2023年には純利益1,000億円の大台を超え、やや回復を示した。営業利益率は長期的に5~7%ほどで推移している。
*3:当社は2017年にブラジルキリンを蘭・ハイネケン社に約770億円で売却してブラジル事業から撤退。同年の純利益には本売却による譲渡益が加算されている事情がある(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
キリンホールディングスの自己資本比率は2016年を除けば34%~39%ほどで推移している。純資産は2020年頃まで1兆円前後での横ばい傾向が強かったが、2021年からは増加傾向に転換。直近の2023年には1.43兆円に到達している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
キリンホールディングスの平均年収は2018年に1,158万円にも達していたが、同年以降は870万~950万円程で横ばい*4。大卒総合職ならば30歳で年収650~700万円、課長職レベルで1,000万~1,200万円ほどに達する。平均年齢は2019年以降は42歳前後で安定しており、大手企業の標準的水準。
*4:2018年までは持株会社の従業員が20人前後に過ぎなかったが、同年からは800人~1,000人レベルに増加したことが主要因。製造・物流部門などは子会社化されており、当社本体の従業員の殆どが、グループ管理・事業企画などに従事するホワイトカラーであるため平均年収が高くなりやすい。
✔従業員数と勤続年数
キリンホールディングスの単体従業員数は2018年まで50人未満と極めて少なかったが、2019年からは1,000人規模に増加。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3.01万人ほどであり、従業員の殆どは事業会社に属する組織構造となっている。
総合評価
企業格付け:AA
サントリー・アサヒに次いで業界3位に位置する大手飲料メーカー。現在ではビール・洋酒・清涼飲料水を幅広く製造販売している他、2007年にグループ入りした協和キリンを通じて医薬品も展開。2009年に買収したライオンネイサン社を通じてアジア・オセアニア地域では『ライオン』ビールも販売している。業績はかなりの安定型であり、売上高は1.8兆~1.9兆円ほどで長期的に推移。2023年には海外事業・医薬品の好調によって売上高2.13兆円を記録した。財務体質においても自己資本比率34%~39%ほどで安定。それほど高い自己資本比率でもないが、借入による資金調達に活用しながら海外展開をさせている事情を鑑みれば、それほど問題はない水準である。
就職格付け:A
明治時代に横浜・山手居留地においてノルウェー系アメリカ人であるウィリアム・コープランドが『ジャパン・ブルワリー・カンパニー』として創業した歴史を持つ。給与水準においては平均年収956万円(2023年)と恵まれているが、これは持株会社に所属するグループ管理・事業企画のホワイトカラーのみの平均年収であるため注意が必要。おおよその目安としては大卒総合職・30歳で年収650~700万円、課長職レベルで1,000万~1,200万円ほどである。福利厚生もかなり恵まれており、借上げ社宅制度では家賃額の半額が会社負担となる(最大8万円まで)。また当社はディズニーランドのオフィシャルスポンサーであるため、ディズニーランド・ディズニーシーにおいて社員専用休憩所やチケット価格値引きなどのサービスも受けられる。当社はあくまでも持株会社であるため、当社に入社した場合はまず事業会社(キリンビール・キリンビバレッジ・メルシャンなど)に出向して事業経験を積むことが求められる。