企業概要
成田国際空港は、千葉県成田市において成田国際空港を運営する政府系の特殊会社。1966年に新東京国際空港公団として発足、国土交通大臣の管轄下において新空港の開業準備を遂行。1978年には成田国際空港を部分的に開業、1980年代には過激化する反対運動を抑えつつ拡張工事を進めて世界有数の国際空港へと発展させた。現在においても政府が当社株式の100%を保有する国営企業であり、政府主導の下で成田国際空港の運営を遂行している。
・日本屈指の国際空港である成田国際空港を運営、政府全額出資の特殊法人
・売上高・利益はCOVID-19で大打撃を被るも最近は回復傾向、財務体質はまずまず
・平均年収816万円で福利厚生も手厚い、千葉県成田市が地盤で転勤ほぼなし
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:68(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用実績は年間15名~30名ほど。日本最大級の知名度を誇る空港だけに航空業界との併願は少なくないが、勤務地がネックで選考倍率はやや高まりにくい。
採用大学:【国公立】京都大学・東北大学・広島大学・千葉大学・横浜国立大学・新潟大学・東京外国語大学・東京農工大学・電気通信大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・明治大学・青山学院大学・立命館大学・学習院大学・日本大学・専修大学・獨協大学・東京理科大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
成田国際空港の売上高は2019年まで2,100億〜2,300億円で安定していたが、2020年に激減*1。同年以降は増加傾向にあり、2024年には2,169億円まで回復を遂げた。営業利益も2020年から赤字転落していたが、2024年には129億円まで回復。
*1:2020年は世界的なCOVID-19感染拡大によって国際線旅客数が前年比▲96%に激減。空港運営・小売・施設貸付など当社のあらゆる事業が大打撃を被った経緯がある。
✔セグメント別の状況
成田国際空港は、空港運営事業(発着・給油・警備に関わる空港施設の施設運営、旅客サービス施設の管理運営など)、リテール事業(商業スペースの運営、免税店・小売店の運営、空港関連サービスなど)、施設貸付事業(航空会社向けの事務所・貨物施設の賃貸)、鉄道事業(芝山鉄道・成田高速鉄道アクセスの運営、)、の4事業を有する。
当社は空港運営事業が売上高の約49%を占めるが、同事業は赤字で全社利益には貢献をしていない。全社利益を支えているのはリテール事業であり、空港内の免税店や小売店が利益の中核となっている。成田国際空港における小売店の売上高はショッピングセンター形式としては日本最大規模となっており、実は商業施設としての性格も強い。
✔最終利益と利益率
成田国際空港の純利益は2019年から赤字転落していたが、2024年には100億円まで回復。営業利益率は2020年に▲80.1%と極端なまでのマイナス圏に沈んだが、同年以降は回復傾向が続いている。
✔自己資本比率と純資産
成田国際空港の自己資本比率は2019年に44.5%に到達していたが、同年以降は巨額赤字によって下落傾向。2024年は自己資本比率19.4%と低めの水準となっている*2。純資産も2019年の3,794億円をピークに下落しており、2024年は2,494億円となっている。
*2:当社は成田国際空港株式会社法に基づき、大規模な機能拡充などに必要となる資金を政府が無利子で財政支援をしている。そのため、見た目の自己資本比率以上に実際の財務体質は健全である。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
成田国際空港の平均年収は2019年まで840万〜860万円で推移していたが、同年以降は連続赤字に陥ったことで下落。2024年は平均年収816万円となっている。総合職の場合、30歳で年収510万~590万円、課長職レベルで年収1,050万~1,150万円が目安。
✔従業員数と勤続年数
成田国際空港の単体従業員数は緩やかな増加傾向が続いていたが、2022年の842人をピークに頭打ちとなっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3,030人ほど。平均勤続年数は12.7年(2023年)と大企業の標準的水準をやや下回る。
総合評価
企業格付け:BB
日本屈指の国際空港である成田国際空港を運営する政府出資の特殊会社。2004年には成田国際空港株式会社法に基づき民営化体制へと移行したが、現在においても国土交通大臣が当社株式の約91.6%を保有するため国策企業のしての色彩が強い。業績においては2020年のCOVID-19感染拡大期に売上高・利益が激減。1978年の開港以来で最悪となる水準にまで旅客数・旅客便発着回数が激減したことで、営業利益率▲80%という未曽有の水準にまで下落したのは痛手であった。2022年からはCOVID-19の感染終息によって業績回復に転換、2024年には4年ぶりとなる黒字回復を達成するに至っている。財務体質においては2020年~2023年にかけて巨額赤字を連続計上したことで悪化傾向がみられ、自己資本比率19.4%(2024年)とやや心もとない水準。強いて言えば、当社は政府から無利子での資金調達が認められているため、自己資本比率の低さが利払いの過度な拡大に直結しないことが救いではある。
就職格付け:B
千葉県成田市における最大企業の一角であり、日本の空の玄関口である成田国際空港を担う存在。年間利用客数は3,900万人に及び、日本と世界38ヶ国3地域から110都市へとアクセスを繋いでいる。給与水準においては平均年収816万円(2024年)と大手企業並みの水準。総合職であれば30歳で年収510万~590万円、課長職レベルで年収1,050万~1,150万円が目安となるだろう。福利厚生においても優良であり、家賃補助制度においては最大5.6万円/月が支給されるうえ、持ち家を取得しても最大1.7万円/月がローン支払いの補助として支給される。特筆すべきは事業エリアが千葉県成田市周辺に限られる点にあり、大手企業にありがちな全国転勤リスクが皆無であることは絶大なメリット。また、大手航空会社と比べれば就職先として意識されにくい割には、大手航空会社よりも給与水準は高いのも意外な一面であろう(そのうえ政府全額出資の国策企業であるために倒産リスクとも無縁である)。