企業概要
LVMH(正式表記:LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、フランスに本社を置くハイブランド・コングロマリット。1987年にルイ・ヴィトンとモエ・ヘネシーが合併して誕生。80年代から現在に至るまで他ハイブランドを次々と傘下に収め、現在では75ブランドを展開する巨大企業。ブルガリ・ティファニー・セリーヌ・ロエベなど世界的ブランドを数多く擁し、ハイブランド業界において世界トップの規模を誇る。事業領域はファッション・バッグ・時計・宝飾品・ワインなど極めて幅広く、世界の富裕層に愛好される製品を数多く生み出し続けている。
・フランス地盤の巨大ハイブランド企業、75ブランドの集合体
・売上高・利益いずれも成長が著しい、アジア圏と日本が稼ぎ頭
・本社勤務の総合職なら30歳で年収700万円以上、福利厚生は希薄
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:総合職=70(最上位)
サラリーマンとしては最上位クラスの勝ち組。世間が思うほど高待遇ではないが、傑出した企業イメージが高査定を牽引。ブランド戦略におけるキャリア価値は唯一無二の強さである。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:総合職=至難、店舗スタッフ=中難易度
本社勤務の総合職は中途採用のみで求人数も少なく、入社難易度は高い。店舗スタッフは例年50人以上を日本全国の女子大学・専門学校からも積極採用しているが、企業イメージに恥じない教養・外見が必要。
採用大学:非公開(出典:LVMH採用情報)
業績動向
✔売上高と営業利益
LVMHの売上高は長期的な右肩上がりでの成長が続いており、2023年には売上高861.5億ユーロに到達*1。2020年にはCOVID-19影響を受けて減収減益に陥ったが、同年以降の業績拡大が著しい。営業利益も増加傾向が続いており、2023年には営業利益228億ユーロに到達。
*1:当社の業績拡大が続いている理由は、①世界的な経済成長と株高傾向による旺盛な贅沢消費需要、②アジア圏におけるハイブランド消費の激化、③世界的な格差拡大によるハイブランド需要の拡大、などが主要因。
✔セグメント別の状況
LVMHは、ファッション部門(ルイヴィトン・ディオール・ロエベ・セリーヌ・フェンディなど)、コスメティクス部門(ゲラン・ラフラシェール・ベネフィットなど)、時計宝飾部門(ブルガリ・ティファニー・タグホイヤー・ウブロ・ショーメなど)、ワイン・スピリッツ部門(ドンペリニヨン・ヘネシー・クリュッグ・ヌマンシアなど)、セレクティブリテーリング事業(DFS・セフォラ・サマリテーヌなど)、の5部門を有する。
当社は高級衣料品・化粧品・宝飾品・ワインなど多種多様なハイブランド商品を展開するが、最大の稼ぎ頭はファッション事業となっている。地域別の売上高においてはアジア地域が欧米市場をも超える最大の稼ぎ頭となっている他、日本市場も単独で売上高の7%を占める。
✔最終利益と利益率
LVMHの純利益は2020年のみ一時急減したが、同年以外は長期的な増加傾向を維持している。2023年には純利益159.5億ユーロにも到達。営業利益率は18%~25%レベルでの推移が続いており、高利益率ではあるものの世間が思うほど極端な高利益率ではない。
✔自己資本比率と純資産
LVMHの自己資本比率は10%~20%ほどの水準で長期的に推移しており、それほど高くはない。当社の場合は利益水準が安定していることもあり、資本効率を高めるために積極的な株主還元を進めて意図的に資本を薄くしている事情があるため問題はない。純資産は右肩上がりの増加傾向にあり、2023年には627億ユーロに到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
LVMHの平均年収は非公開。本部所属の総合職の場合、30歳・年収700万~800万円、課長職レベルで年収900万~1,100万円ほど。店舗スタッフの場合は、店長クラスで500万~680万円、スタッフで400万~550万円ほど。
[日本法人の個別データは非公開]
✔従業員数と勤続年数
LVMHの従業員数はグローバルで16.3万人レベル。日本法人における従業員数は8,000人ほどと推定される。日本法人における平均勤続年数は非公開。
[日本法人の個別データは非公開]
総合評価
企業格付け:SS
ルイ・ヴィトンを筆頭に70以上のハイブランド企業の集合体たる巨大コングロマリット。時価総額においてはフランス首位を誇り、ヨーロッパ全土でもトップレベル。当社は75ものハイブランドを展開するが、グループ内において各ブランドの自主性と独立性を承認している点に特徴。各ブランドの世界観を尊重することで、創造性と独自性を存分に発揮させて成長に繋げる戦略である。業績は売上高・利益いずれも右肩上がりで増加しており、富裕層の世界的な増加による贅沢消費需要が追い風。とりわけアジア圏はハイブランド好きの巨大市場であり、今や欧米市場よりもアジア市場が稼ぎ頭。世界の経済成長が続く限りは富裕層の贅沢消費を享受できる点は当社の何よりの強み。他方で、景気後退や株価暴落などが起こると贅沢消費は真っ先に落ち込むため、打撃を受けやすい点はやや弱点(2020年のCOVID-19感染拡大期にも業績を落とした経緯がある)。
就職格付け:A
世界最高峰のブランドビジネス企業であり、フランスを代表する企業。現会長のベルナール・アルノーが率いるアルノー家が発行済み株式数の半分弱を掌握しており、同家出身者がグループの中核を占めるなど同族支配の傾向が強い。最近では当社の業績好調によってアルノー家は保有資産額において世界1位の大富豪となっている。給与水準は外資系企業といえども傑出してはおらず、本部所属の総合職の場合、30歳・年収700万~800万円、課長職レベルで年収900万~1,100万円ほど。普通の日系大手メーカーと遜色ないうえ、当社は家賃補助制度や借上げ社宅制度もないため、待遇面での旨みは世間が思うほどではない。ブランドビジネスに大きな関心があるのならば、当社における経験は極めて貴重かつ将来のキャリアにとっても有益であろうが、単純に良い待遇を求めるだけなら他にも選択肢はあるだろう。
出典:LVMH Moët Hennessy ‐ Louis Vuitton SE(Investor Relations)