企業概要
JTBは、旅行代理店業・観光地開発などを主力とする大手旅行会社。1963年に日本交通公社から営業部門が分社化して設立。1960年代から日本人・外国人向けの旅行サービスを幅広く展開して事業規模を拡大。1973年には旅行雑誌『るるぶ』をリリース、累計6,000巻以上を発行して国内外の観光地を日本国内に紹介。1985年には旅行の前分割払いを開始、高額な海外旅行をより身近なものに変革した。現在では旅行代理店として国内1位、自治体と連携した観光開発・イベント運営・ふるさと納税事業なども展開。
・旅行業界で断トツ首位に君臨する巨人、自治体と連携した観光地開発にも強い
・売上高・利益は2020年の急低迷から回復途上、財務体質は依然として弱め
・総合職・30歳で年収450万~が目安、2021年には給与3割カットを断行
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:57(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間200人~500人ほど。就職人気ランキングの上位常連企業であり、選考倍率は高くなりやすい。ただし、採用大学に占めるハイレベル大学の比率は少ない。
採用大学:【国公立】名古屋大学・宮城大学・横浜市立大学・広島市立大学・青森公立大学・小樽商科大学・お茶の水女子大学など、【私立】早稲田大学・明治大学・中央大学・立命館大学・南山大学・成城大学・成蹊大学・獨協大学・玉川大学・西南学院大学・愛知大学・東北学院大学・流通経済大学・平成国際大学・秀明大学・開智国際大学・東京家政大学など(出典:逆引き大学辞典)
業績動向
✔売上高と営業利益
JTBの売上高は2018年の1.36兆円をピークに低迷傾向にあり、2020年には0.37兆円まで下落*1。同年以降はやや回復傾向だが、2018年と比べると低空飛行が続く。営業利益は2020年に▲975億円まで悪化したが、2022年・2023年は300億円以上で推移している*2。
*1:当社の売上高が2020年に急落した理由は、COVID-19感染拡大による旅行需要の消失が主要因。2020年には緊急事態宣言が発出されたことで国内旅行・海外旅行の需要が激減、当社の業績にとって「類例のない経営環境の悪化」を及ぼした。
✔セグメント別の状況
JTBは、ツーリズム事業(個人・法人向けの旅行ソリューションなど)、エリアソリューション事業(観光事業者・自治体向けの観光開発・DX・エリア開発など)、ビジネスソリューション事業(法人向けHR・総務・人材育成・経費削減ソリューション、ビジネスイベント運営支援など)、グローバル事業(海外顧客向け旅行事業)、事業基盤機能(コーポレート機能群としての事業・経営機能)、の5事業を有する。
当社は国内最大の旅行会社として添乗員同行ツアー・旅行パック・宿泊予約など多種多様な旅行ソリューションを提供している。自治体・官公庁と提携した観光開発も主導しており、沖縄北部などで地域全体を観光エリアとして開発する事業を展開する(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
JTBの純利益は2021年に▲1,051億円と巨額損失を計上*2したが、同年以降は220億~290億円まで拡大している。営業利益率は2020年を除けば0%〜3%ほどで推移しているが、長期的に利益率の低迷している。
*2:当社が2020年に純損失▲1,051億円まで悪化した理由は、COVID-19感染拡大による影響。深刻な業績悪化を受けて、①VR修学旅行・オンライン接客などのデジタルサービスの拡充、②リモートワークの普及を受けたワーケーション商品の開発、などで対応したが業績悪化を抑えきれなかった。
✔自己資本比率と純資産
JTBの自己資本比率は2020年に6%台まで低下したが、同年以降は15%レベルで推移している。低利益率が続く状況において負債依存度が高く、財務体質は弱め。純資産は2017年の1,782億円をピークに減少しており、2023年は1,321億円となっている*3。
*3:当社は2020年に純損失▲1,051億円を計上したことで純資産が急減、自己資本比率6%台まで減少する危機に陥った。2021年には日本政策投資銀行や取引先銀行に総額300億円の第三者割当増資を実施、300億円の資本増強を受けた。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
JTBの平均年収は非公開。大卒総合職の場合、30歳で年収450万~560万円ほど、課長職レベルで年収850万~950万円が目安。旅行業界としては最高峰の給与水準である。
[非公開会社のためデータなし]
✔従業員数と勤続年数
JTBの単体従業員数は1.19万人(2023年)ほどの組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.89万人ほどの大所帯である。平均勤続年数は非公開。
[非公開会社のためデータなし]
総合評価
企業格付け:CCC
1962年に財団法人日本交通公社から分離独立した日本最大の旅行会社であり、売上高1兆円を超える業界の巨人。業界2位のKNT-CTホールディングスでも売上高2,554億円であるから、まさしく当社は他社の追随を許さない傑出した企業規模である。業績においては2020年にCOVID-19影響で売上高が激減したうえ純損失▲1,051億円を計上したが、同年以降は回復傾向にある。とはいえ、①オンライン旅行予約サービスの台頭、②格安パッケージツアー会社の台頭、によって個人顧客からの旅行受注は中長期的にも減少傾向にあり、成長性には期待が持ちにくい状況。財務体質においては2020年の巨額損失で受けた打撃からの回復途上にあり、自己資本比率18.8%(2023年)と芳しくはない。本来であれば純利益を内部留保として蓄積することで財務体質の回復を図りたいが、営業利益率0%~3%ほどの低利益率なビジネスモデルゆえに回復スピードは緩慢である。
就職格付け:C
2010年代までは就職人気ランキング1位に君臨することも多かった(参考リンク)が、2020年代においては若干の人気後退を見せている(COVID-19影響での深刻な業績悪化や、そもそも若者にとって旅行会社が疎遠な存在となったことも理由だろう)。給与水準においては旅行業界でトップクラスであり、大卒総合職であれば30歳で年収450万~560万円ほど、課長職レベルで年収850万~950万円が目安となる。ただし、COVID-19感染拡大期には一般社員も一律給与30%カットが断行されたことで、生活水準の大きな低下を強いられた(参考リンク)。福利厚生においては独身寮・社宅制度によって若手社員の負担が軽減される他、勤務地域に応じて地域間調整給が支給される(首都圏は2万円/月・中部地方は0.8万円/月など各地域の物価水準に応じた調整給)。ただし年間休日日数は116日(アニバーサリー休日、誕生日休日を含む)と、大手企業の割には渋い。総じて、旅行業界としてはトップクラスの待遇であることは疑いの余地がない反面、旅行業界に強い志望度がないのであれば別業界でも同水準の待遇を得ることはそう難しくはないか。