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【勝ち組?】JT日本たばこ産業の就職偏差値と平均年収・待遇【企業研究レポート】

企業概要

日本たばこ産業は、たばこ・加工食品・医療品などを製造するたばこメーカーである。1985年に日本専売公社から事業承継して設立された国策企業であり、今なお財務大臣が全株式の33%を保有している。海外で中小たばこメーカーの買収を重ね、世界トップ5に入るたばこメーカーとして発展。2022年にはスイス・ジュネーブにたばこ事業の本社機能を移転、グローバル化を加速させている。事業多角化にも熱心であり、食料品や医療品などにも進出している。

POINT

・日系唯一のたばこ国策会社、世界上位5社にも食い込む業界大手
・売上高は増加するも利益はカナダ集団訴訟で減、財務体質は大いに健全
・平均年収951万円で福利厚生も充実、嫌煙ブームで社会的評価は悪い

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:73(最上位)

サラリーマンとしては最上位クラスの勝ち組。国策企業ゆえの安定性と高待遇を両立、事実上の独占企業で競合も少ない。嫌煙ブームで世間体は悪いが、それさえ妥協できれば死角なし。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:難関上位級

採用人数は年間100人前後とそこそこレベル、最近では嫌煙ブームもあって採用倍率は低下傾向。が、それでも国策企業だけあって総合職の出身大学は旧帝大・早慶がボリューム層である。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・東北大学・北海道大学・九州大学・金沢大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・上智大学・関西学院大学など(出典:大学通信ONLINE

業績動向

✔売上高と営業利益

日本たばこ産業の売上高は2020年まで2兆円レベルで推移していたが、2020年から増加傾向に転換*1。2024年には売上高3.14兆円に到達している。営業利益は2022年・2023年に6,500億~6,700億円に上振れしたが、2024年には3,234億円まで後退している*2。
*1:2020年から売上高が増加した理由は、①為替レートの円安推移による為替効果、②原材料価格の高騰をうけた継続的な値上げ、③リスク低減製品群の販売好調、が主要因。当社は売上高の約60%以上を海外市場で稼いでいるため、為替レートが業績を左右しやすい。
*2:2023年に営業利益が減少した理由は、カナダにおける喫煙と健康に関わる集団訴訟2件の和解による訴訟損失引当金として総額3,756億円を計上したことが主要因(参考リンク)。

✔セグメント別の状況

日本たばこ産業はたばこ事業(紙たばこ・葉巻たばこ・加熱式たばこ・水たばこ・無煙たばこなど)、医薬事業(腎透析薬品・皮膚薬・アレルギー薬など)、加工食品事業(冷凍食品・パックご飯・ミネラルウォーターなど)、の3事業を有する。
かつて2000年代までの当社は事業多角化に熱心であり、食品・飲料・自販機事業やバーガーキングのフランチャイズまで進出していた(参考リンク)。しかし、2010年代以降は本業に再注力すべく多角化路線を放棄。たばこの有害性への認識が薄い新興国でシェアを拡大すべく、現地の中小たばこメーカーを多数買収して業績拡大を進めてきた。

✔最終利益と利益率

日本たばこ産業の純利益は2023年まで3,100億~4,850億円ほどのレンジで推移していたが、2024年に1,792億円まで後退している。営業利益率は2024年を除けば21%~26%ほどの高水準で安定しており、景気後退局面にも底堅い推移となっている。

✔自己資本比率と純資産

日本たばこ産業の自己資本比率は45%~54%ほどの水準で長期的に推移している。安定した利益創出力も加味すれば、相当に優良な財務基盤は堅牢である。純資産は2021年から増加傾向にあり、2023年には3.91億円まで増加している。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

日本たばこ産業の平均年収は830万~930万円で長期的に推移しているが、2024年には951万円まで上振れしている。総合職であれば30歳で720万~800万円ほど、課長職レベルで年収1,200万~1,400万円レベル。平均年収には現れない借上げ社宅制度などの福利厚生を通しての補助も恵まれている(後述)。

✔従業員数と勤続年数

日本たばこ産業の単体従業員数は2019年の7,464人をピークに減少しており、2022年以降は5,800人~5,900人ほどで推移している*3。平均勤続年数は15.0年(2024年)と大手企業の標準的な水準だが、恵まれた待遇の割には長くはない。
*3:2022年に単体従業員数が急減した理由は、①たばこ事業のグローバル化のため同事業部の本社機能をスイス・ジュネーブへ移管した点、②収益力の向上のため九州工場を閉鎖した点、など。

総合評価

企業格付け:AA

■業績動向
売上高・利益いずれも景気後退局面も含めて安定的。たばこは高い依存性を持つ商品ゆえに景気・経済情勢に関わらず業績は安定。日本国内の喫煙者は減少傾向にあるものの、海外M&Aの手腕によって世界トップ5に数えられる海外シェアの獲得に成功。新興国の中小たばこメーカーを買収することで現地浸透を進め、世間のイメージとは裏腹に業績好調である。2024年にはカナダにおける集団訴訟の和解に伴い減益を強いられたが、これは一過性の要因である。

■財務体質
良好。自己資本比率45.0%(2024年)と高めであることに加えて、2023年には手元の現預金は1.08兆円(2024年)と圧巻のキャッシュリッチぶりである。安定した利益体質があるうえ、財務体質も良好であるから、倒産危機とはまず無縁であろう。

■ビジネス動向
直近の中期経営計画(参考リンク)では、加熱式たばこでのシェア拡大を最優先課題に掲げる。加熱式たばこでは2014年頃から米・フィリップモリスが世界シェアを急拡大させており、当社はシェアを伸ばしきれず苦戦。直近では為替レートの円安推移により業績好調であるが、海外依存度が高まったことで為替レートに業績を左右されやすい点は懸念事項ではある。

就職格付け:AA

■給与水準
平均年収951万円(2024年)と恵まれた給与水準だが、国策企業ということもあって昇給スピードはそれほど早くはない。総合職であれば30歳で年収720万~800万円ほど、課長職レベルとなった場合で年収1,200万~1,400万円ほど。世間的には大いに高い給与水準であることに疑いの余地はないが、大手医薬品メーカーや大手商社には待遇面では及ばないのも実態である。

■福利厚生
見かけの給与を上げづらい業種であることから、福利厚生によって待遇を底上げしている企業である。とりわけ、借上げ社宅制度では独身者7万円・既婚者12.6万円までが会社補助となるため、実生活水準は見かけの年収以上となる。有給休暇・特別休暇も充実しており、最近では男性の育休取得も熱心に推進。国策企業ゆえに政府方針の働き方改革には率先垂範しようとする気概がある。

■キャリア
事務系総合職・技術系総合職・医薬研究職の3職種制。基本的には入社時の職種での専門性を高めることが前提とはなるが、本人の意思に応じた職種転換の道もある。営業職は日本全国の支社を異動することになるため全国転勤が大前提、技術職も地方勤務が大前提である。NLPと呼ばれる育成制度があり、将来の幹部候補たりうる社員を抜擢して海外勤務・早期昇格させることも。

■世間体
当社最大のネックは、世間一般における企業イメージである。健康被害を生む商材を扱う企業であり、世間一般で羨望の眼差しを受けるどころか、嫌悪の対象とすらなりうる。嫌煙志向の高まりから将来的にも肩身は狭くなる一方と予想される。ウクライナへの軍事侵攻後のロシアにおいても事業を継続しており、評価をますます下げることとなった。

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出典:日本たばこ産業株式会社(有価証券報告書)