企業概要
荏原製作所は、ポンプ・冷熱機械・タービン・半導体製造装置などを製造する風水力機械メーカー。1912年に畠山一清が渦巻きポンプメーカーとして創業。1916年には大型渦巻ポンプを完成させ、戦前から国内有数のポンプメーカーとして躍進。1950年代には小型ポンプの大量生産によって事業規模を拡大していき、海外進出も加速。1961年にはゴミ処理事業に進出した他、1985年には半導体業界向け装置分野にも進出。現在ではポンプ分野で国内シェア首位、半導体業界向けCMP装置では世界シェア2位を誇る。
・ポンプメーカーとして日系首位、半導体業界向け装置でも世界的大手
・売上高・利益は2021年から急成長が続く、財務体質も良好
・平均年収948万円で大手メーカーと遜色なし、福利厚生も住宅補助が手厚い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:67(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。業績好調を追い風に、下手な有名企業を凌駕する高待遇を実現。が、一般知名度の壊滅的な低さが査定の足枷。それさえ妥協できれば相当の穴場である。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用実績は年間80名~100名だが、採用数の半分弱は大学院卒で固められている。恵まれた待遇のニッチトップ企業だが、一般知名度は極めて低いために穴場感は強い。
採用大学:【国公立】大阪大学・北海道大学・千葉大学・信州大学・大分大学・室蘭工業大学・豊橋技術科学など、【私立】慶応義塾大学・東京理科大学・青山学院大学・日本大学・東京電機大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
荏原製作所の売上高は、2020年から右肩上がりの成長傾向にあり、2024年には過去最高となる売上高8,666億円に到達*1。営業利益も2020年から成長傾向にあり、2024年には過去最高となる営業利益979億円に到達。
*1:2020年から売上高が増加している理由は、①風水力発電やオフィスビルの増加によるポンプ需要の世界的な拡大、②半導体業界向けCMP装置やドライ真空ポンプの販売好調、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
荏原製作所は、建築産業事業(ビル・工場・商業施設向けのポンプ・送風機・冷凍機・冷却塔など)、エネルギー事業(石油・ガス・水素・アンモニアなどのポンプ、コンプレッサ・タービン、保守サービスなど)、インフラ事業(浄水場・下水処理場・トンネル向けのポンプ・換気設備)、環境プラント事業(ごみ処理施設の建設・運営など)、精密電子事業(半導体業界向けCMP装置・ドライ真空ポンプ・オゾン水製造装置など)、その他事業、の6事業を有する。
当社は国内最大手のポンプメーカーとして知られるが、ポンプ製造で培った流体技術を活かして事業多角化を推進。とりわけ精密電子事業における半導体業界向けの装置群は高い利益率を有しており、全社利益の約49%を担うまでに拡大している。
✔最終利益と利益率
荏原製作所の純利益は2020年から増加傾向が継続しており、2024年には過去最高となる714億円に到達している。営業利益率は2020年まで5%〜7%レベルで推移していたが、同年以降は10%を上回る水準に向上。機械メーカーとしては良好な利益率を誇る。
✔自己資本比率と純資産
荏原製作所の自己資本比率は、過去8年間に渡って45%前後で極めて安定的。大手メーカーとしても良好な水準にあり、負債に依存しすぎない事業運営ができている。純資産は2020年から右肩上がりで増加しており、2024年には4,853億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
荏原製作所の平均年収は2021年まで720万〜780万円で推移していたが、2022年からは増加傾向。2024年には平均年収948万円まで向上している。総合職の場合、30歳で年収650万〜700万円、課長職レベルで年収950万~1,200万円が目安。2018年の人事制度改革によって実力主義色が強まり、優秀な若手の抜擢人事も開始されている。
✔従業員数と勤続年数
荏原製作所の単体従業員数は長年に渡って4,000人規模で推移していたが、2021年から増加傾向に転換。2024年は5,100人ほどの組織規模。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.05万人ほど。平均勤続年数は減少傾向が見られるが、これは採用強化で従業員数を増やしている反動。直近でも平均勤続年数15.0年と大企業の標準的水準を保っている。
総合評価
企業格付け:BB
日系5大ポンプメーカー(荏原製作所・日機装・酉島製作所・鶴見製作所・イワキ)の中で断トツ首位の規模を誇るポンプ最大手。戦前からポンプ分野におけるトップランナーとして成長してきた企業であるが、現在では精密電子事業における半導体業界向け製品群が全社利益の半分弱を支えるまでに成長している。祖業のポンプにおいても、風水力発電所・プラント・高層ビル向けのポンプ需要の高まりによって世界的な需要拡大が続いており、当社の追い風となっている。業績においては2021年から好調が続いており、売上高・利益いずれも右肩上がりで増加。2023年には売上高8,666億円・営業利益979億円に到達して、いずれも過去最高を更新している。財務体質においても自己資本比率45%レベルを維持し続けており、負債に依存しすぎない財務規律が保たれている。当社の強みは「利益率はそれほど高くはないが安定的な収益を見込みやすい事業(インフラ向けポンプ・ごみ処理場など)」と「景気変動に左右されやすいものの高利益率が見込める事業(半導体業界向け装置・エネルギー分野向け製品など)」が両立している点にあり、業績の安定性を保ちながらも高利益率を狙える事業基盤があると評価できるだろう。
就職格付け:BBB
創業100年以上に渡って日本のポンプ業界における技術革新をリードしてきた名門企業。一般消費者にとっては極めて疎遠な業界であるが、生活に欠かせない上下水道が当社製ポンプに支えられている他、ビル・商業施設の空調管理にも当社製品が使用されている。給与水準においては平均年収の増加傾向が続いており、2024年には平均年収948万円まで拡大。大手メーカーをも上回る待遇にまで向上(業績好調による賞与増額の効果も大きい)。総合職であれば、30歳で年収650万〜700万円、課長職レベルで年収950万~1,200万円に達する。2018年の人事制度改革によって実力主義による待遇改善も開始され、優秀な若手であれば抜擢人事による早期昇進も可能となった。福利厚生もかなり優良であり、通勤時間1.5時間以上であれば独身寮に32歳まで入寮可能。結婚後も最大10年間は借上げ社宅制度によって月額家賃の約80%が会社負担となる。こうした平均年収に含まれない福利厚生を含めれば、実質的な待遇として平均年収+100万円程度は見ても良いだろう。強いて言えば一般知名度の低さが惜しまれるが、ネームバリューよりも実利を重んじるならば相当な優良企業であろう。