企業概要
吉野家ホールディングスは、日本全国で『吉野家』『はなまるうどん』などを展開する大手外食会社。1899年に松田栄吉が東京・日本橋で牛めし専門店として開業。戦時下において店舗を消失するが、終戦後には屋台で事業再開。1960年代には24時間営業・多店舗展開によって日本各地へと進出を果たした。1980年には品質低下による客離れで倒産するも早々に再建、1998年には全国47都道府県への店舗展開を達成。現在では日本全国に1,200店舗以上を展開、牛丼チェーンとして『すき家』に次ぐ業界2位のポジションを確立している。
・戦前からの歴史がある老舗牛丼チェーン、牛丼分野では国内シェア2位
・売上高・利益は横ばい傾向でコスト高騰が逆風、財務体質は大いに良好
・総合職・30歳で年収400万円〜と業界上位級、福利厚生もかなり良好
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:55(準中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとして準中堅クラスの待遇を得られる。世間一般に見劣りすることのない、普通の人生を送ることができるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:易しい
総合職の採用実績は年間15名~30名ほど、多種多様な大学から採用があり学歴には寛容。アルバイトからの正社員登用も多く、門戸は広い。
採用大学:【国公立】山形大学・山梨大学・岩手大学・島根大学・県立広島大学・ラオス国立大学など、【私立】法政大学・関西大学・立命館大学・駒澤大学・亜細亜大学・中京大学・愛知大学・追手門学院大学・大阪学院大学・桃山学院大学・明星大学・岐阜経済大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
吉野家ホールディングスの売上高は2020年~2022年に下落*1したが、同年を除けば1,800億~2,100億円ほどで推移している。営業利益は2020年のみ▲53億円に転落*2したが、同年を除けば1億~80億円ほどで推移している。
*1:当社の売上高が2020年から3年間に渡って低迷した理由は、COVID-19感染拡大による外食需要の低迷。リモートワークの普及でサラリーマンの昼外食が急減したことも逆風となった。
*2:2020年はCOVID-19感染拡大が逆風となって営業赤字に転落したが、迅速なコスト削減や価格改定を進めたことで2021年には営業黒字へと早々に回復している。
✔セグメント別の状況
吉野家ホールディングスは、吉野家事業(牛丼ファーストフード『吉野家』経営、フランチャイズ店舗への経営指導などなど)、はなまるうどん事業(セルフ式讃岐うどんファーストフード『はなまるうどん』経営、フランチャイズ店舗への経営指導など)、海外事業(アメリカ・中国・アセアンにおける事業展開)、その他事業(ラーメン・うどん・親子丼・つけ麺・チャーハン専門店の展開、オーストリッチ牧場経営など)、の4事業を有する。
当社は戦前から牛丼事業を展開してきた老舗企業であり、現在においても吉野家事業が売上高・利益の約65%以上を占めている。2012年からは讃岐うどんチェーン『はなまるうどん』を完全子会社化しており、同事業が牛丼に次ぐ存在感を放っている。
✔最終利益と利益率
吉野家ホールディングスの純利益は2018年・2020年に赤字転落しているが、同年を除けば7億~81億円で推移している。営業利益率も▲3%~3%ほどで推移しており、外食業界としては若干低めの利益率となっている*3。
*3:当社の利益率が苦戦している理由は、①牛丼チェーンの市場飽和による競争激化、②人件費・原材料価格の上昇によるコスト高、など。
✔自己資本比率と純資産
吉野家ホールディングスの自己資本比率は53.9%(2024年)とかなり高めの水準にある。負債に依存しすぎない事業運営ができており、当面の財務健全性には心配がない。純資産は2020年まで減少傾向がみられたが、2023年は648億円まで増加している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
吉野家ホールディングスの平均年収は736万円(2024年)と、外食業界でも上位クラスの給与水準。ただし、これは持株会社の305人のみの平均年収。総合職の場合、30歳で年収400万~450万円、課長職レベルで年収650万~780万円が目安。平均年齢は48.2歳(2024年)と高めだが、これは持株会社の従業員の平均年齢であるため。
✔従業員数と勤続年数
吉野家ホールディングスの単体従業員数は305人(2024年)に過ぎず、従業員の殆どは事業会社に属している。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は3,016人ほど。平均勤続年数は19.8年(2024年)と大手企業の標準的な水準を上回るが、これは持株会社の従業員の平均勤続年数であるため。
総合評価
企業格付け:CC
戦前から牛丼分野におけるフロントランナーとして発展してきた大手外食チェーン。2008年に同業の『すき家』に抜かれるまでは、牛丼分野でトップとなる店舗数を展開していた(現在でも店舗数では2位である)。業績においては売上高・利益いずれも横ばい傾向が強いが、これは日本国内の牛丼市場が飽和状態であることに起因する。そのうえ、人件費・原材料価格の上昇によるコスト高騰も逆風となっており、利益率は苦戦傾向がみられる。財務体質においては自己資本比率53.9%(2024年)とかなり高く、負債に依存しすぎない事業運営ができている。かつて1980年代に行き過ぎた多店舗展開によって経営破綻した過去があるだけに、財務規律にはかなり保守的な傾向があるとも言えるだろう。強いて言えば、牛丼に続く成長ドライバーとして期待された『はなまるうどん』の成長も停滞気味であり、当面は大きな成長余地がなさそうな点は惜しいか。
就職格付け:CC
日本人なら誰もが知る老舗牛丼チェーン。2000年代のデフレ期には『牛丼一杯280円』という格安価格で顧客ニーズを掴んだことも。同業の『すき家』がファミリー層や女性層のニーズを重視する一方、『吉野家』は硬派なメニュー展開でサラリーマン層から支持が厚い。給与水準においては平均年収736万円(2024年)と、外食業界では上位クラスの待遇。総合職の場合、30歳で年収400万~450万円、課長職レベルで年収650万~780万円が目安となるだろう。福利厚生においても業界上位級であり、会社都合の転勤となれば社宅が月額1万円で貸与される(2年目以降は月額2.5万円となるが、それでも格安である)。業務時間中であれば食事補助として定価の6割引で食事ができるため食費も浮かせやすい。総じて、外食業界としては相当に恵まれた待遇と評価できよう。