企業概要
オリンパスは、内視鏡・顕微鏡などの医療製品を製造販売する光学機器メーカー。1919年に顕微鏡を主力製品として創業、1936年にはカメラ用レンズの開発に成功して1949年にオリンパス光学に社名変更。戦後長らくカメラを主力製品とする光学機器メーカーであったが、2011年には粉飾決算で上場廃止の危機に陥った。事件以降は医療分野に経営資源を集中して再建、消化器内視鏡シェアでは世界シェア70%で断トツ首位。2020年にはカメラ事業を分社化して医療機器メーカーへの転向を図っている。
・カメラから医療機器へ転向した光学機器メーカー、世界シェア首位級
・売上高は増加するも2023年は利益急減、好調時は利益率も高い
・平均年収1,041万円と医療機器メーカー首位級、住宅補助が充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:70(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間30名~50名と少ないうえ、事務系総合職は年間5名~10名ほどに過ぎず、理系偏重型の採用方針。総合職の出身大学は旧帝大・早慶クラスがボリューム層。
採用大学:【国公立】東京工業大学・大阪大学・東北大学・北海道大学・九州大学・千葉大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・東京理科大学・成蹊大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
オリンパスの売上高は2021年まで7,800億円前後で推移していたが、直近の2023年には9,362億円まで増加。営業利益は2022年には過去最高の営業利益1,866億円に到達したが、2023年には435億円まで急落*1。
*1:2022年は欧米でCOVID-19感染拡大防止の行動制限が緩和されたことで健康診断需要が回復して内視鏡・医療機器の販売が伸長。2023年は早期退職支援・整形外科事業撤退による一時費用によって営業利益が急減した。
✔セグメント別の状況
オリンパスは内視鏡事業(消化器内視鏡・外科内視鏡・医療サービス)、治療機器事業(消化器科処置具・泌尿器科製品・呼吸器科製品・耳鼻咽喉科製品など)、科学事業(2023年に事業売却・撤退)、その他事業(生体材料・整形外科用器具など)、の4事業を有する。
オリンパスの主力事業は内視鏡事業であり、売上高・利益に占める割合はいずれも50%以上。オリンパスの代名詞であったカメラ事業は2020年に分社化、撤退済。2023年には科学事業を米ベインキャピタルに売却(参考リンク)、医療分野への選択と集中を加速させようとしている。
✔最終利益と利益率
オリンパスの純利益は年度により好不調が分かれるが、直近の2023年は過去最高となる純利益2,425億円を記録*2。2018年のみ悪化したが一過性*3。営業利益率は好不調の差が大きいが、長期的に10%~20%レベルで推移しており高利益率である。
*2:2023年に純利益が急増した理由は、科学事業を米・ベインキャピタルに売却したことによる特別利益4,276億円が加わったことが主要因。
*3:2018年のオリンパスは一過性の特別損失として約400億円を計上。過去の粉飾決算に関わる訴訟和解金、中国での訴訟における引当金、中国での生産停止に関わる一時費用など。
✔自己資本比率と純資産
オリンパスの自己資本比率は30~50%の範囲で推移しており、直近では49.4%となっている。大手メーカーとしてはかなりの高水準であり財務体質は健全*4。純資産は2020年から急増して純資産7,571億円に到達。
*4:2011年に粉飾決算が判明したオリンパスは自己資本比率4.6%という危機的水準にまで低下して経営危機に陥ったが、業績再建により現在の水準にまで立ち直った経緯がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
オリンパスの平均年収は2020年まで800万円台で推移していたが、直近では業績好調により増加傾向。直近の2023年には1,041万円に到達しており、医療機器メーカーとしてはトップクラスの給与水準にある。総合職の場合、30歳で年収700万~800万円、課長職レベルで年収1,000万~1,200万円ほど。
✔従業員数と勤続年数
オリンパスの単体従業員数は2020年から急減傾向にあり、直近では2,834人まで縮小。これはカメラ事業・科学事業の売却や、早期退職制度の活用が主要因と推察される。平均勤続年数は直近で13.6年と大手メーカーの標準的水準だが待遇の割には長くない。
総合評価
企業格付け:A
かつてオリンパス事件(参考リンク)と呼ばれる粉飾決算で社会を揺るがした大手メーカーだが、最近では事業転換に成功して今では世界的な医療機器メーカーとして開花。消化器内視鏡シェアでは世界シェア70%を占め、競合他社を圧倒している。これは部品レベルから自社開発・製造する技術力によって、他社が追従できない地位を築きあげている。業績においてはカメラ事業・科学事業から撤退したものの、2023年に売上高9,362億円に到達。利益においても2018年から右肩上がりで推移しており、営業利益率20%以上の高収益体質となっている。2023年には営業利益が急減したが、これは早期退職支援・整形外科事業撤退による一時費用が原因。2023年には顕微鏡事業を約4,200億円で売却、医療機器メーカーとして更に成長するための軍資金を得ることに成功している。
就職格付け:AA
かつてカメラで親しまれた有名企業であり、現在ではグローバルな医療機器メーカーとして著名。給与水準は平均年収800万円以上で安定的、直近では業績好調により平均年収1,000万円を超える待遇に。福利厚生も恵まれており、入社5年間は独身寮もしくは借上げ社宅(事業所まで片道1時間以内)に入居できる。特筆すべきは新婚社員向け社宅制度であり、結婚後5年間は2LDK+バルコニーの新婚者用社宅に5年間に渡って入居できる。医療機器メーカーらしく、毎年ガン検診を無料で受診でき、女性社員は乳がん・子宮がん検診までもが付帯している。世間体と企業イメージは2011年のオリンパス事件の記憶から良いとは言えないものの、既に10年以上が経過して記憶は薄れつつある。一定のリテラシーがある人間であれば、医療機器メーカーとして生まれ変わった現状を高く評価している筈。ただし、長年に渡る構造改革によって事業売却や早期退職制度への抵抗感が薄い社風となっていることは注意点。事業売却によって当社を離れた従業員は少なくなく、2023年には早期退職制度によって844人が当社を離れている(参考リンク)。事実上の早期退職制度を「社外転進支援制度」と呼称しており、対象者には特別支援金が支給されるとはいえ辛いものがある。