企業概要
野村ホールディングスは、国内最大手の大手証券会社グループ。1925年に大阪野村銀行証券部が分離独立して創業。戦前から証券業界で頭角を示し、1941年には日本初の投資信託を発行。戦後においても証券業界で圧倒的首位に君臨。2008年には経営破綻したリーマンブラザーズの欧州・中東部門を買収、現在では世界30カ国以上に従業員数2万7千人を誇り、預かり資産額は130兆円を優に上回る。国内5大証券の筆頭格として日本株の株式引受では国内断トツ首位、2位のSMBC日興証券を引き離す。
・日系証券で断トツ首位、世界30ヵ国以上に展開する世界的証券会社
・過去10年間は過去の買収・失敗の清算で業績は振るわず、利益が伸び悩む
・実力さえあれば20代で年収1,000万円以上に、住宅補助も手厚い
就職偏差値
IB・GM:79(頂点)
総合職:67(上位)
■IB・GM採用
日本企業における頂点であり、まさしくトップクラスの勝ち組。誰もが羨望する圧倒的な待遇・地位が約束されるスーパーエリート。しかしそれゆえ、入社できるのは同世代の極一握りに限られ、超人的な能力・努力・運がすべて必要となる。
■総合職
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
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業績動向
✔売上高と最終利益
野村ホールディングスの経常収益は2016年まで2兆円未満で推移していたが、2021年以降は急増傾向。2023年には経常収益4兆円に到達して過去最高を更新。純利益は長期的に停滞が続いており、2021年以降の日本株の高騰にも関わらず利益が伸び悩む*1。
*1:本来は「株価上昇による株式取引の活性化」が当社の手数料収入の拡大に繋がるが、2020年以降の日本株高ではそれが起こっていない。その理由としては、①投資信託・積立投資を中心とした長期保有の拡大、②手数料無料のネット証券の普及による逆風、などがある。
✔セグメント別の状況
野村ホールディングスは営業事業(個人・法人向け資産運用コンサルティング)、投資マネジメント事業(資産運用・投資信託)、ホールセール事業(株式・債券・為替・デリバティブ・M&A・IPO・ベンチャー投資・事業再生ほか)、その他事業(信託銀行・不動産ほか)の4事業を有する。
売上高ではホールセールが50%以上の高シェアを占めるが、利益面ではリテール・投資マネジメント・ホールセールが均衡。特定事業に依存しすぎないバランス型の利益構造は強み。
✔包括利益と利益率
野村ホールディングスの包括利益は、2018年にマイナス圏に転落したが、同年以降は回復傾向。自己資本利益率は同業証券会社とあまり変わらず、業界第2位の大和証券グループ本社にやや劣る*2。
*2:リーマンショック以前に発行した住宅ローン担保証券をめぐり米国司法省と法的に争っており、2018年に多額の和解金を支払った事情も(参考リンク)。買収したリーマンブラザーズ欧州部門の減損処理など、過去の清算に多くの費用支出を要してきた経緯がある。
✔自己資本比率と純資産
野村ホールディングスの自己資本比率は6.7%と低いが、証券業であれば健全な水準。顧客から預金・有価証券を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすい。純資産は2020年頃から増加傾向が続いている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
野村ホールディングスの平均年収は直近で1,437万円と高水準だが、これは持株会社の167名のみの平均年収。事業会社の野村證券の平均年収は800万~950万円程度と推定される、営業成績によって給与水準が大きく変動するため、年功序列的な給与水準ではない。
✔従業員数と勤続年数
野村ホールディングスの単体従業員数は167人に過ぎず、従業員の殆どは事業会社に属している。子会社・関連会社を含めた連結従業員数は2.67万人ほど。平均勤続年数は4年前後と極端に短いが、これは持株会社の167名のみの平均勤続年数。事業会社の平均勤続年数は、男性16.1年・女性15.9年(ESGデータ:平均勤続年数)である。
総合評価
企業格付け:AA
■業界内ポジション
戦後日本の証券業界において圧倒的首位の座に長年に渡って君臨し続ける証券業界の王。山一證券の自主廃業後は業界第2位の大和証券を大差で突き放す。リーマンブラザーズ欧州部門の買収により、証券業界において世界的な存在感を示せる唯一無二の存在である。
■業績動向
直近10年間は過去の買収・失敗の清算に関わる多額のコストを計上して足踏み感。リーマンブラザーズ欧州部門の買収は2008年の出来事であるが、10年以上が経過した現在でも業績の変動要素として尾を引き続けている。法人向け分野では他社を圧倒するものの、個人向け分野ではネット証券が安価な手数料を武器に躍進し続けており地盤は揺らぐ。
■財務体質
良好。自己資本比率は6.1%と一見すると低いが、証券業であれば問題ない水準。金融機関を対象とした国際的なルールを決定するバーゼル国際基準(バーゼルⅢ)においても、まったく問題ない水準での対応を進めている。
■ビジネス動向
直近の経営計画においては、①差別化した金融商品の提供、②脱炭素社会の実現、③新技術を活用した革新的サービス、④幅広い世代の資産形成サポート、などを重点課題に。ネット証券の手数料無料化に押される個人向けビジネスでは、(a)高齢者への金融サービス(相続・資産承継など)、(b)地方銀行との連携、を戦略に掲げる。
就職格付け:AA/BBB
■給与水準
良い。大卒総合職ならば30歳前後でSAS昇格試験に合格すると年収950万~1,050万円に到達する。入社3年目までは給与差もつきにくいが、同年以降は賞与額が同期間でも100万円以上の差がつくことも普通。課長職レベルになると年収1,400万~1,800万円ほどに達するが、実力なくして課長職レベルには到達できない。
■福利厚生
良好。独身寮・借上げ社宅制度が整備されており、物件によっては月額数千円レベルで居住することができる。高い給与水準にありながら住宅コストの負担も軽いため、可処分所得は高水準。が、数年おきの全国転勤によって共働きの維持は難しく、飲み会・接待などの支出も多い。サービス残業は厳格に取り締まられており、世に言われるブラック企業ではまったくない。
■キャリア
実力主義。初期配属は営業部門がメインであり、大学名や性別に関わらず実力で評価が決まる。一般職から支店長までの昇格例も多々あり、日本トップクラスの実力主義企業。営業適性があれば学歴不問で高年収に到達するが、営業適性がない場合には辛い。独特の企業文化も健在であり、お客さまへの手紙を「巻紙」と呼ばれる白紙に毛筆で書く文化も未だ健在("野村証券 果たし状"で検索すると実例を見ることができる)。向き不向きがハッキリと分かれる職種であるが、自身の営業適性に自信があるのならば、挑んでみるのも一興。
■GM/IB/リサーチ採用
GM/IB/リサーチ採用のみ就職格付けはAAAランクとなる。詳細非公開の特殊採用枠だが、新卒で基本給600万円以上が確約される所謂ブレイン採用。配属先は高度金融・投資銀行・リサーチ部門を確約。証券会社特有のドサ周り営業を経験せず、本社部門へ直行できるキャリアを歩める。傑出した専門性・語学スキルを磨く必要があるが、それに見合った待遇が得られるコースであるため就職格付けは国内最上位クラス。年収1,000万円以上を極めて早期に得られるほか、日系証券最大手の花形部門でダイナミックな証券ビジネスに携われるロマンは何物にも代えがたい。