企業概要
明治海運は、外航海運・船舶管理・オフィスビル賃貸・ホテル運営を主力とする海運会社。1911年に三井物産船舶部の船舶管理会社として設立。戦前から三井グループの石炭輸送を中心に海運会社として発展。戦時中に船隊の多くを喪失して大打撃を受けるが、戦後復興期には大手石油会社などと長期傭船契約を結ぶことで成長。1980年代には不動産・ホテルに事業を多角化して、利益体質の安定を追求した。現在では保有船舶70隻の船隊規模を維持しつつ、不動産・ホテルにも注力している。
・海運業界6位、海運事業を中核としつつ不動産・ホテルにも事業多角化
・売上高・利益は2021年から過去最高圏で好調、自己資本比率は低い
・平均年収715万円で福利厚生も良好だが、平均勤続年数は伸び悩む
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用数は年間0名~4名と極めて少ない。数少ない海運業界の上場企業だけあってハイレベル大学からの採用が多いが、一般知名度は壊滅的に低いため選考倍率は高まりにくい。
採用大学:【国公立】神戸大学・筑波大学・横浜国立大学・東京外国語大学・神戸市外国語大学・東京海洋大学など、【私立】早稲田大学・国際基督教大学・同志社大学・明治大学・法政大学・関西学院大学・立命館大学・学習院大学・成蹊大学・日本女子大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
明治海運の売上高は2020年まで350億〜440億円で推移していたが、同年以降は増加傾向に転換。2023年には過去最高となる売上高650億円に到達*1。営業利益も2021年から増加傾向にあり、2023年には過去最高となる113億円に到達。
*1:2021年から業績拡大が進んだ理由は、①COVID-19感染拡大に端を発した海運市況の高騰(参考リンク)、②新車生産台数の増加による自動車専用船の市況高騰、③COVID-19感染終息によるホテル事業の急回復、④為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
明治海運は、外航海運事業(タンカー・ばら積み船・自動車専用船・コンテナ船の船舶保有・貸渡・管理など)、ホテル事業(北海道・沖縄.神戸におけるホテル・ゴルフ場・レストラン運営など)、不動産事業(オフィスビル・住宅賃貸、海外不動産事業)、の3事業を有する。
海運事業はグローバルの海運市況に業績を極端に左右されるため、当社は不動産・ホテルに進出することで業績の安定化を図っている。当社は100年以上の歴史のなかで海運不況を何度も経験しており、その経験知から事業多角化を目指してきた経緯がある。
✔最終利益と利益率
明治海運の純利益は2020年まで10億〜20億円で推移していたが、同年以降は増加傾向*2。2022年には過去最高となる純利益64億円を記録している。営業利益率は2020年を除けば9%~13%ほどで推移しており、海運会社としては安定的な利益創出ができている。
*2:2022年に純利益が増加した理由は、①世界的な海運市況の高騰による利益水準の改善、②保有する船舶3隻の売却による特別利益74億円、など。
✔自己資本比率と純資産
明治海運の自己資本比率は長期的に10%〜15%で推移しており、かなりの低水準*3。純資産は2021年からの業績好調によって右肩上がりの増加を遂げており、2023年には814億円に到達。
*3:当社が主力とする船舶・不動産・ホテルいずれも多額の初期投資を長い年月をかけて回収するビジネスモデルである。巨額の初期投資を借入金で賄っている関係上、自己資本比率が低迷しやすい事情がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
明治海運の平均年収は長期的に680万〜710万円で推移している。総合職の場合、30歳で年収580万~600万円ほど、課長職レベルで年収900万~1,100万円が目安。平均年齢が36.5歳(2023年)と若い組織であるため、見た目の平均年収が高くなりにくい事情がある。
✔従業員数と勤続年数
明治海運の単体従業員は長期的な増加傾向にあり、2023年は110人となっている。平均勤続年数は直近で6.5年となっており、大企業の標準的水準を大幅に下回る*4。
*4:当社の平均勤続年数が低いのは、①離職率が高くなりやすい船舶の乗組員を海技職として採用している点、②業績拡大に応じて人員拡大を進めている点、など。
総合評価
企業格付け:CC
日系海運会社としては売上高で第6位に位置している中堅海運会社。当社の特徴は「大手海運会社・石油会社との中~長期傭船契約」を主力としている点にあり、その甲斐もあって海運市況の急変動に直面しても急激な業績変動に見舞われにくい点にある。よく言えば「海運会社の割には業績が安定している」反面、悪く言えば「海運市況が急騰しても(中~長期傭船契約が主力故に)スポット契約での荒稼ぎはできない」ことを意味する。とはいえ、業界中堅の企業規模を思えば、多少の機会損失に目を瞑っても業績安定化を取るのは合理的な選択ではあるか。加えて、業績安定化のために不動産・ホテル事業にも注力しており、海運市況の低迷時にも利益を堅実に確保できる体制を整えているのも特徴。業績においては2021年からの海運市況の高騰により、売上高・利益いずれも過去最高圏に到達。ただし2022年・2023年には保有船舶の売却による特別利益が加わっており、一過性の要因による利益上振れが含まれる点には注意したい。強いて言えば財務体質において自己資本比率15.5%(2023年)とやや低めである点は気がかりではあるが、いざとなれば売却できる船舶・不動産を多数保有していることを思えば財務健全性に懸念を抱くレベルではない。
就職格付け:CCC
かつて三井物産船舶部の派生企業として設立された海運会社。好不況の落差が著しい海運業界において100年以上に渡って生き残ることに成功してきた企業であり、1910年代には海運業界4位にまで躍進した時期もあった。当社を志望するなら、こうした歴史を綴った「明治海運100年のあゆみ(参考リンク)」は必見であろう。給与水準においては、平均年収680万〜710万円で推移しており、海運業界としては普通の域をでない。が、これは当社が平均年齢36.5歳(2023年)と若い組織であることも念頭に入れる必要がある。実際には、総合職の場合、30歳で年収580万~600万円ほど、課長職レベルで年収900万~1,100万円が目安となるだろう。福利厚生においても企業規模の割に恵まれており、独身寮・家賃補助制度・借上げ社宅制度が一通り揃っている。一般知名度は限りなく低い企業であるため選考倍率は高まりにくいが、年間の採用人数が若干名のみに留まっており、入社難易度は相応に高い点には注意されたい。