企業概要
大林組は、トンネル・ダム・橋梁・超高層ビル・商業施設などの大規模土木・建設工事を主力とする大手総合建設会社。1892年に大林芳五郎が土木建設会社として創業。戦前から日本有数の建築会社として発展、東京駅(1914年)や阪神甲子園球場(1924年)を建築した。終戦後には日本初の超高層建築物であるホテルエンパイアを建築した他、東南アジア圏への積極進出を開始。2012年には世界最高峰の高さを誇る東京スカイツリーを竣工。現在ではスーパーゼネコン5社の一角として多種多様な建築土木工事を展開、不動産開発・PFI事業・再生可能エネルギー事業などにも参入している。
・創業130年以上の大手スーパーゼネコン、国内外で数々の大工事を遂行
・売上高は2023年に過去最高を更新するも利益は伸び悩む、財務体質は良好
・平均年収1,066万円で福利厚生も良好だが、全国転勤は要覚悟
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:72(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間300人~360人に及び、かなりの大量採用。理系採用は中堅大学からの採用も数多いが、文系採用枠は少ないため競争は激しい。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・名古屋大学・東北大学・北海道大学・神戸大学・広島大学・熊本大学・鹿児島大学・東京工業大学など、【私立】早稲田大学・明治大学・法政大学・関西大学・立命館大学・日本大学・東京理科大学・芝浦工業大学・工学院大学・大阪工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
大林組の売上高は2022年まで1.76億〜2.07億円で推移していたが、2023年には過去最高となる2.32億円に上振れ*1。営業利益は2020年まで1,230億〜1,550億円で推移していたが、2021年には410億円まで下落。2023年は営業利益793億円となっている。
*1:2023年に売上高が増加した理由は、①『川上ダム』『麻布台ヒルズ ガーデンプラザ』の竣工、②国内建築・土木工事における手持ち工事の順調な進捗、③北米における水処理施設建設会社・MWH社の買収、④為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:2021年に営業利益が急激に悪化した理由は、原材料価格・人件費の急速な高騰による低採算工事の増加が主要因。2022年以降は原価高騰を受注金額に価格転嫁したことで利益幅はやや回復。
✔セグメント別の状況
大林組は、国内建築事業(ビル・マンション・商業施設・工場・病院・学校などの建築)、海外建築事業(東南アジア・北米・オセアニアにおける建築事業)、国内土木事業(トンネル・橋梁・ダム・高速道路などの建設)、海外土木事業(東南アジア・北米・オセアニアにおける土木事業)、不動産事業(賃貸不動産の開発、不動産私募ファンド運営・アセットマネジメント)、その他事業(PFI事業・再生可能エネルギー事業など)、の6事業を有する。
当社の主力事業は売上高の約54%を占める国内建築事業であり、海外事業が売上高に占める割合は約25%ほど(海外建築・海外土木事業)。全社利益においては国内建築事業と国内土木事業で約60%以上を稼いでおり、国内事業が利益の柱となっている。
✔最終利益と利益率
大林組の純利益は2018年に1,131億円に到達したが、2021年には391億円に後退。2023年は純利益750億円となっている。営業利益率は2020年まで7%前後で推移していたが、2021年からは2%〜4%に後退している。
✔自己資本比率と純資産
大林組の自己資本比率は2020年まで長期的な増加傾向が続いていたが、同年以降は横ばいに転換。2023年は自己資本比率38.1%と高くもなければ低くもない水準*3。純資産は右肩上がりの増加傾向にあり、2023年には1.19兆円に到達。
*3:当社のような大手建設会社の場合、進行中の工事に関する下請け業者・建材メーカーへの支払いのうち、支払い期日前の金額が膨らみやすい。これらは工事未払金として負債に計上されるため、自己資本比率が低下しやすい事情がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
大林組の平均年収は2016年を除けば1,020万〜1,060万円で長期的に安定している。大卒総合職の場合、30歳で年収800万~890万円ほど、課長職レベルで年収1,350万~1,480万円が目安。スーパーゼネコン5社では鹿島建設に次ぐ2位の給与水準となっている。
✔従業員数と勤続年数
大林組の単体従業員数は緩やかな増加傾向が続いており、2023年には9,253人ほどの組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.69万人ほど。平均勤続年数は16.7年(2023年)と大企業の標準的水準を上回っている。
総合評価
企業格付け:AA
スーパーゼネコン5社において鹿島建設に次ぐ事業規模を誇る1社。創業130年以上の歴史において数々の歴史的な建築物を手掛けてきた名門中の名門でもある。主要な建築実績は東京駅(1914年)・阪神甲子園球場(1924年)・明石海峡大橋(1998年)・六本木ヒルズ森タワー(2003年)東京スカイツリー(2012年)などがある。業績においては売上高は2023年に過去最高を記録したが、これは原材料価格・人件費の高騰を受注価格に転嫁した影響が大きく、大局的には地盤である国内市場の飽和により成長性は薄い。営業利益においては2021年からの原材料価格・人件費の高騰により低下傾向がみられる。財務体質においては自己資本比率38.1%(2023年)と一見すると低いが、これは巨額の工事未払金による影響が大。実際には有利子負債は2,498億円(2023年)に過ぎず、手元の現預金3,267億円(2023年)に対して十分な財務健全性を確保できている。
就職格付け:AA
建設業界におけるトップ企業の一角。創業家・大林家が今なお影響力を持つ同族企業であるが、代表取締役はじめ役員ポストの多くは非創業家の出身者も数多いためバランスが良い(現在では創業家出身者が占めるのは取締役会長ポストのみである)。給与水準においては平均年収1,020万〜1,060万円ほどで推移しており、建設業界トップレベル。大卒総合職であれば30歳で年収800万~890万円ほど、課長職レベルで年収1,350万~1,480万円には到達する。福利厚生においても恵まれており、日本全国に独身寮・社宅が配置されているため生活コストを抑制可能。結婚後には住宅手当が最大6万円/月ほど支給されるため、やはり生活は楽。ただし、やはり日本全国・世界各地にて大型工場を進めているために転勤頻度は多く、長大な転勤距離になることも珍しくない(当社に限らず建設業界の大手企業の宿命ではある)。高い給与と恵まれた福利厚生は、これらの転勤と引き換えであることは忘れてはならない。