企業概要
日本精工(NSK)は、ベアリング・ボールねじ・リニアガイド・パワーステアリングなどを主力とする自動車部品・精密機械メーカー。1914年に山口武彦が軸受メーカーとして成功。それまで輸入に頼っていた軸受の国産化に成功し、戦前から精密機械メーカーとして発展。終戦後には自動車部品・ボールねじなど事業多角化を進め、1964年には新幹線向け車軸軸受を製品化。現在では世界トップクラスの精密機械メーカーとして知られ、ボールねじで世界シェア首位・ベアリング・リニアガイドで世界シェア3位を誇る。
・ベアリングで世界シェア3位の大手、自動車部品・産業機械部品にも強い
・売上高・利益は2017年でピークアウト、財務体質は問題なし
・平均年収741万円で業界上位級、福利厚生も良好で有給休暇も取得しやすい
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:63(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用数は毎年60名~90名ほど、うち80%ほどが技術系採用枠。精密機械メーカーとしてはトップクラスの業界大手であるため、同業界の志望者からは底堅い人気がある。
採用大学:【国公立】名古屋大学・九州大学・千葉大学・金沢大学・熊本大学・長崎大学・東京都立大学・大阪公立大学・豊橋技術科学大学など、【私立】早稲田大学・同志社大学・中央大学・立教大学・関西大学・立命館大学・日本大学・東京理科大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
日本精工の売上高は2017年に過去最高となる1.02兆円に達したが、同年以降は後退*1。直近では売上高0.78兆円規模となっている。営業利益も2017年に過去最高となる978億円を記録したが、2019年からは60億~440億円レベルで推移。
*1:2017年から売上高が後退した理由は、①COVID-19感染拡大期における自動車メーカーの生産混乱による販売減少、②自動車の電動化によるパワーステアリング・ベアリングの販売数量の減少、③中国企業の勢力拡大による競争激化、など。
✔セグメント別の状況
日本精工は、産業機械事業(一般産業向けの軸受け・精密機器部品・状態監視システムなど)、自動車事業(自動車向け軸受、パワーステアリング、トランスミッション向け部品など)、その他事業(鋼球の製造販売、機械設備製造など)、の3事業を有する。
当社はベアリング・ボールねじ・リニアガイドなど多種多様な精密機械を製造しているが、売上高の約50%・利益の約64%を自動車事業が支える構造。そのため、主要顧客の自動車メーカーが新車生産を増減すると、当社業績にも影響が波及しやすい。
✔最終利益と利益率
日本精工の純利益は2017年に過去最高となる693億円に達したが、同年以降は後退。営業利益率も2017年には9.59%と機械メーカーとしては良好な水準にあったが、2019年からは1%~5%レベルに低下。
✔自己資本比率と純資産
日本精工の自己資本比率は45%~50%ほどで長期的に推移しており、負債に依存しすぎない事業運営ができている。純資産も緩やかな増加傾向にあり、2023年は6,780億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
日本精工の平均年収は2018年に775万円を記録したが、同年以降は業績後退によって低下気味。大卒総合職は30歳で年収550万〜620万円ほど、課長職レベルで950万〜1,050万円に達する。平均年齢は直近で41.6歳と大手メーカーの標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
日本精工の単体従業員数は2021年まで微増傾向にあったが、同年をピークに微減傾向に転換。2023年は前年から500名ほど減少*2して、7,459人となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.56万人ほど。
*2:2023年に単体従業員数が減少した理由は、業績悪化していたステアリング事業の組織再編(参考リンク)。その後、同事業(NSKステアリング&コントロール)の株式の半分をジャパン・インダストリアル・ソリューションズへ譲渡した経緯がある(参考リンク)。
総合評価
企業格付け:CCC
ベアリング(軸受)分野において世界シェア3位に食い込み、同業のジェイテクト・NTNと並んでベアリング御三家と称される大手精密機械メーカー。とりわけ自動車業界向けの製品が主力であり、パワーステアリングやトランスミッション部品においても存在感がある。業績は2017年の売上高1.02兆円・営業利益978億円をピークに後退気味、直近の2023年は売上高0.78兆円・営業利益273億円となっている。この主要因は、売上高の約50%を依存する自動車事業の不振であり、自動車の電動化への追従遅れや中国メーカーとの競争激化などがある。とりわけ主力製品だったパワーステアリング分野では採算悪化が続いており、全社利益の重荷となっていた。そのため、2023年にはステアリング事業を組織再編(参考リンク)したうえで、同事業(NSKステアリング&コントロール)の株式の半分をジャパン・インダストリアル・ソリューションズへ譲渡した(参考リンク)。と同時に、業績回復を図るべく、2026年に向けた中期経営計画を策定。収益改善に向けて、①産業機械事業におけるラインナップ拡大とインド市場への注力、②電動車向け自動車部品ラインアップの強化、③赤字地域・事業の構造改革と生産再編、などを掲げる(参考リンク)。厳しい事業環境の下であっても利益を創出できる企業体質への変革を目指すフェーズにあると評価できるだろう。
就職格付け:CCC
日系の機械メーカーとしては売上高において上位10社に食い込む業界大手であり、世界31ヵ国以上に事業拠点を有するグローバル企業。ベアリング御三家のなかでは売上高においてジェイテクト・NTNに続く3番手(長らく業界2位であったが、2023年にNTNに逆転された)である。給与水準においては直近の平均年収が741万円と精密機械メーカーとしては上位級。総合職であれば30歳で年収550万〜620万円ほど、課長職レベルで950万〜1,050万円が目安となるだろう。福利厚生はかなり恵まれており、20代の若手社員は借上げ社宅制度によって自己負担1万円強で賃貸マンションに居住できる。30代以降は家賃補助制度に移行するが最大1万円/月の補助に留まるが、転勤を1度するたびに社宅適用期間が10年追加になる。製造拠点は日本全国に分散しており、グループ会社も含めれば福島県・神奈川県・埼玉県・群馬県・静岡県・滋賀県・長野県・福岡県などに立地。転勤の範囲はかなり広大であるが、社宅適用期間が10年も追加される金銭的メリットは大きく、悩みどころとなるだろう。なお、平均有給休暇取得日数が18.7日(2023年)とかなり多く、休みがとりやすいホワイトな労働環境であることが伺える。