企業概要
日本空港ビルデングは、空港施設運営・賃貸・物品販売・機内食製造などを手掛ける空港機能施設事業者。1953年に東京国際空港(現・羽田空港)の管理強化に向けて民間企業有志の出資で創業。1970年代には急増する海外旅客数に対応するべく国際線ターミナルの供用を開始。1990年には東京証券取引所に株式上場。1994年には関西国際空港で業務開始、2005年には中部国際空港での業務を開始。
・空港施設運営分野において国内トップ級の1社、羽田空港が地盤
・業績急悪化から回復傾向、財務体質はまずまず良好
・平均年収798万円だが変動幅は大きい、福利厚生はそれなり
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:62(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用人数は年間10人~20人と企業規模なり。マニアックな業界ゆえに穴場感は強く、航空会社の志望者の併願先にも意外とならないため倍率も高振れしない傾向。
採用大学:非公開(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
日本空港ビルデングの売上高は2019年まで1は2,000億〜2,700億円レベルで推移していたが、2020年には525億円まで激減*1。同年以降は回復傾向にあり、2023年には売上高2,175億円に達している。営業利益も2020年に▲590億円という大赤字を記録したが、同年以降は回復傾向。
*1:2020年の業績悪化の要因は、COVID-19感染拡大による航空旅客数の激減。当年は国際線利用者数は前年比▲97%と事実上壊滅、国内線利用者も▲70%と激減。当社は空港事業に業績を依存しているため、大打撃となった。
✔セグメント別の状況
日本空港ビルデングは、施設管理運営事業(空港ターミナルの建設・運営•賃貸、羽田空港船着場、空港駐車場管理運営)、物品販売事業(国内線・国際線の販売店・免税店の運営・商品供給)、飲食事業(空港内レストランの運営、機内食の製造販売)、の3事業を有する。
当社は航空法に定める空港機能施設事業者として、羽田空港・関西国際空港・中部国際空港において空港ターミナルの運営を主力事業としている。機内食製造や小売なども展開するが、すべての事業が空港に関わるものとなっている。
✔最終利益と利益率
日本空港ビルデングの純利益はあまり安定していない。2018年には純利益330億円を記録したが、2020年には純損失▲365億円の大赤字に沈んだ。営業利益率は平常時であれば8%~13%と高めだが、業績悪化した2020年には営業利益率▲112%という低水準に落ち込んだ。
✔自己資本比率と純資産
日本空港ビルデングの自己資本比率は2018年までは50%台であったが、同年以降は30%前後まで下落*2。低くもないが高くもなく、特筆すべきことがない水準である*3。純資産は2019年に2,019億円に達したが、その後の業績悪化で下落。直近の2023年には1,660億円まで下落。
*2:2018年に自己資本比率が急落した理由は、羽田空港のターミナル整備(参考リンク)に向けて長期借入金を約1,331億円ほど増加させたことが主要因。
*3:2020年に純損失365億円を計上した割に自己資本比率が低下していないが、これは同年に公募増資によって約1,191億円を調達したことが主要因。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
日本空港ビルデングの平均年収は600万〜690万円台で推移していたが、2022年からは平均年収700万円台に浮上。直近では平均年収798万円に達している。大卒総合職ならば30歳で年収490~590万円、課長職レベルで900万~1,050万円ほどに達する。
✔従業員数と勤続年数
日本空港ビルデングの単体従業員数は長期的に200人レベルで横ばい。直近の単体従業員は293人となっており、事業規模の割には小規模な組織体制。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2,600人ほど。平均勤続年数は長期的に9年〜12年前後で推移しており、高くもなければ低くもない。
総合評価
企業格付け:CCC
航空法に定める空港機能施設事業者のなかでもトップクラスの企業規模であり、同事業者における上場企業は当社以外には三愛オブリ・空港施設の2社しかない。業績は2020年にはCOVID-19で壊滅的影響を受けたものの、同年以降は回復傾向。売上高は525億円(2020年)まで激減したところから2,175億円(2023年)まで回復。営業利益も▲590億円(2020年)から295億円(2023年)までの回復を遂げた。本来であれば羽田空港という「日本の空の入り口」を掌握する安定企業の筈なのだが、空運業界に壊滅的な影響をもたらしたCOVID-19には無力であった。財務体質は2020年の大赤字の割には悪化していないが、これは同年に公募増資による資金調達を実施したことが理由。
就職格付け:B
羽田空港の開業から長きに渡ってターミナル開発・運営を担ってきた企業。マイナーな業界ではあるものの、航空会社とは異なる方面から空運業界を70年以上に渡って支えている。給与水準においては長年に渡って平均年収600万円台で推移していたが、2022年からは平均年収700万円台に浮上。直近の2023年には798万円に達している。大卒総合職ならば30歳で年収490~590万円には到達し、課長職レベルで900万~1,050万円ほどが目安。福利厚生はさすがに大企業と比べると強くはないが、特筆すべきは独身寮・社宅が羽田空港から片道30分以内のエリアに集積している点。若手社員であれば月額5,000円程度で入居できるうえ通勤も快適であるため快適度は相当に高い。反面、独身寮から退寮後は家賃補助制度などはないため自己負担の比率が高まるのは地味に痛い。マイナーで競合が少ない業界であるうえに空港という社会インフラを担う企業であるため、企業存続の安定性については十分すぎるほどに期待できるだろう。