企業概要
ローランドは、電子ドラム・電子ピアノ・シンセサイザーなどを主力とする電子楽器メーカー。1972年に梯郁太郎が楽器メーカーとして創業。1970年代から電子ピアノ・シンセサイザー・ギターアンプを次々と発売。1985年には電子ドラムを発売して打楽器分野にも進出した。現在では総合電子楽器メーカーとして発展、管打楽器・鍵盤楽器・ギター関連機器などを幅広く展開。欧米市場において高いブランド力を誇り、海外売上高比率は約90%にも達する。
・世界的な電子楽器メーカーで欧米市場で高い人気を誇る、静岡県が地盤
・売上高・利益は成長基調だが2024年はやや一服、財務体質は良好で問題ない
・平均年収712万円で音楽鑑賞補助制度あり、音楽好きが採用条件
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:61(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用人数は年間10人~15人ほど。数少ない上場企業の大手楽器メーカーかつグローバル企業ゆえに人気は高い。採用人数も少ないために選考倍率は高め。
採用大学:【国公立】大阪大学・神戸大学・静岡大学・熊本大学・岐阜大学・静岡県立大学・名古屋工業大学・豊橋技術科学大学など、【私立】早稲田大学・青山学院大学・関西学院大学・関西大学・東洋大学・名城大学・愛知大学・工学院大学など(出典:リクナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
ローランドの売上高は2020年まで600億円レベルで推移していたが、2021年からは増加傾向に転換。2023年には過去最高となる売上高1,024億円に到達*1。営業利益は長期的に50億~120億円ほどで推移しており、2023年には過去最高となる営業利益118.7億円に到達している。
*1:2021年から売上高の増加が続いていた理由は、①COVID-19感染拡大期に自宅で余暇を楽しめる電子楽器需要の増加、②製品ラインナップの見直しによる高価格帯モデルの強化、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
ローランドは、鍵盤楽器事業(電子ピアノ・電子アコーディオン・ポータブルキーボード・MIDIキーボードなど)、管打楽器事業(電子ドラム・パーカッション・電子管楽器など)、ギター事業(エフェクター・ギターアンプなど)、クリエーション事業(シンセサイザー・DJ機器など)、映像音響事業(ビデオ・ヘッドホンなど)、その他事業、の6事業を有する。
当社は電子楽器に特化した楽器メーカーであるが、鍵盤楽器・管打楽器・ギター関連機器などを幅広く展開。地域別に売上高を分解すると、国内市場が約9%に留まる反面、北米・欧州市場が最大の稼ぎ頭となっている。
✔最終利益と利益率
ローランドの純利益は2022年には過去最高となる89.3億円に到達したが、同年以降はやや減少傾向がみられる*2。営業利益率は8%〜13%まで推移しており、楽器メーカーとしては高めの利益率を安定的に確保できている。
*2:2024年に純利益が減少した理由は、①COVID-19以降の需要増加に呼応した増産からの需要反動減による過剰在庫の滞留、②競合他社の新製品の拡販による電子ドラムの販売減少、など。
✔自己資本比率と純資産
ローランドの自己資本比率は40%〜56%のレンジでの横ばいが続いている。安定的な利益体質を加味すれば、財務健全性に特段の問題はない水準だろう。純資産は右肩上がりの増加傾向にあり、2024年には466億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ローランドの平均年収は2022年には790万円に達したが、長期的には690万〜710万円ほどで推移している。大卒総合職の場合、30歳で年収480万~580万円ほど、課長職レベルで年収850万~950万円が目安。音楽業界としては高めの給与水準を安定的に得られるのは強み。
✔従業員数と勤続年数
ローランドの単体従業員数は850人~890人ほどでの横ばいが続いており、一般知名度の割には少数精鋭の組織体制。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2,950人ほど。平均勤続年数は20.0年(2023年)と大企業の標準的水準を上回っており、従業員の定着は大いに良好である。
総合評価
企業格付け:CC
社名からして海外楽器メーカーと誤解されがちだが、れっきとした日本本社のグローバル電子楽器メーカー。創業直後から音楽史に残るアイコニックな楽器をいくつも生み出してきた歴史があり、1980年代から当社のリズムマシンはニューヨークのミュージシャン達にも愛用されていた(参考リンク)。現在においても欧米市場では高いブランド力を誇っており、今や売上高の90%以上を海外市場で稼ぐまでに発展している。業績においては2021年から売上高・利益を急速に伸ばしているが、これはCOVID-19感染拡大期において自宅でも楽しめる電子楽器の需要が急速に拡大したことが主要因。2022年以降は為替レートの円安推移も増収増益を下支えしている状況にある。
就職格付け:CCC
同業のヤマハや河合楽器製作所などと並んで、静岡県浜松市に本社を置く大手楽器メーカー(当社の創業の地は大阪府であるが、2005年に静岡県浜松市に本社を移転)。世界的ミュージシャンに愛用される製品を多数輩出してきた名門でもあるが、どちらかと言えば海外における知名度の方が高い企業でもある。給与水準においては平均年収690万〜710万円で推移しており、音楽関連企業としてはトップクラスの給与水準。大卒総合職の場合、30歳で年収480万~580万円ほど、課長職レベルで年収850万~950万円が目安となるだろう。福利厚生においては企業規模なりの制度が整っており、本社が所在する静岡県浜松市には独身寮が整備されている。社員の音楽鑑賞を推進するための「音楽鑑賞補助制度」があり、ライブ・コンサート鑑賞に対して一定額が補助される。楽器メーカーだけあって「音楽が好き」であることは採用条件として当然に掲げられている(参考リンク)。