企業概要
セコムは、総合セキュリティサービス・防災サービス・情報セキュリティなどを展開する警備サービス会社。1962年に飯田亮が創業した日本警備保障を源流とする日本初の警備サービス会社であり、1964年の東京オリンピックでは選手村の警備を担当。警備拠点数は国内2,600拠点と国内首位、業務自動化にも熱心であり防犯・防災設備でも最先端の技術力を有する。事業多角化にも熱心であり、KDDIの前身企業であるDDIの創業に出資した25社のうちの1社。
・綜合警備サービス企業として国内トップシェア、事業多角化にも熱心
・売上高・利益いずれも極めて安定的かつ緩やかに成長、財務体質も良好
・平均年収621万円、幅広い大学・高校から大量採用しており門戸は広い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:58(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや易しい
総合職の採用人数は年間200人~300人と大量採用。警備業界の不人気によって、日経平均225社に数えられる超大手企業ながら選考倍率も上がりにくい。有名企業を目指したい場合はかなりの狙い目。
採用大学:【国公立】名古屋大学・岡山大学・埼玉大学・香川大学・秋田大学・岩手県立大学・下関市立大学など、【私立】中央大学・立教大学・近畿大学・甲南大学・國學院大學・国士舘大学・武蔵大学・流通経済大学・和光大学・名古屋商科大学・大妻女子大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と経常利益
セコムの売上高は緩やかな増加基調が続いており、2023年には過去最高となる1.15兆円に到達*1。営業利益は1,300億~1,400億円レベルで極めて安定的に推移しており、景気後退局面も含めて利益を着実に確保できている。
*1:2020年はCOVID-19感染拡大により商品販売が停滞した他、同年に子会社のセコムホームライフを売却したことで売上高210億円を喪失した影響。
✔セグメント別の状況
セコムは、セキュリティサービス事業(事業所・家庭向けセキュリティサービス)、防災事業(オフィス・トンネル・住宅・船舶などの防災システム)、医療事業(在宅医療サービス、電子カルテ、シニアレジデンス、医療機器販売など)、保険事業(保険商品の開発・販売)、地理空間情報サービス事業(国・地方自治体向け空間情報サービス)、BPO・ICT事業(情報セキュリティサービス・データセンターなど)、その他事業(不動産賃借・建設設備工事など)、の7事業を有する。
当社は警備サービスのイメージが強いが、売上高に占めるセキュリティ事業の割合は約53%に過ぎない。実際には事業多角化が進んでおり、防災・医療・保険・空間情報サービスなどの領域までをも幅広く手掛けている。
✔最終利益と利益率
セコムの純利益は長期的に840億~960億円のレンジで安定的。2023年には過去最高となる純利益1,019億円に到達している。営業利益率は長期的に12%~14%レベルで安定しており、下手な大手メーカーを上回る利益水準を安定的に確保できている。
✔自己資本比率と純資産
セコムの自己資本比率は長期的に微増傾向が続いており、2023年には58.8%に到達している。安定的な利益体質もあわせて考えれば、極めて堅実な財務体質である。純資産は堅調な増加傾向にあり、2023年には1.39兆円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
セコムの平均年収は2022年まで590万~600万円で横ばいであったが、2023年には621万円にやや上昇。総合職の場合、30歳で年収520~590万円程度、課長職レベルで年収720万~800万円ほど。警備職の場合、30歳で年収400万~490万円、40歳で年収500万~580万円が目安。
✔従業員数と勤続年数
セコムの単体従業員数は2020年まで微増傾向にあったが、同年の1.62万人をピークに微減傾向に転換。2023年は1.56万人の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は6.47万人ほど。平均勤続年数は18.0年(2023年)と長く、従業員の定着は良好。
総合評価
企業格付け:B
国内首位の総合警備サービス会社にして、売上高1兆円を超える業界の巨人。業界第2位の綜合警備保障でも売上高5,000億円レベルであるため、業界首位の座はまず盤石。実は事業多角化が進んでいる企業でもあり、防災・保険・訪問介護・医療などに進出。これらの周辺事業はセキュリティ分野に関連するビジネスであり、事業多角化によって本業の競争力強化にも貢献するビジネスモデルとなっている(中期経営計画においては「あんしんプラットフォーム」と呼称している)。業績においては極めて安定性が高く、売上高・利益いずれも景気動向に左右されにくいことが特徴。利益水準もかなり優良であり、営業利益率10%を安定して稼ぐことができている。警備業界=低利益率のイメージに反して、下手な大手メーカーを凌駕する利益率である。財務体質においても自己資本比率58.8%(2023年)と高水準であり、安定的な利益体質を鑑みれば倒産リスクとは当面無縁であろう。強いて言えば、海外進出には遅れており17ヶ国に進出してこそいるが売上高に占める割合は精々10%程度に過ぎないことは課題だろうか。
就職格付け:C
業績と財務は極めて安定的であるため、安定した雇用を望むのであれば良い企業。給与水準においては長らく平均年収500万円台で停滞していたが、最近では平均年収621万円(2023年)まで向上している。総合職の場合、30歳で年収520~590万円程度、課長職レベルで年収720万~800万円が目安となるだろう。警備職の場合、30歳で年収400万~490万円、40歳で年収500万~580万円が目安となる。警備サービス会社は多数の警備職を確保する必要性から人件費が大きなコスト項目であるため、給与水準を安易に上げにくい構造であることも一因か。当社はかなりの大量採用であり、大卒採用だけでも250~350人/年を採用、高校・短大・専門学校・高等専門学校の卒業生にも積極採用を行っている。入社の門戸は広めで学歴にも寛容である点は美点であり、売上高1兆円オーバーの安定した大企業に入社しやすいと考えればお買い得感はある。