企業概要
中部日本放送は、愛知県名古屋市を本拠としてCBCテレビ・CBCラジオなどを展開する地方テレビ局。1945年に中日新聞社が日本初の民間ラジオ局として構想、中部電力・東邦瓦斯・名古屋鉄道・豊田自動織機など中部財界の資金援助により1951年に放送を開始。1956年には名古屋初の民間テレビ放送を開始。以来、中部地方におけるテレビ局の一角として影響力を発揮し続けてきた。現在においても中日新聞社が筆頭株主の地位にある他、中部地方の著名企業が株主に名を連ねている。
・名古屋地盤の地方テレビ局、大株主の中日新聞社と親密な関係
・売上高は横ばいだが利益は減少傾向、財務体質は極めて良好
・平均年収1,181万円と名古屋圏トップクラスの待遇、採用倍率は高い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:75(最高峰)
日本企業における最高峰クラスのキャリアであり、誰もが勝ち組として認めるレベルの待遇・名声が得られる。入社するためには人並み外れた能力・努力は当然、運も必要である。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:至難
総合職の採用実績は年間10名に満たず、極めて門戸が狭い。今なおテレビ業界は人気業界であるために非名古屋圏出身者からの応募も多く、採用倍率は著しく高い。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・名古屋大学・名古屋工業大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・南山大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
中部日本放送の売上高は長期的に320億〜340億円ほどで安定的、2020年のみCOVID-19影響で282億円に低落したが早々に回復。営業利益は2001年の64億円をピークに減少が続いており、直近では13.8億円となっている。
*1:2020年に利益急増した理由は、COVID-19感染拡大による影響が大。衛生意識の高揚によって主力製品であるハンドソープ・洗浄剤が販売急伸したほか、巣籠り需要によってリビングケア商品も販売好調に。COVID-19感染拡大が業績好調の追い風になった企業の1社である。
✔セグメント別の状況
中部日本放送は、メディアコンテンツ事業(CBCテレビ・CBCラジオによるコンテンツ配信、番組制作事業、広告代理店事業など)、不動産事業(不動産賃貸業、千代田会館ビル、施設管理事業など)、その他事業(南山カントリークラブ・保険代理店業・駐車場事業など)、の3事業を有する。
当社は売上高・利益いずれもメディアコンテンツ事業におけるテレビ放送・ラジオ放送に依存している。強いて言えば不動産事業が利益において約10%の貢献を果たしている程度。
✔最終利益と利益率
中部日本放送の純利益は1990年の34億円をピークに減少傾向が続いている。過去8年間では2019年に一時的増加*2を果たしたが、直近では11.8億円に留まっている。営業利益率も4%〜8%に留まっており、世間が思うような高利益率ではまったくない。
*2:2019年に純利益が急伸した理由は、東京都千代田区に保有していた不動産を東京都に売却したことによる特別利益25億円が主要因(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
中部日本放送の自己資本比率は長期的に70%台の高水準で安定的に推移。有利子負債は直近で3,000万円に過ぎず、実質無借金経営である。純資産は長期的に700億円台での横ばいが続いていたが、2023年には868億円に増加。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
中部日本放送の平均年収は長期的に1,100万~1,270万円ほどで推移しており、愛知県下トップクラスの給与水準を誇る。総合職の場合、30歳で年収750万~950万円、課長職レベルで年収1,300万~1,500万円が目安。平均年齢は直近で52.1歳と、高齢化が進んでいる。
✔従業員数と勤続年数
中部日本放送の単体従業員数は50人〜70人ほどに過ぎず、従業員のほとんどは事業会社にあたるCBCテレビ・CBCラジオなどに所属している。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は695人ほど。平均勤続年数は直近で25.6年とかなり長めの水準。
総合評価
企業格付け:A
愛知県名古屋市を地盤とする地方テレビ局であり、中部地方においてはよく知られた存在。ライバルは同じく名古屋地盤の名古屋テレビ放送であり、業績はほぼ拮抗する関係(やや当社がリードしている程度)。当社は中日新聞が筆頭株主である一方、名古屋テレビ放送はトヨタ自動車が筆頭株主についており、いずれも中部財界の後ろ盾があるのは変わらない。業績はテレビ業界の斜陽もあって1990年代〜2000年代にピークアウトしており、最近では売上高・利益いずれも伸びない。2000年代以降においては広告市場の主役はネット広告へと移行しており、メディアコンテンツの花形もYouTubeへと移行。良くも悪くも三大都市圏の一角である名古屋地域を抑えるテレビ局(しかも実質無借金経営)であるため事業継続への不安はないが、V字回復の道筋もまた見えない。
就職格付け:AA
全国区における知名度こそ低いが、名古屋圏においてのみ極めて高い知名度を誇る企業。給与水準においては平均年収1,181万円と中部地方トップクラスの給与水準。これは持株会社の平均年収であるものの、事業会社においても総合職の30歳で年収750万~850万円には達し、課長職レベルで年収1,200万~1,400万円が目安となる。愛知県のトップ企業であるトヨタ自動車や中部電力とも給与水準は負けず、トヨタ自動車における海外赴任や中部電力における僻地勤務リスクもない。企業としての全盛期は過ぎているとはいえ、待遇面における優良性は今なお色褪せない。ただし総合職の採用数は年間10人以下と極めて少ないため、愛知県におけるトップ企業よりも入社難易度はかなり高い。