企業概要
ハウス食品グループ本社は、カレールー・シチュールー・健康食品・外食事業などを主力とする食品メーカー。1913年に浦上靖介が薬原料店として大阪市南区で創業、1926年には『ハウスカレー』を発売してカレー分野へと進出。1960年代には固形カレー・レトルト食品・デザートなど事業多角化を進め、1971年には東京証券取引所に株式上場。戦前から現在に至るまでカレー分野のパイオニアとして知られ、カレールー市場での国内シェアは約60%以上。最近ではアメリカで豆腐文化の浸透にも奮戦。
・カレー分野で国内シェア60%以上の首位、北米では豆腐事業で急成長中
・売上高・利益いずれも横ばいで安定型、財務体質は大いに健全
・平均年収804万円、若手社員の給与は高くないが管理職以上で大きく伸びる
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間40人~60人と知名度の割に少ないうえ、食品メーカーの例に漏れず選考倍率は高倍率になりがち。総合職の出身大学は多彩であり、学歴主義は希薄である。
採用大学:【国公立】大阪大学・名古屋大学・大阪府立大学・岡山大学・静岡大学・京都府立大学など、【私立】早稲田大学・明治大学・法政大学・南山大学・昭和女子大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
ハウス食品グループ本社の売上高は長期的に2,700億〜2,900億円ほどで横ばい。2020年・2021年のみ2,300億円台まで後退したが、同年以降は回復。営業利益も長期的に120億〜190億円で安定的である。
*1:同年に売上高が減少した理由は、「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)」の適用による大幅減収が主要因。あくまでも会計処理の変更によるものであり、本業が不振に陥ったわけではない。
✔セグメント別の状況
ハウス食品グループ本社は、香辛加工食品事業(家庭用・業務用のカレールー・レトルトカレー・シチュー・スパイス・でんぷん麺など)、健康食品事業(健康ドリンク『ウコンの力』『C1000』『1日のビタミン』など)、海外食品事業(米国・中国・東南アジアにおける事業展開)、外食事業(カレーハウス『CoCo壱番屋』)、その他事業(食品輸入・食品分析・惣菜販売など)、の5事業を有する。
当社はカレールーなどを製造販売する香辛加工食品事業が主力事業であるが、売上高において同事業が占める割合は約40%に留まる。残る60%は他4事業が支えており、バランスの良い事業展開に強み。
✔最終利益と利益率
ハウス食品グループ本社の純利益は長期的に80億~130億円ほどで推移しているが、2023年には純利益170億円に到達した*2。営業利益率は長期的に5%~7%ほどで横ばいであるが、食品メーカーとしてはやや高めの部類である。
*2:2023年に純利益が増加した理由は、①COVID-19終息による『ウコンの力』の販売好調、②外食事業における『CoCo壱番屋』の好調、③前年度からの値上げ対応による増収増益効果、など。
✔自己資本比率と純資産
ハウス食品グループ本社の自己資本比率は長期的に60%以上で安定的、直近の2023年は67%となっており大いに健全な水準。純資産は緩やかな増加傾向にあり、直近では純資産3,216億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ハウス食品グループ本社の平均年収は長期的に800万円以上で推移しており、食品メーカーとしては高めの水準*3。大卒総合職ならば30歳で年収550~650万円、課長職レベルで900万~1,000万円ほどに達する。平均年齢は42歳前後で安定しており、大手企業の標準的水準。
*3:当社の平均年収は食品業界でも最上位クラスだが、これは製造部門・販売部門などを子会社化していることが主要因。当社本体の従業員の殆どが、グループ管理・事業企画などに従事するホワイトカラーであるため平均年収が高くなりやすい。
✔従業員数と勤続年数
ハウス食品グループ本社の単体従業員数は増加傾向にあり、直近の2023年には448人に到達。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は6,500人ほど。平均勤続年数ら2016年には18年であったが、直近では15年まで後退。
総合評価
企業格付け:B
食品業界の中でもカレー・シチューなどの香辛加工食品分野において傑出した企業。戦前からカレー文化の大衆化に多大な貢献を果たしてきた歴史もあり、現在ではカレールーで国内シェア60%以上を掌握する最大手である。業績は食品メーカーの例に漏れず、かなりの安定型。売上高は一見すると横ばいであるが2020年における会計基準の一部変更の影響を差し引けば、実質的には2020年から売上高は増加している。利益においては営業利益120億〜190億円のレンジで横ばいが続いているが、2021年以降の世界的な原材料価格高騰や人件費上昇の影響を押し返して利益水準を維持できているとも評価できる。財務体質も大いに良好であり、自己資本比率は長期的に65%以上の高水準を維持。業績の安定性も加味すれば、企業存続にはまったく心配がないレベルと言えるだろう。
就職格付け:B
日本国内においてはカレー分野の最大手であるが、北米においては豆腐で高シェアを持つ企業(参考リンク)。2015年にはカレーハウス『CoCo壱番屋』を展開する壱番屋を株式公開買付によって連結子会社化しており、外食事業にも本腰。給与水準においては食品メーカーとしては高めとなる平均年収804万円(2023年)を達成しているが、これは持株会社の448人の平均年収。実際の目安としては大卒総合職ならば30歳で年収550~650万円、課長職レベルは900万~1,100万円ほど。年功序列色が強いために若手社員の給与はそれほど高くはないが、管理職になると年収が大きく伸びる。福利厚生はそこそこ恵まれており、32歳までの若手従業員は月額3.6万円までの自己負担で借上げ社宅に入居できる。人事制度においては複線型キャリアコースを導入しており、管理職昇格後はマネジメント職・スペシャリスト職の2コースが用意されている(参考リンク)。