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【勝ち組?】エムスリーの就職偏差値と平均年収・待遇【企業研究レポート】

企業概要

エムスリーは、医療従事者専門サイト『M3.com』を中核とした医療業界向けITサービスに特化したIT会社。2000年にソニーグループの電気通信事業者であるソニーネットワークコミュニケーションズが医療関連ITサービス会社として設立。設立直後にWEBサービス「MR君」を開始、製薬会社から医師への販促ツールとして大ヒット。2002年には医療情報サイト「M3.com」をオープン、医療業界における総合情報ポータルサイトとして発展。現在では国内31万人以上・全世界600万人以上の医師が利用している。

POINT

・医療業界向けITサービスに特化した上場ベンチャー企業、海外展開も強い
・売上高は増加傾向だが利益はやや減少傾向、財務体質は大いに良好
・平均年収936万円だが通勤手当や退職金なし、ハイキャリアからの人気は大

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:67(上位)

かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:難関上位級

中途採用比率が例年85%以上を占めており、新卒採用で入社する社員は多くない。採用倍率は男性43倍・女性28倍と厳しい。詳細データが公開されているため、参考にされたい(参考リンク)。
採用大学:【国公立】東京大学・東京工業大学・大阪大学・名古屋大学・東北大学・北海道大学・筑波大学・国際教養大学・奈良先端科学技術大学院など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・国際教養大学・同志社大学・東京理科大学など(出典:外資就活ドットコム

業績動向

✔売上高と営業利益

エムスリーの売上高は右肩上がりの増加傾向が続いており、2023年には過去最高となる2,388億円に到達*1。営業利益は2021年までは増加傾向にあり、同年には951億円に到達。が、同年以降は減少傾向に転換しており、2023年には営業利益643億円となっている*2。
*1:当社の売上高が増加している理由は、①医療従事者専用サイト『M3.com』を中核とした治験支援・医師転職支援・病院運営支援などの医療業界向けサービス拡大、②海外における登録医師数の急増による海外事業の規模拡大、など。
*2:2021年に営業利益が増加した理由は、①中国で子会社が株式上場したことによる営業利益100億円の計上(参考リンク)、②COVID-19の治療薬・ワクチン特需による治験関連事業の急成長、など。

✔セグメント別の状況

エムスリーは、メディカルプラットフォーム事業(医療従事者専門サイト『M3.com』運営)、エビデンスソリューション事業(臨床試験業務支援、治験業務管理・運営支援など)、キャリアソリューション事業(医療業界向け人材サービス事業)、サイトソリューション事業(医療機関運営サポート、訪問看護など)、海外事業(米国・英国・中国・韓国・インド・ドイツなどにおける事業展開)、の5事業を有する。
当社は医療従事者専門サイト『M3.com』を中核として、多種多様な医療業界向けITサービスを展開している。同サイトが含まれるメディカルプラットフォーム事業は全社利益の約59%を占め、当社の重要な稼ぎ頭となっている。海外事業では世界15か国以上に展開しており、日本発のベンチャー企業としては異例なほどに海外進出に成功している。

✔最終利益と利益率

エムスリーの純利益は2021年までは増加傾向にあり、同年には638億円に到達。が、同年以降は減少傾向に転換しており、2023年には営業利益452億円となっている。営業利益率は2021年に45.7%に到達してからは低下傾向だが、直近でも26.9%と大いに高利益率である。

✔自己資本比率と純資産

エムスリーの自己資本比率は70%~75%レベルで長期的に推移している。有利子負債をいつでも一括返済できるだけの現預金を常に確保しており、実質無借金経営である。純資産は増加傾向が長年に渡って続いており、2023年には3,667億円に到達。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

エムスリーの平均年収は2019年から増加傾向にあり、直近では936万円となっている。中途採用が多いために給与水準が個人ごとに異なっており、年次による目安給与が定まらない。新卒入社の場合は、入社1年目で425万円以上が確約され、30歳で650万~800万円が目安となる。

✔従業員数と勤続年数

エムスリーの単体従業員数は長期的な増加傾向が続いており、直近の2023年は649人となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.21万人と、かなりの大所帯である。平均勤続年数は3.2年~4.0年ほどで推移しており、従業員の入れ替わりは早い。

総合評価

企業格付け:A

2000年にソニーグループが医療系ITベンチャー企業として設立された。日本発祥のベンチャー企業としては傑出した成功を収めた企業であり、2021年には時価総額7兆円を超える快挙を成し遂げた。当時は単体従業員数500人レベルだった当社が、三菱商事三菱重工業キヤノンデンソーなどの日本を代表する大企業群をも時価総額で上回っていたのは、日系ベンチャー企業の歴史に残る伝説であろう。業績においては、売上高は2023年まで成長が続いているものの、営業利益・純利益は2021年をピークにやや後退。とはいえ、これはCOVID-19感染拡大期において治療薬・ワクチン特需や医療DXが急拡大した反動という側面が大きく、当社の衰退がはじまったと考えるのは余りに早計であろう。財務体質においては自己資本比率71.7%(2023年)と大いに良好な水準にあり、業績拡大と財務健全性を両立できている。直近では有利子負債185億円に対して現預金は1496億円と、いつでも有利子負債を一括返済できるほどにキャッシュリッチ企業である点も見逃せない。売上高の成長スピードがやや鈍化しているとはいえ、並大抵の大企業を凌駕する優良企業である点に変わりはないだろう。

就職格付け:BBB

ベンチャー企業としては最高峰の企業の一社。一般知名度はそれほど高くはないが、一定以上のリテラシーがある層であれば日系ベンチャー企業として屈指の成長を遂げた当社を知らぬ者はいないだろう。給与水準においては2018年までは平均年収700万円台で推移していたが、直近では平均年収936万円(2023年)に到達している。当社は中途採用からの入社者が80%以上を占めており、前職の年収ベースで個人ごとに給与レンジが設定されるケースが多いが故に年次ベースでの給与レンジは定まりにくい。強いて言えば、新卒入社の場合は入社1年目で425万円以上が確約され、30歳で650万~800万円が目安となる。福利厚生は基本的に給与に含みであるが、入社から4年間は借上げ社宅制度を適用することで住宅費を月額4万円までに抑えられる。ただし、通勤手当・退職金がない点には注意を要するだろう。世間的にはあまり知られていないが、若くして経営幹部に登用されうるがゆえに戦略コンサル・投資銀行・メガベンチャー等からのハイキャリアの転職者が多いことも特徴(参考リンク)であり、東京大学をはじめとするトップ大学からの採用実績数も数多い。平均勤続年数は4年前後と安定した終身雇用を期待するような環境ではないが、刺さる人には刺さる魅力をもった企業である。

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出典:エムスリー株式会社(有価証券報告書)