企業概要
MS&ADインシュアランスグループホールディングスは、損害保険事業を主力とする大手金融グループ。2010年に三井住友海上・ニッセイ同和損害保険・あいおい損害保険が合併、MS&ADインシュアランスグループに再編された。現在は三井住友海上火災保険・あいおいニッセイ同和損害保険・三井ダイレクトの3ブランドが主力。2015年にはイギリス第2位の損害保険会社のアムリンを買収、海外展開の拡大を急ぐ。
・国内三大損保の一角で業界2位、三井住友海上を筆頭ブランドとして擁する
・売上高・利益いずれも横ばいだが、業績悪化していた英アムリンの再建に目途
・総合職なら30代で年収780万~880万円ほど、福利厚生は住宅手当が手厚い
就職偏差値
SPEC:75(頂点)
総合職:68(上位)
■SPEC採用
日本企業における最高峰クラスの1社であり、誰もが勝ち組として認めるレベルの待遇・名声が得られる類稀な企業。入社するためには相当の能力・努力が必要であることは当然、運も必要である。
■総合職
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。給与・待遇は大手企業の中でも上位クラス、満足度の高い人生を安定して歩むことができる可能性が高い。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
全業界・就職偏差値ランキングはこちら
業績動向
✔売上高と経常利益
MS&ADインシュアランスグループの経常収益は2022年まで4.8兆~5.5兆円での横ばいが続いていたが、2023年は過去最高となる6.57兆円に急増*1。経常利益についても、1,500億~4,100億円レベルで横ばい。
*1:2015年に買収した英アムリン(参考リンク)が不祥事・業績悪化を繰り返しており、同年以降は同社が業績の足枷となっている状況であった。が、2023年には英アムリンの収益構造について改善、業績成長がようやく叶った。
✔セグメント別の状況
MS&ADインシュアランスグループは、国内損害保険事業(三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保・三井ダイレクト損保)、国内生命保険事業(三井住友海上あいおい生命・三井住友海上プライマリー生命)、海外保険事業(海外支店・海外現地法人・海外子会社)、の3事業を有する。
かつては海外事業(主に英アムリン)が業績悪化に陥ったことで、全社利益の殆どを国内事業に依存する時期が続いていた。が、2023年には海外事業が全社利益の約35%にまで急拡大している。
✔最終利益と利益率
MS&ADインシュアランスグループの純利益は2022年まで1,400億~2,600億円で推移していたが、2023年には過去最高となる3,692億円まで急増*2。
*2:2023年に純利益が急増した理由は、①海外事業の好調と為替レートの円安推移による利益増加、②政策保有株の売却による特別利益の計上、③国内自動車保険・火災保険の料率引き上げ効果、など。
✔自己資本比率と純資産
MS&ADインシュアランスグループの自己資本比率は直近で16.6%と低めだが、損害保険会社であれば健全な水準*3。総資産は2023年に4.51兆円まで急増*4。
*3:損害保険会社は顧客から保険料を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすい。
*4:純資産が2023年に増加した理由は、①金融マーケットの好況により当社が保有する有価証券評価額の上昇、②為替レートの円安推移による為替換算調整の急増、など。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
MS&ADインシュアランスグループの平均年収は直近で1,101万円と高水準だが、これは持株会社の418名のみの平均年収。事業会社にあたる三井住友海上保険の場合、大卒総合職は30歳で年収780万~880万円ほど、課長職レベルで1,300~1,450万円ほど。
✔従業員数と勤続年数
MS&ADインシュアランスグループの単体従業員数は450人に過ぎず、従業員の殆どが事業会社に属している。子会社・関連会社を含めた連結従業員数は3.8万人ほど。平均勤続年数は20年以上の高水準だが、これは持株会社の450名のみの平均勤続年数であるため参考にならない。
総合評価
企業格付け:AA
■業績動向
過去8年間は横ばい傾向が強く、成長性が薄い状況が継続。2010年に三井住友海上・ニッセイ同和損害保険・あいおい損害保険が合併した直後の経常収益4兆円弱の時代と比べれば、経常収益6兆円規模にまで拡大している。長年の課題であった英・アムリンの再建が2023年に目途が立ち、海外事業の収益性は大きく改善。ようやく海外事業の拡大フェーズが到来したか
■財務体質
良好。自己資本比率は16.6%と一見すると低いが、損害保険会社としては標準的な水準。顧客から預かった保険料が貸借対照表の負債に計上されていることが自己資本比率を押し下げているに過ぎず、実際の有利子負債は7,150億円(2023年)に留まっている。
■事業構造
MS&ADインシュアランスグループの実態は三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保の寄り合い所帯であり、組織構造の点で不利。2021年には初のシステム統合が始まり、2010年の合併から11年を経て改善が始まった。グローバル展開については、海外で利益の約30%以上を稼ぐ東京海上ホールディングスに対して、当社は利益の約7%程度に留まっており道半ば。
就職格付け:総合職SPEC=AAA/総合職=BBB
■給与水準
損保業界上位級。大卒総合職は30歳で年収780万~880万円ほど、課長職レベルで1,200~1,450万円ほどになる。更に後述する住宅補助の恩恵もあるため、金銭的には相当以上に恵まれるだろう。ただし、損保業界には「新車の購入・数年おきの買替」の文化があるため、可処分所得が目減りする。また、国内外200拠点以上での定期的な転勤があるため共働きには向かず、世帯年収は上げにくい。
■福利厚生
良い。総合職であれば全国転勤が伴うものの、家賃補助制度・借上げ社宅制度により住居コストを抑制可能。借上げ社宅制度は55歳まで適用されるため、恩恵を得られる期間も長め。ただし、地域総合職になると住宅補助が一気に目減りする。要するに、4~6年おきの全国転勤の対価としての住宅支援であり、全国転勤を耐える社員たちへの生活保障としての色彩が強い。
■キャリア
グローバル総合職・ワイドエリア総合職・エリア総合職・総合職SPECの4職種制。グローバル総合職は国内外の全国転勤が伴うものの給与・昇進・福利厚生が大きく厚遇され、入社後は4~6年おきのローテーションを経ながら経験を蓄積していく。ワイドエリア総合職・エリア総合職は、転勤範囲が限られるものの給与・福利厚生が大きく目減りするため注意が必要。
■総合職SPEC採用
総合職SPEC採用のみ就職格付けはAAAランクとなる。新卒初任給は総合職採用と同一であるが、配属先にアクチュアリー・グローバル・金融IT部門などの花形部門を確約。東京都内の事業所がメインの部門を確約されるため、大手損保就職のリスクである「営業ドサ周りと転勤リスク」を抑制できる点は魅力。とはいえ、大手証券会社ブレイン採用や外資系金融・コンサルは初任給600万円以上でのオファーも珍しくないため、その点では不利。
出典:MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社(有価証券報告書)