企業概要
商工組合中央金庫(略称:商工中金)は、中小企業向け金融サービスを主とする政府系金融機関。1936年に長期・無担保融資ができる政府系金融機関として設立。昭和恐慌で多くの中小企業が連鎖倒産を強いられた教訓から、民間銀行からの支援が得られにくい中小企業の金融支援を設立以来の使命とする。現在においては預金・融資・為替・リース・クレジットカードなど民間銀行に近い総合金融サービスを展開。長きに渡って民営化の議論が続いてきたが、2025年には政府保有株が全売却されて民営化を果たした。
・中小企業向け金融に特化した元政府系金融機関、2025年に民営化体制へ
・業績はCOVID-19影響から回復中、財務体質は健全な水準
・平均年収819万円で地銀以上・メガバンク以下、福利厚生は充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:66(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。給与・待遇は大手企業の中でも上位クラス、満足度の高い人生を安定して歩むことができる可能性が高い。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用人数は年間90人~140人であり、政府系金融機関のなかでは門戸が広い。総合職の出身大学はハイレベル大学~中堅大学まで幅広く、特定の大学には偏っていない。
採用大学:【国公立】名古屋大学・北海道大学・筑波大学・千葉大学・新潟大学・滋賀大学・埼玉大学・山口大学・大阪公立大学・高崎経済大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・明治大学・法政大学・関西大学・立命館大学・学習院大学・成城大学・近畿大学・日本女子大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔経常収益と経常利益
商工組合中央金庫の経常収益は2021年まで低迷傾向にあったが、同年以降は増加傾向に転換。2024年には経常収益1,942億円まで回復している*1。経常利益は2020年まで低迷*2していたが、同年以降は220億~330億円ほどで推移している。
*1:2024年に経常収益が増加した理由は、①国内の金利上昇による資金利益の増加、②シンジケートローンなどの手数料収益の増加、など(参考リンク)。
*2:2019年・2020年はCOVID-19感染拡大で打撃を受けた中小企業向けの融資が急増。貸倒引当金繰入額が増加した他、資金運用の見直しによる費用増加により減益に沈んだ。
✔セグメント別の状況
商工組合中央金庫は、銀行業事業(中小企業団体・中小企業への貸出・預金・為替・保証など)、リース事業(リース・割賦などの金融サービス)、その他事業(事務代行・ソフトウェア・情報サービス・クレジットカードなど)、の3事業を有する。
当社は設備資金や長期運転資金をはじめ、手形割引などの短期運転資金まで、中小企業が事業に必要とする資金に対して幅広い融資を実行している。融資以外にも、リース・クレジットカード・ビジネスマッチングなど多種多様なメニューを提供している(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
商工組合中央銀行の純利益は2020年まで減少傾向*2であったが、総年以降は増加傾向に転換。2024年には純利益257億円まで回復している。自己資本利益率は1%~2%前後で低迷しているが、これは当社が事業規模に対する純資産比率が高いために仕方がない側面が強い。
✔自己資本比率と純資産
商工組合中央金庫の自己資本比率は7%前後での推移となっている。一般的に見れば低めの水準だが、銀行業界においては問題ない水準。銀行業は顧客から預金・有価証券を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすい。純資産は1兆円前後で長期的に横ばい。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
商工組合中央金庫の平均年収は2022年まで760万~780万円ほどで推移していたが、同年以降は800万~820万円に上振れしている。総合職の場合、30歳で680万~750万円ほど、課長職レベルで年収980万~1,080万円レベル。平均年齢は38.6歳(2024年)となっており、年齢構成はやや若め。
✔従業員数と勤続年数
商工組合中央金庫の単体従業員数は2018年から減少傾向にあり、2024年は3,370人ほどの組織体制となっている。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は3,690人ほど。平均勤続年数は15.0年(2024年)と大手企業の標準的な水準にある。
総合評価
企業格付け:BB
中小企業向け金融サービスを主力とする経済産業省所轄の政府系金融機関…であったが、2025年に政府保有株が放出されて民営体制へと移行された。かつて昭和恐慌で数多くの中小企業が連鎖倒産を強いられた苦い記憶から、民間銀行の援助が行き届きにくい中小企業への円滑な資金供給を目指して設立された金融機関でる。以来、戦後復興・バブル崩壊・リーマンショックなど数多くの金融危機においてセーフティネット機能を発揮して、日本経済・国民経済の安定に貢献してきた。同じく中小企業向け業務を主力とする日本政策金融公庫との違いは、①融資以外にも預金・決済・リースなどの総合金融サービスを展開する点、②当行は創業・起業向け融資を主力とはしない点、などにある。すなわち、当行の特徴は、既存の中小企業が事業を営む上で必要とする金融サービスを包括的に提供する点にある。業績においては2020年頃まで経常収益・利益の停滞が目立ったが、同年以降は増加傾向へと転換。財務体質においても健全性は高いが、2025年に政府保有株の放出を自社株買いで対応したことで、当面は自己資本比率が低下する可能性はある。
就職格付け:BB/DD
■総合職=BB
日本全国に支店網を有しているために、総合職の場合は全国転勤が前提(一部の専門職のみ転勤なし)。給与水準においてはメガバンク以上・地銀以上であり、総合職なら30歳で年収750万~850万円に到達する。課長職クラスになれば年収1,000万~1,200万には達する。民間銀行のような個人顧客向けのクレジットカード・投資信託などのドサ回り営業なく、安定した高給を得られるのは大きな魅力だろうか。転勤前提ゆえに社宅制度も整っており、家族帯同であっても月額1万~3万円ほどで入居できるケースが殆ど。総じて優良企業ではあるが、夫婦共働きを重視する場合には転勤により夫婦間での仕事両立が難しくなるケースもある点には理解しておく必要があるだろう。
■担当職=DD
いわゆる一般職であり、窓口業務・営業事務などの事務作業を主力とする職種。エリア別での採用となるために転勤はなく、女性採用が主となっている。給与水準は総合職よりはかなり落ちるが、それでも平均年収500万円以上はあるためコストパフォーマンスは高い。とりわけ大手企業が限られる地方都市においては、世間体・安定性・給与・ワークライフバランスを兼ね備える。当然ながら出世街道には縁はない職種であるが、地元での長く働ける安定した就職先を求める女性にとっては極めて優良である。