企業概要
阪神国際港湾は、港湾法に基づき阪神港を管理運営している港湾運営会社。1967年に国・大阪市・神戸市により阪神外貿埠頭公団として設立。2010年に港湾の国際競争力低下を危ぶんだ政府が『国際コンテナ戦略港湾』政策を策定したことで、当社は2014年には港湾法に基づき阪神港を一体運営する企業として再発足した。現在では阪神港の管理運営・設備管理を担う他、船舶・貨物の誘致(ポートセールス)によって阪神港の国際競争力の強化にあたっている。当社株式の約95%以上を国土交通大臣・大阪市・神戸市が保有しており、事実上の公営企業である。
・大阪港・阪神港の管理運営を担う国策企業、2014年に再編して発足
・売上高・利益いずれも安定的、財務体質は自己資本比率が低めだが問題ない
・平均年収683万円で国家公務員に準じた待遇、阪神圏外への転勤は極稀
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
年間の採用人数は2人と極端に少ないが、2024年から新卒採用を開始したばかりなので致し方ない。一般知名度が壊滅的に低いために選考倍率はまだまだ低い状況。
採用大学:【国公立】大阪大学・神戸大学・岡山大学・滋賀大学・山口大学・鳥取大学・大阪市立大学など、【私立】早稲田大学・関西学院大学・関西大学・立命館大学・学習院大学・東海大学・近畿大学・摂南大学・龍谷大学・帝京大学・大阪経済大学・ノートルダム清心女子大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
阪神国際港湾の売上高は120億~150億円ほどで長期的に安定していたが、2024年には過去最高となる186億円まで到達している。営業利益は6億~14億円で長期的に推移しており、景気後退局面も含めて安定的である。
✔セグメント別の状況
阪神国際港湾は、港湾運営事業(ポートセールスによる創荷・集荷、港湾施設整備、埠頭施設の管理運営、海外港湾の運営参画など)のみの単一事業会社である。
当社は大阪港・神戸港の港湾運営会社として、政府主導の『国際コンテナ戦略港湾』政策の推進を担っている。最近では大阪港夢洲地区 C12 岸壁に大型ガントリークレーンの導入(参考リンク)のほか、サイバーポート化による生産性向上も研究している(参考リンク)。2018年からはカンボジアのシハヌークビル港湾公社を株式を取得して、海外港湾の管理運営にも参画している(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
阪神国際港湾の純利益は0.4億~0.9億円ほどで長期的に推移している。事業規模の割には低利益だが、国策企業故に利益追求の必要に乏しいことも要因であろう。営業利益率は長期的に5%~9%ほどで推移しており、景気後退局面にも安定的に利益を確保できている。
✔自己資本比率と純資産
阪神国際港湾の自己資本比率は10%~16%ほどで推移している。かなりの低水準に留まるが、当社特有の理由*1により財務健全性には特段の問題はない。純資産は長期的な増加傾向が続いており、2024年には83.8億円に到達している。
*1:当社は港湾運営会社の指定を受けることにより、荷さばき施設等の整備の際に国や港湾管理者から最大8割の無利子貸付を利用できるほか、税制優遇措置が適用されている。そのため、見た目の自己資本比率の低さは特段の問題にはならない特殊事情がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
阪神国際港湾の平均年収は683万円(2023年)となっている。実際には国家公務員をベースとした給与制度となっており、人事院勧告に応じて給与・賞与が変化する。大卒総合職の場合、30歳で年収480万~550万円ほど、課長職レベルで年収830万~900万円が目安。平均年齢は43.0歳(2023年)と大手企業の標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
阪神国際港湾の単体従業員数は80人~90人ほどでの推移が続いており、少数精鋭の組織体制となっている。平均勤続年数は非公開となっている。
総合評価
企業格付け:B
政府が主導する『国際コンテナ戦略港湾』政策を遂行するため2014年に神戸港埠頭と大阪港埠頭が合併して誕生した企業。国土交通大臣・大阪市・神戸市が当社株式の約95%以上を保有しており、国策企業としての位置付けにある。業績においては売上高・利益いずれも安定的であり、景気後退局面にも底堅い。強いて言えば事業規模の割には純利益が少ないが、そもそも利潤を目的とはせず公益追求を使命とする企業であるため問題にはならないだろう。財務体質においては自己資本比率16.4%(2024年)と低いが、これも政府による無利子貸付制度を活用していることを考えれば妥当であろう。いずれにせよ、国策を担っている当社の成功の指標は利益ではなく、阪神港の国際競争力の向上であることは気に留めておきたい。
就職格付け:CCC
1970年代に阪神港は世界2位のコンテナ取扱量を誇ったが、現在では上位30位にも食い込まないほどに低下。港湾競争力の低下は島国である日本にとって切迫した課題であるため、当社は阪神港の競争力を回復させることを使命とする(阪神港を取り巻く状況については国土交通省によるこちらの資料を参考にされたい)。給与水準においては平均年収683万円(2023年)ほど。国家公務員をベンチマークした給与制度となっており、大卒総合職の場合、30歳で年収480万~550万円ほど、課長職レベルで年収830万~900万円が目安となる。福利厚生においては、まず年間休日日数が128日と休みが多い。勤務日についても1日の所定労働時間が7.5時間であるため、年間で見れば労働時間は一般企業より相当に短くなる。独身寮・社宅がないのは惜しいが、家賃補助制度では月額2.8万円が補助される。海運業界に近い企業だけにグローバルな活躍を期待しがちだが、実は海外赴任はなく英語を日常的に使うこともない(稀に海外出張がある程度)。国策企業ながらも極めてマニアックな業界かつ一般知名度が極端に低いため、かなりの穴場企業である。