企業概要
森ビルは、東京都心部におけるオフィスビル・商業施設の開発を主力とする不動産デベロッパー。森泰吉郎が1955年に賃貸ビル会社として創業、終戦後に買い集めていた都心部の底地にオフィスビルを建設して事業を拡大。1970年代には複合商業施設の開発にも進出、ラフォーレ新宿やアークヒルズを開業。2003年には六本木ヒルズを開業して日本を代表する都市ビルとしてブランドを確立。現在では東京都港区を中心に約100棟以上のビルを保有、『立体緑園都市』の思想に基づくコンパクトシティ開発を得意とする。
・東京都心に特化した不動産会社、六本木ヒルズなど大型物件を多数保有
・2022年から売上高・利益は過去最高圏に到達、財務体質は問題ない水準
・平均年収955万円だが家賃補助は多くない、都内でのブランド力は大
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:74(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:最難関級
総合職の採用数は年間25人~35人ほど、ビルマネジメント職として年間5~8人を採用。東京都内では絶大なブランド力を誇るだけにハイレベル大学からの採用が多く、難易度は非常に高い。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・名古屋大学・東北大学・神戸大学・横浜国立大学・金沢大学・千葉大学・一橋大学・東京工業大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・明治大学・関西学院大学・芝浦工業大学・東京電機大学・聖心女子大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔営業収益と営業利益
森ビルの営業収益は2021年まで2,300億~2,500億円ほど安定していたが、同年以降は急増傾向。2023年には過去最高となる営業収益3,604億円に到達している。営業利益は510億~650億円ほどで長期的に横這いであるが、2023年には781億円に増加。
*1:2023年に営業収益が急増した理由は、①大型物件『麻布台ヒルズ』『虎ノ門ヒルズ ステーションタワー』の開業、②COVID-19感染終息による都心オフィスビル需要の回復、③訪日外国人観光客の増加によるホテル事業の回復、など。
✔セグメント別の状況
森ビルは、賃貸事業(賃貸管理・運営受託・請負工事・電気供給など)、分譲事業(個人顧客・投資家向けオフィスビル・賃貸住宅の販売)、施設営業事業(ホテル運営・会員制クラブ・ゴルフ場など)、海外事業(海外における不動産開発・不動産事業)、の4事業を有する。
当社は総合不動産デベロッパーとして東京都心部に100棟以上のオフィスビル・複合商業施設・マンションを保有しており、これらの物件の賃貸事業・分譲事業が主力。東京都港区を戦略エリアとして定めており、経済・文化・国際・自然が調和する国際都市の建設を目指している(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
森ビルの純利益は2019年まで310億~400億円で推移していたが、2021年からは増加傾向に転換している。2023年は過去最高となる純利益589億円に到達。営業利益率は長期的に20%ほどで推移しており、大手不動産デベロッパーとしては標準的な水準。
✔自己資本比率と純資産
森ビルの自己資本比率は長期的に20%以上と高くはないが、大手不動産デベロッパーとしては標準的な水準*2。純資産は長期的な増加傾向にあり、2023年には7,660億円に到達している。
*2:不動産デベロッパーは土地建物への投資額が巨額に及び、投資期間も長期に渡る。そのため長期借入金などの資金調達で費用を賄うことが多く、自己資本比率が高まりにくい傾向がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
森ビルの平均年収は2022年まで860万〜900万円で推移していたが、2023年には955万円まで増加。総合職であれば30歳で780万円~850万円ほど、課長職レベルで年収1,200万~1,300万円レベル。平均年齢は43.5歳(2023年)と、大企業の標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
森ビルの単体従業員数は2018年から増加傾向が続いており、2023年には1,568人となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3,940人ほど。平均勤続年数は直近で15.9年と大企業の標準的水準たが、不動産業界としては長め。
総合評価
企業格付け:AA
東京都心において数々の傑作ビルを生み出してきた名門不動産デベロッパー。代表的な物件には『六本木ヒルズ』や『麻布台ヒルズ』などがあり、今や東京を代表するランドマークを開拓してきたと言っても過言ではないだろう。しかしながら、東京都以外における不動産開発は殆ど手掛けておらず、岐阜県・山口県・愛媛県に数物件を有するのみである。業績においては、営業収益・営業利益いずれも2022年から増加傾向。これは『麻布台ヒルズ』『虎ノ門ヒルズ ステーションタワー』の開業が主要因である他、COVID-19感染拡大期に落ち込んだ都心オフィスビル需要の回復も追い風となっている。財務体質においては自己資本比率20%台で推移しており高くはないが、大手総合不動産デベロッパーとしては標準的な水準である。高いブランド力を有する不動産デベロッパーとして独特の業界ポジションを築いているのは強味である一方、東京都心に偏重した事業展開ゆえに首都直下型地震などによる事業リスクは懸念となるだろうか。
就職格付け:AA
東京都心部において強烈な存在感を放っている不動産デベロッパーであり、街中の至るところで当社ロゴを掲げたビルを目にするであろう企業。社名が類似する大手不動産会社・森トラストとは資本関係はなく、まったくの別会社である(創業者の森泰吉郎が1993年に死去後に三男・森章が子会社・森ビル開発を分離独立させて現在の森トラストとなった経緯がある)。給与水準においては平均年収860万〜900万円で推移しているが、2023年には955万円にまで増加。総合職であれば30歳で780万円~850万円ほど、課長職レベルで年収1,200万~1,300万円レベルに到達する。さすがに財閥系不動産デベロッパーには劣るとはいえ、不動産業界において上位級の給与水準を実現している。福利厚生においては意外と普通レベルであり、家賃補助制度は月額1万~3万円ほど。家賃補助を満額受給する為には会社近郊に居住する必要がある(震災発生時にビルでの救助活動に参加する前提だと防災要員手当として月額5万円が更に増額される)。若手社員は社宅に居住もできるが、2人部屋となるのがネック。