企業概要
大和ハウス工業は、戸建住宅・分譲住宅・マンション・商業施設・事業施設などを手掛ける大手住宅メーカー。1955年に石橋信夫がパイプハウスの商品化を目的に創業。現在では、注文住宅・分譲住宅・マンション・物流施設・データセンターの建設・運営を主力事業としつつ、上場投資信託ファンド運営や海外不動産開発までを網羅。不動産に関わるあらゆる事業を展開する総合不動産会社となっている。住宅メーカーとしては業界首位の売上高を誇り、日本を代表するハウスメーカーの1社。
・住宅メーカー業界首位の売上高・利益、不動産デベロッパー類似の業態
・売上高は業界初の5兆円超えを達成、利益も安定しており財務体質も健全
・平均年収964万円だが中堅大学からも積極採用、福利厚生もかなり充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:70(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用人数は年間500名∼600名と桁違いに多い。建築業界自体の不人気傾向もあるため高倍率にはなりにくい。中堅大学からも積極採用しており、得られる待遇を踏まえれば穴場感は強い。
採用大学:【国公立】不明、【私立】早稲田大学・東京理科大学・関西大学・立命館大学・日本大学・近畿大学・東海大学・大阪工業大学・京都産業大学・金沢工業大学など(出典:大学通信ONLINE)
業績動向
✔売上高と営業利益
大和ハウス工業の売上高は長期的な成長基調が継続しており、2023年には売上高5.2兆円に達して過去最高を更新*1。営業利益も成長基調にあり、2022年には過去最高となる4,654億円に到達。建築業界には珍しく、景気後退局面にも安定した利益確保ができている。
*1:2023年の業績好調の理由は、①物流施設・商業施設の開発ラッシュによる業績拡大、②当社が保有していた物流施設などの開発物件の売却好調、③北米における戸建住宅事業の好調、など。売上高5兆円を超えたのは、住宅・建設・不動産業界において当社が初である。
✔セグメント別の状況
大和ハウス工業は、戸建住宅事業(戸建住宅の注文請負・分譲)、賃貸住宅事業(賃貸住宅の開発・建築・管理・仲介)、マンション事業(マンション開発・分譲・管理)、商業施設事業(商業施設の開発・建築・管理・運営)、事業施設事業(物流・製造・医療・介護施設などの開発・建築)、環境エネルギー事業(再生可能エネルギー発電所の開発・建築)、その他事業(リゾートホテルなど)、の7事業を有する。
大和ハウス工業は大手ハウスメーカーではあるが、稼ぎ頭は商業施設事業・事業施設事業などの法人向け施設。とりわけ事業施設事業では物流・生産・医療施設やデータセンターなどを建設、時代により変化する法人向けニーズを機敏に捉えることで売上高・利益を着実に拡大。
✔最終利益と利益率
大和ハウス工業の純利益は、景気後退局面も含めて1,950億~3,000億円レベルで安定的。2022年は純利益3,084億円に到達して過去最高を更新。営業利益率は8%程度の水準で推移しており、建設業界としては上位級の利益率を安定的に確保できている。
✔自己資本比率と純資産
大和ハウス工業の自己資本比率は概ね35%前後の水準で推移、直近の2022年でも自己資本比率37.2%と普通の水準*2。純資産は長期的な増加傾向が続いており、2022年には2.39兆円に到達。
*2:大和ハウス工業は物流施設や商業施設に多額の投資を継続しており、不動産デベロッパーとしての性格を兼ね備える。不動産デベロッパーは投資額が巨額に及び、投資期間も長期に渡るためため長期借入金などの資金調達で賄うことが多く、自己資本比率は高まりにくい傾向がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
大和ハウス工業の平均年収は880万~960万円のレンジで推移している。2019年には964万円まで到達しており、大手ゼネコン5社に続く給与水準。大卒総合職は30歳で年収700万〜780万円ほど、課長職レベルで1,100万〜1,300万円に到達する。
✔従業員数と勤続年数
大和ハウス工業の単体従業員数は2019年に1.6万人規模に到達したが、同年以降は横ばい。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は4.84万人規模となっている。平均勤続年数は15.5年に到達しているが、大手企業としては標準的な水準に留まっている。
総合評価
企業格付け:AA
住宅メーカーとしては売上高・利益で業界首位であり、注文住宅・分譲住宅・マンションまで幅広く展開する企業。事業多角化に成功した企業でもあり、昨今では物流・医療・店舗・データセンターなどの事業用施設が全社利益の半分以上を占める。そのため当社は「ハウスメーカー・ゼネコン・デベロッパー」の3業界に横断した事業展開に特色があるといえよう。業績は成長基調が長年に渡って継続しており、2023年には住宅・建設・不動産業界の企業として初めて売上高5兆円を超えた。時代に応じて変化する社会ニーズを機敏に捉えた不動産開発を得意としており、2000年代に進出した物流施設分野では総開発棟数365棟を超え、国内断トツ首位。三菱地所や三井不動産などの大手不動産デベロッパーが最近になって物流施設開発を急ぐが、20年以上の経験差で突き放している。2020年にはデータセンター事業へと新たに参入し、千葉県印西市に国内最大級となるデータセンター団地を開発(参考リンク)。
就職格付け:AA
住宅メーカーとしては積水ハウス・三井ホーム・住友林業などと並び立つブランド力を誇る名門。ハウスメーカーの出自を持ちながら、昨今では財閥系不動産デベロッパーに事業用施設開発で真っ向勝負を挑む新興デベロッパーでもある。給与水準はハウスメーカーとしては最高峰の給与水準にあり、平均年収880万~960万円のレンジで推移している。ただし、営業職は販売実績によりインセンティブ・賞与が大きく変化するため個人差が大きくなる点には注意。福利厚生は極めて充実しており、独身寮・社宅・家賃補助は一通り網羅。そのうえ持家取得制度迄完備しており、自社物件ならば10%の社員割引が適用、持家取得時の割引も巨額であるうえ、取得後には月1~3万円の手当を永年付与。60歳での一律役職定年も廃止しており、中高年に差し掛かって急激な給与ダウンに見舞われない制度設計にも改めている。給与水準と福利厚生いずれも大手メーカーを凌駕する待遇を提供している優良企業。採用活動にあたっては中堅大学からも積極採用しており、得られる待遇を踏まえれば穴場感は非常に強い。