企業概要
商工組合中央金庫(略称:商工中金)は、中小企業向け金融サービスを主とする政府系金融機関。1936年に長期・無担保融資ができる政府系金融機関として設立。昭和恐慌で多くの中小企業が連鎖倒産を強いられた教訓から、民間銀行からの支援が得られにくい中小企業の金融支援を設立以来の使命とする。現在においては預金・融資・為替・リース・クレジットカードなど民間銀行に近い総合金融サービスを展開。長きに渡って民営化の議論が続いてきたが、2023年には政府保有株の放出が決定している。
1.中小企業向け金融に特化した政府系金融機関、民営化予定あり
2.業績はCOVID-19影響から回復中、財務体質は健全な水準
3.平均年収784万円で地銀以上・メガバンク以下、福利厚生は充実
業績動向
✔経常収益と経常利益
商工組合中央金庫の経常収益は2019年頃からやや減少傾向にあり、同年以降は1,400億∼1,600億円ほどで推移している。経常利益は2019年・2020年*1を除けば300億円以上で推移している。
*1:2019年・2020年はCOVID-19感染拡大で打撃を受けた中小企業向けの融資が急増。貸倒引当金繰入額が増加した他、資金運用の見直しによる費用増加があった。
✔セグメント別の状況
商工組合中央金庫は、銀行業事業(中小企業団体・中小企業への貸出・預金・為替・保証など)、リース事業(リース・割賦などの金融サービス)、その他事業(事務代行・ソフトウェア・情報サービス・クレジットカードなど)、の3事業を有する。
商工組合中央金庫は民間銀行さながらの事業展開に特徴があり、融資以外にも多種多様な金融サービスを提供。他の政府系金融機関は融資業務がメインであるから、当行の事業の幅広さが際立つ。
✔最終利益と利益率
商工組合中央銀行の純利益は2020年まで減少傾向*2であったが、最近では増加傾向に転換。直近では純利益233億円まで回復している*2。自己資本利益率は2%前後で低迷するが、これは純資産が大きい故に仕方がない側面が強い。
*2:2021年の純利益の増加は、①COVID-19影響の緩和による緊急融資の一段落、②金融環境の改善による資金運用収支の増加、が主要因。
✔自己資本比率と純資産
商工組合中央金庫の自己資本比率は長期的に7%前後での推移となっている。一般的に見れば低めの水準だが、銀行業界においては問題ない水準。銀行業は顧客から預金・有価証券を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすい。純資産は長期的に1兆円前後で推移。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
商工組合中央金庫の平均年収は760万円~790万円ほどで安定的に推移している。最上位クラス地銀と同等の給与水準を実現しているうえ安定性も高い。総合職であれば30歳で680万円~750万円ほど、課長職レベルで年収980万~1,080万円レベル。平均年齢は38歳前後であり、年齢構成はやや若め。
✔従業員数と勤続年数
商工組合中央金庫の単体従業員数は2018年頃から減少傾向にあり、直近では3,300人規模の組織体制。平均勤続年数は直近で15.3年と銀行業としてはかなり長めである。
総合評価
企業格付け:BB
中小企業向け金融サービスを主力とする経済産業省所轄の政府系金融機関。かつて昭和恐慌で数多くの中小企業が連鎖倒産を強いられた苦い記憶から、営利企業の民間銀行の援助が行き届きにくい中小企業への円滑な資金供給を目指して設立された。以来、戦後復興・バブル崩壊・リーマンショックなど数多くの金融危機においてセーフティネット機能を発揮して、日本経済・国民経済の安定に貢献してきた。同じく中小企業向け業務を主力とする日本政策金融公庫との違いは、①融資以外にも預金・決済・リースなどの総合金融サービスを展開する点、②当行は創業・起業向け融資を主力とはしない点、などにある。すなわち、当行の特徴は、既存の中小企業が事業を営む上で必要とする金融サービスを包括的に提供する点にある。業績は2017年頃をピークに停滞しているが、金融環境が大きく悪化した2019年も含めて黒字はキッチリと確保。政府系金融機関でありつつも業績・財務は堅実であるため、歴史的に政府による資金注入は受けたこともない。
就職格付け:BBB/DD
■総合職=BBB
日本全国に支店網を有しているために、総合職の場合は全国転勤が前提(一部の専門職のみ転勤なし)。給与水準はメガバンク以上・地銀以上であり、総合職なら30歳で年収750万~850万円に到達する。課長職クラスになれば年収1,000万~1,200万には達する。民間銀行とは異なり、個人顧客向けのクレジットカード・投資信託などのドサ回り営業なく安定した高給を得られるのは大きな魅力。転勤前提ゆえに社宅制度も整っており、家族帯同であっても月額1万~3万円ほどで入居できるケースが殆ど。総じて優良であるが、夫婦共働きを重視する場合には転勤により夫婦間での仕事両立が難しくなるケースもある点には理解しておく必要あり。
■担当職=DD
いわゆる一般職であり、窓口業務・営業事務などの事務作業を主力とする職種。エリア別での採用となるために転勤はなく、女性採用が主となっている。給与水準は総合職よりはかなり落ちるが、それでも平均年収500万円以上はあるためコストパフォーマンスは高い。とりわけ大手企業が限られる地方都市においては、世間体・安定性・給与・ワークライフバランスを兼ね備える。当然ながら出世街道には縁はない職種であるが、地元での長く働ける安定した就職先を求める女性にとっては極めて優良である。