企業概要
日本光電工業は、脳波計・心電計・自動体外式除細動器(AED)などを主力とする医療機器メーカー。1951年に松崎陽が補聴器メーカーとして設立。1950年代には世界初となる全交流直記式脳波装置・簡易聴力計・電気眼底血圧計の開発に成功、医療機器メーカーとして発展。1992年にはNASAに生体情報モニタリングシステムが採用され、スペースシャトルにも搭載された。2000年代にはAEDの量産化に成功、日本全国への設置を進めた。現在では脳波計・生体情報モニタで国内シェア1位、日系唯一のAEDメーカーでもある。
・日系唯一のAEDメーカーで多種多様な医療機器を製造、脳波系では国内首位
・売上高は過去最高圏で利益も安定的、財務体質も優良で実質無借金経営
・平均年収903万円で福利厚生も問題ない、知名度の低さは惜しい
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:67(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用数は年間60人~90人ほど。かなりの高待遇企業であるが一般知名度が振るわないこともあり、総合職の出身大学はハイレベル大学から中堅大学まで幅広い。
採用大学:【国公立】大阪大学・九州大学・広島大学・金沢大学・横浜国立大学・新潟大学・熊本大学・岩手大学・東京農工大学・京都工芸繊維大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・関西大学・学習院大学・南山大学・日本大学・名城大学・東京理科大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
日本光電工業の売上高は長期的な増加傾向*1が続いており、2023年には過去最高となる2,219億円まで到達している。営業利益は2021年に過去最高となる309億円に上振れた*2が、長期的には130億~200億円ほどで安定している。
*1:当社の売上高が増加している理由は、①COVID-19感染拡大期における人工呼吸器・生体情報モニタの販売急増、②消耗品・サービス事業へのテコ入れによる増収、③海外事業の成長と為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:2020年・2021年に営業利益が増加した理由は、COVID-19感染拡大期における増収が主要因。政府の後押しを受けて重症患者向けの人口呼吸器の増産を進めた(参考リンク)。
✔セグメント別の状況
日本光電工業は、生体計測機器事業(脳波計・筋電図検査装置・心電計・臨床用ポリグラフなど)、生体情報モニタ事業(医用テレメータ・セントラルモニタ・ベッドサイドモニタなど)、治療機器事業(AED・除細動器・心臓ペースメーカ・人工呼吸器・麻酔支援シリンジポンプなど)、その他事業(全自動血球計数器・全自動血球測定装置、設置・保守サービスなど)、の4事業を有する。
当社は日系唯一のAEDメーカーとして知られるが、実際には幅広い医療機器を製造している。最大の主力製品は生体情報モニタ類であり、手術室・集中治療室・ベッドサイドなどで心電図・体温などを連続モニタリングできる環境を提供している(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
日本光電工業の純利益は2021年に過去最高となる234億円に到達したが、長期的には90億~170億円ほどで安定している。営業利益率は2021年に15.1%に到達したが、長期的には8%~10%ほど。
✔自己資本比率と純資産
日本光電工業の自己資本比率は長期的な増加傾向が続いており、2023年には77.6%に到達している。有利子負債は極端に少なく、実質無借金経営を達成しているほどに財務体質は優良である*3。純資産は長期的な増加傾向が続いており、2023年には1,810億円に到達している。
*3:当社の手持ちの現預金498億円(2023年)に対して有利子負債は5.79億円(2023年)に過ぎず、実質無借金経営を達成している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
日本光電工業の平均年収は840万~890万円ほどで推移しているが、2023年には903万円に上振れ。大卒総合職の場合、30歳で年収600万~680万円ほど、課長職レベルで年収1,000万~1,200万円が目安。平均年齢は42.1歳(2023年)と大手企業の標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
日本光電工業の単体従業員数は2017年に急増*4したが、同年以降は3,400人~3,700人ほどで安定的に推移している。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は5,800人ほど。平均勤続年数は15.3年(2023年)と大手企業の標準的な水準。
*4:当社は2017年に国内販売子会社11社を吸収合併したため、同年に従業員数が約1,200人ほど増加した経緯がある。
総合評価
企業格付け:B
日系唯一のAEDメーカーとして知られる企業だが、生体情報モニタ・脳波計・心電計など多種多様な医療機器を製造している。脳波計では国内シェア約80%以上を掌握するほか、生体情報モニタやAEDにおいても国内シェア首位を誇る。業績においては長期的な増加傾向が続いており、2023年には過去最高となる売上高2,219億円に到達。海外市場における事業拡大のほか、COVID-19感染拡大期には当社製の人工呼吸器が国策として増産されたことが業績拡大に貢献した。景気動向にも業績を左右されにくいのも美点であり、米中貿易摩擦やCOVID-19感染拡大などの動乱期にも、営業利益率8%以上を安定確保できている。財務体質においても極めて安定的であり、自己資本比率77.6%(2023年)かつ実質無借金経営を達成している。
就職格付け:B
給与水準においては平均年収903万円(2023年)と医療機器メーカーとしてはトップクラス。大卒総合職であれば、30歳で年収600万~680万円ほど、課長職レベルで年収1,000万~1,200万円が目安となる。当社の特徴としては社員全体の給与レンジを高めに設定している点にあり、代わりに役職付きになっても給与はそれほど伸びない点にある。一般層でも勤続15年目には年収1,000万円前後に到達する反面、課長職に昇格しても年収1,200万円レベルが天井となる。福利厚生においては企業規模なりだが、家賃補助制度は入社5年目までと支給期間が短めである。年間休日日数は126日とかなり多めであり、休みがとりやすい環境は整っている。強いて言えば、かなりの高待遇企業にも関わらず、同業大手のシスメックスやテルモと比べると一般知名度が低く、社会的な名声を得にくい点は惜しい。…が、そのぶん選考倍率が高まりにくいため、かなりの狙い目かもしれない。