企業概要
澁澤倉庫は、倉庫業・物流業・不動産業を主力とする倉庫会社。1897年に渋沢栄一が東京深川の自邸内で倉庫会社として創業。1910年代には小樽や門司にも倉庫を開設。1923年には関東大震災で甚大な被害を被るも、1930年代には日本各地の主要港に進出を果たした。戦後には陸上運送業・港湾運送業・国際運送業と業務を拡大して、総合物流会社に発展。現在ではオフィスビル賃貸などの不動産業にも注力しており、物流業×不動産業のハイブリッド経営を進める。
・渋沢栄一が自ら興した名門倉庫会社、物流と不動産が2本柱
・売上高・利益は緩やかな増加傾向、財務健全性も大いに良好
・平均年収733万円と業界上位クラス、住宅補助も手厚いが残業がやや多め
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:63(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間15人~30人ほど。一般知名度は極めて低いが、渋沢栄一自ら創業した名門企業かつ財閥系の倉庫会社とも併願されやすいために難易度は決して低くない。
採用大学:【国公立】名古屋大学・神戸大学・千葉大学・静岡大学・滋賀大学・山梨県立大学・東京外国語大学・電気通信大学など、【私立】慶応義塾大学・明治大学・立教大学・法政大学・関西学院大学・立命館大学・成蹊大学・帝京大学・聖心女子大学・白百合女子大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
澁澤倉庫の売上高は2022年まで緩やかな増加傾向がみられ、2022年には過去最高となる785億円に到達している*1。営業利益は長期的に33億〜49億円で推移しており、景気後退局面も含めて安定している。
*1:2022年に売上高が増加した理由は、①COVID-19終息後の世界的な景気回復に伴う国際輸送貨物の増加、②飲料・日用品・機械部品の輸配送量の増加、など。
✔セグメント別の状況
澁澤倉庫は、物流事業(倉庫保管・荷役、港湾運送、国際輸送、物流施設賃貸、物流システム開発など)、不動産事業(オフィスビル賃貸、不動産管理・ビルマネジメントサービスなど)、の2事業を有する。
当社は売上高の約92%を物流事業で稼ぐが、全社利益においては不動産事業が約42%を稼ぐ構造。戦前から保有していた一等地にオフィスビルなどを経営するビジネスモデルによって、景気動向などの変化で物流事業が不調に陥ったとしても不動産事業が利益を支える事業構造となっている。
✔最終利益と利益率
澁澤倉庫の純利益は2021年のみ52.5億円に急増しているが、同年を除けば16億〜32億円ほどでの推移が続いている。営業利益率は5%台で安定して推移しており、景気後退局面にも変動が少ない。
✔自己資本比率と純資産
澁澤倉庫の自己資本比率は緩やかな増加傾向がみられ、2023年には54.7%に到達している。安定的な利益体質を加味すれば、財務健全性は相当に高いと評価できる。純資産も緩やかな増加傾向にあり、2023年には626億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
澁澤倉庫の平均年収は2021年まで645万〜700万円で推移していたが、2023年には735万円まで上振れている。大卒総合職の場合、30歳で年収490万~560万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,050万円が目安。物流業界としては上位クラスの給与を得られる。
✔従業員数と勤続年数
澁澤倉庫の単体従業員数は緩やかな増加傾向にあるが、2023年でも524人と少数精鋭の組織体制。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1,290人ほど。平均勤続年数は18.3年(2023年)と大企業の標準的水準を上回る。
総合評価
企業格付け:CC
日本の資本主義の父こと渋沢栄一が開いた名門の倉庫会社であり、創業120年以上の歴史がある老舗。財閥系倉庫会社と比べると事業規模は小さいが、物流業×不動産業のハイブリッド経営を進める事業構造はまったく同じである。物流事業における取扱品目は多岐に渡るが、得意分野は飲料・日用品・多品種少量貨物など(主要顧客にはサントリー・P&Gなどがある)。業績においては、売上高が緩やかな増加傾向にあり、2022年には過去最高を更新。COVID-19感染拡大期の物流費高騰や景気回復局面による取扱い荷量の増加が追い風となっている状況。財務体質においても相当に優良であり、自己資本比率54.7%(2023年)と負債に依存しすぎない事業運営ができている。
就職格付け:CCC
いわゆる財閥系倉庫会社ではないが、創業120年以上の老舗だけあって優良不動産を多数保有。1990年代からは財閥系倉庫と同様の物流業×不動産業のハイブリッド経営によって業績安定を担保している。代表的物件である『澁澤シティプレイス』には花王の本社機能が入居している。給与水準においては平均年収735万円と物流業界としては上位クラス。さすがに財閥系倉庫会社には及ばないが、企業規模の違いを考えれば健闘している。大卒総合職の場合、30歳で年収490万~560万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,050万円が目安となるだろう。福利厚生においては住宅補助が手厚く、若手社員には格安の独身寮が与えられるうえ結婚後にも家賃補助が支給される。物流業界ゆえに通関士や国際複合輸送士の資格保有者は優遇される。強いて言えば、平均残業時間31.8時間/月(2023年)と残業時間はやや多め。