企業概要
クラレは、機能樹脂・合成繊維・機能材料などを展開する化学・素材メーカー。1926年に大原孫三郎らが人工繊維・レーヨンの国産化を目指して岡山県倉敷市で『倉敷絹織』として創業。1930年代にはレーヨンを大量生産化に成功した。終戦後には1950年代から樹脂事業を拡大していき、1960年代には人工皮革・ポリエステルの生産を開始するなど、事業多角化に邁進。現在ではポバール樹脂・イソプレンケミカルなどで世界シェア首位級を誇り、繊維事業が売上高・利益に占める割合は10%未満。
・繊維メーカーながら樹脂分野で発展、現在では化学メーカーへと転換
・売上高は増加傾向で利益も安定的、財務体質もかなり良好
・平均年収802万円だが総合職は昇給ペースが早い、福利厚生は住宅手当が充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用実績は年間95名~140名とかなり多め。うち文系採用枠は20名ほどに過ぎないため、理系重視の採用方針。化学メーカー志望者から底堅い人気がある。
採用大学:【国公立】大阪大学・名古屋大学・九州大学・岡山大学・広島大学・金沢大学・神戸市外国語大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・東京理科大学など(出典:就職四季報)
業績動向
✔売上高と営業利益
クラレの売上高は2020年に一時減少したが、2016年から長期的な増加傾向が継続している。2024年には過去最高となる売上高8,268億円に到達*1。営業利益も2020年に一時減少したが、長期的に650億〜870億円で推移している。
*1:2024年の売上高の増加は、①世界的な原材料価格の高騰による値上げ対応、②樹脂分野における高付加価値商品の販売好調、③水や大気の浄化に使う活性炭の販売好調、④為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
クラレは、ビニルアセテート事業(機能樹脂・PVB樹脂・フィルムなどの)、イソプレン事業(熱可塑性エラストマー・イソプレン関連製品など)、機能材料事業(メタクリル樹脂・メディカル製品・炭素材料など)、繊維事業(合成繊維・人工皮革・不織布など)、トレーディング事業(合成繊維・人工皮革などの加工販売など)、その他事業(エンジニアリングなど)、の6事業を有する。
当社は売上高・利益いずれもビニルアセテート事業が主力となっており、特に利益面では全社利益の約79%を同事業が稼ぎ出している。祖業の繊維事業は売上高・利益いずれも10%未満にまで縮小しており、現在の当社は化学メーカーと評する方が的確であろう。
✔最終利益と利益率
クラレの純利益は2019年・2020年に急減したが、同年以外は350億〜540億円レベルで推移している。2024年は純利益317億円にやや下振れ。営業利益率は長期的に8%〜14%で推移しており、化学メーカーとしても良好な利益率を誇る。
✔自己資本比率と純資産
クラレの自己資本比率は2020年まで低下傾向が続いていたが、同年以降は増加傾向に転換。とはいっても、直近の自己資本比率は59.2%(2024年)と大いに健全な水準にある。純資産は2020年から右肩上がりで増加しており、2024年には7,817億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
クラレの平均年収は2021年まで690万~710万円ほどで推移していたが、同年以降は増加傾向に転換。2024年には平均年収802万円まで上振れている。総合職の場合、30歳で年収650万~790万円、課長職レベルで年収900万~1,000万円が目安となる。
✔従業員数と勤続年数
クラレの単体従業員数は長期的な増加傾向が続いており、2024年には4,569人の組織規模となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.19万人ほど。平均勤続年数は17.7年(2024年)と、大企業の標準的水準よりやや長め。
総合評価
企業格付け:B
戦前に人工繊維レーヨンの量産化を目指して設立された繊維メーカーであるが、終戦後の業態転換によって今では化学メーカーとして認知されている企業。繊維メーカーからの事業多角化では東レや帝人が有名であるが、脱繊維の成功度合いは当社の方が圧倒的に高い。現在の当社において繊維事業の売上高は10%にも満たず、売上高・利益いずれも樹脂分野によるものが大半。業績もかなり好調であり、売上高は2024年に過去最高となる8,368億円に到達している。利益は2019年・2020年にかけて一時悪化したが、同年以降は回復しており問題はない。財務体質はかなり優良であり、自己資本比率は59.2%(2024年)と負債に依存しすぎない事業運営ができている。現在では海外売上高比率が約79%にまで到達しており、グローバル企業としての性質も強まっている。
就職格付け:B
岡山県倉敷市で『倉敷絹織』の社名で創業した岡山企業。現在では東京都内に本社を置くが、本店所在地は「岡山県倉敷市酒津1621番地」に置き続けているほか、国内最大規模の生産拠点は創業地である岡山県内に置き続けている。化学メーカーとしての一般知名度はそれほど高くはないが、岡山県内においては地元の名士的企業としてよく知られている。給与水準は財閥系化学メーカーには及ばないものの、大手化学メーカーとしては悪くない水準。平均年収では直近で802万円(平均年収)であるが、総合職であれば見かけの平均年収に対して昇給ペースはかなり早い。具体的には、総合職・30歳で年収650万~790万円、課長職レベルで年収900万~1,000万円が目安となるだろう。福利厚生も整っており、主力事業所には独身寮・社宅が用意されており住宅コストの自己負担は1万円〜数万円に収まる。独身者には家賃補助制度がないものの、結婚後には家賃補助制度が適用され月額家賃の約60%までが会社負担となる。総じて財閥系化学メーカーには届かないものの大手メーカーとして考えれば十分に優良な水準。岡山県であればトップクラスの生活水準を得られる企業であるため、同県の出身者であれば一考の余地あり。