企業概要
アズビルは、ビル・工場向けの自動制御システムを主力とする計測・制御機器メーカー。1906年に山口武彦が欧米製工作機械・計測機器の輸入商社として創業。1933年からは計測機器の自社生産を開始した。1953年には米ハネウェル社と資本提携、同社の技術を取り入れながら計測・制御機器メーカーとして発展。1960年代からはビル管理システム分野へと参入、ビル内の空調・熱源・冷温水制御を遠隔制御するシステムを確立。現在ではビル管理システムにおいて国内シェアの約80%を掌握するトップ企業である。
・ビル向け管理システムで国内シェア80%の最大手、神奈川県が地盤
・売上高・利益は増加傾向で利益率も良好、財務体質は極めて良好
・平均年収761万円だが年功序列色は強め、福利厚生はまずまず
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:65(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用数は年間90人~120人と企業規模の割に採用枠は多め。中堅大学からも幅広く採用しており、待遇の割には選考倍率も低め。かなりの穴場。
採用大学:【国公立】九州大学・広島大学・静岡大学・新潟大学・岩手大学・秋田大学・鹿児島大学・東京都立大学・東京農工大学など、【私立】早稲田大学・明治大学・関西学院大学・関西大学・立命館大学・日本大学・龍谷大学・東京理科大学・金沢工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
アズビルの売上高は2021年まで2,460億〜2,600億円ほどで推移していたが、同年以降はやや上振れ。2023年には過去最高となる売上高2,909億円に到達している。営業利益は緩やかな増加傾向が続いており、2023年には過去最高となる368億円に到達。
*1:2021年から売上高が増加している理由は、①日本国内におけるビル・大型建物の省エネ改修の増加、②データセンター向けの制御機器の需要拡大、③海外における事業拡大と為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:営業利益が増加している理由は、①原材料価格高騰や先行投資増加を受けた値上げ対応による利益率の改善、②売上高の増加に比例した利益拡大、③景気動向に業績を左右されやすい工場・プラント向け製品の販売拡大、など。
✔セグメント別の状況
アズビルは、ビルディングオートメーション事業(ビル・大型建物向け総合管理システム・入退室管理システム、空調・熱源・冷温水制御機器など)、アドバンスオートメーション事業(工場・プラント向け運転監視システム・計測機器・調整弁など)、ライフオートメーション事業(ガスメーター・警報機、水道メーター・レギュレータなど)、その他事業(保険代理店業など)、の4事業を有する。
当社はビル・大型建物向け総合管理システムにおいて国内シェアの約80%を掌握する業界最大手であり、同分野を担うビルディングオートメーション事業が売上高の約45%・利益の約52%を占めている。工場・プラント向けの運転監視・遠隔制御・自動化システムにおける存在感も大きく、同分野を担うアドバンスオートメーション事業も全社利益の約43%を支えている。
✔最終利益と利益率
アズビルの純利益は緩やかな増加傾向にあり、2023年には過去最高となる302億円に到達している。営業利益率も増加傾向が続いており、2023年には12.6%と計測・制御機器メーカーとしては高めの水準。
✔自己資本比率と純資産
アズビルの自己資本比率は長期的に62%〜71%ほどで推移しており、大いに良好な水準。負債に依存しない事業運営ができており、実質無借金経営と評価できる強固な財務基盤を構築している。純資産は長期的な増加傾向が続いており、2023年には2,248億円に到達している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
アズビルの平均年収は760万〜790万円ほどで安定的に推移している。大卒総合職の場合、30歳で年収500万~620万円ほど、課長職レベルで年収930万~980万円が目安。平均年齢は45.9歳(2023年)と大企業の標準的水準よりもやや高め。
✔従業員数と勤続年数
アズビルの単体従業員数は、2019年まで微増傾向が見られたが、同年以降は微減傾向に転換。2023年には5,163人の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は9,900人ほど。平均勤続年数は長期的に20年以上で推移しており、従業員の定着は非常に良好である。
総合評価
企業格付け:B
戦前から計測・制御機器メーカーとして発展した企業であり、各種センサによる『計測』と遠隔による『制御』を強みとする。ビル総合管理システムにおいて国内一強とも言える圧倒的なシェアを確立しており、ビル内部の照明・入退室・空調・熱源・冷温水などの設備を一括管理することで安全快適な建物環境を構築している。著名な実績としては東京ミッドタウン日比谷や京セラドーム大阪などが名を連ねる。業績においては売上高・利益いずれも拡大傾向にあり、過去最高圏で推移している状況。新築物件向けの販売好調のみならず、電力・ガス価格の高騰によりビル・大型建物における省エネ需要の高まりも当社業績の追い風。過去3年間は積極的な値上げ対応による利益率の改善も進んでおり、営業利益率12.6%(2023年)に到達している。財務体質においても自己資本比率70.6%(2023年)と大いに優良であり、高利益率を安定的に確保できる利益体質を加味すれば、財務健全性は極めて強固と評価できる。
就職格付け:CCC
2012年までは『山武』の社名で知られていた計測・制御機器メーカー(山武は創業者の姓にちなむ)。かつては米ハネウェル社の出資を受けていた時期もあり、1966年から1998年までの社名は『山武ハネウェル』でもあった。給与水準においては平均年収760万〜790万円ほどで推移しており、企業規模なりの待遇。大卒総合職の場合、30歳で年収500万~620万円ほど、課長職レベルで年収930万~980万円が目安となるだろう。ただし年功序列色がまだ色濃く残っており、若手層の抜擢人事は殆どみられない。福利厚生においては、独身寮・社宅が整備されているため、20代の若手社員であれば住宅コストは月額1万円未満で済む。主要拠点は東京・神奈川県内に集積しており、遠方への転勤を経験せずに生活の根を下ろしやすいのは美点(営業部門は日本全国に営業拠点を有しているため、転勤リスクは当然にある)。