企業概要
大東建託は、賃貸住宅の建築・サブリースを主力とする大手建築・不動産会社。1976年に多田勝美が貸倉庫・貸工場の建築会社として創業。1990年代にバブル景気の崩壊を受けて賃貸住宅分野へと進出、空き家期間も家賃を保証する家賃保証システムによって急成長を果たした。現在では賃貸住宅の提案〜建築〜入居者募集〜管理までを一括して担うと共に、家主から35年一括で借り上げる『賃貸経営受託システム』を展開。賃貸住宅の管理戸数は123万戸に及び、国内シェア首位を誇る。
・賃貸住宅サブリースの最大手、賃貸住宅の管理戸数は国内首位
・売上高・利益いずれも安定的だが、建築コストの増加で利益は伸び悩む
・平均年収837万円で営業成績がよければ青天井、社会的評判は難あり
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:60(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用数は年間200名〜400名と、かなりの大量採用。業界大手かつ高待遇にも関わらず、幅広い中堅大学から採用実績がある。かなりの穴場。
採用大学:【国公立】広島大学・横浜国立大学・徳島大学・鹿児島大学・琉球大学・兵庫県立大学・新潟県立大学など、【私立】青山学院大学・関西大学・立命館大学・学習院大学・日本大学・近畿大学・中京大学・愛知大学・芝浦工業大学・工学院大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
大東建託の売上高は2021年まで1.48兆〜1.58兆円で横ばいであったが、同年から増加傾向に転換。2023年には過去最高となる売上高1.73兆円に到達*1。営業利益は2019年に過去最高となる1,279億円に到達したが、2020年からは860億〜1,050億円に後退*2。
*1:当社の売上高が増加している理由は、①賃貸住宅の新規竣工による管理戸数の増加、②資材費・労務費の高騰を受けた値上げ対応、③リノベーション・再販の販売棟数の増加、など。
*2:当社の営業利益が停滞している理由は、建築事業における資材費・労務費の高騰。建築事業の営業利益は957億円(2018年)から289億円(2023年)まで後退しており、他事業の増益を相殺している状況。
✔セグメント別の状況
大東建託は、建設事業(地主に対する賃貸事業提案、建築請負契約に基づく設計・施工など)、不動産事業(『賃貸経営受託システム』による家主からの一括借上契約、入居者向け賃貸、保証人受託など)、金融事業(建築資金融資・不動産管理信託、資産承継・管理コンサルティング)、その他事業(LPガス販売・デイサービスセンター運営・海外ホテル運営など)、の4事業を有する。
当社は賃貸住宅の提案〜建築〜入居者募集〜管理までを一括して担うビジネスモデルで知られるが、売上高・利益いずれも賃貸事業が約60%以上を占める。
✔最終利益と利益率
大東建託の純利益は2019年に過去最高となる903億円に到達したが、2020年からは620億〜740億円に後退。営業利益率も2019年までは8%前後で推移していたが、2020年からは6%前後に後退。
✔自己資本比率と純資産
大東建託の自己資本比率は長期的に32%〜37%前後で推移している。一見すると高くない水準だが、有利子負債は少ないために実際は数字以上に優良な財務体質である*3。純資産は2020年から増加傾向に転じており、直近では4,058億円ほど。
*3:当社は『賃貸経営受託システム』による一括借上修繕積立金や賃貸住宅の建設に伴う工事前受金などが貸借対照表において負債として計上されているため、見かけ上の自己資本比率が低くなっている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
大東建託の平均年収は2020年を除けば830万〜890万円ほどで安定的に推移。営業職は基本給23.6万円+歩合給となり、営業成績が良ければ年収1,000万円を優に超える(営業成績が悪いと基本給のみ)。非営業職の場合は、30歳で年収530万〜600万円、課長職レベルで年収950万〜1,100万円が目安。
✔従業員数と勤続年数
大東建託の単体従業員数は長期的な減少傾向が続いているが、直近の2023年は8,100人ほどの組織体制。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.82万人ほど。平均勤続年数は直近でも11.0年と大手企業の標準的な水準を下回る。
総合評価
企業格付け:CCC
土地オーナーに対して賃貸住宅の建設を提案すると共に、建設〜入居者募集〜管理までを一貫して対応する大手建設・不動産会社。35年間に渡って賃貸住宅を一括借上げするビジネスモデルで急成長を果たし、現在では賃貸住宅の管理戸数で国内首位に君臨する。業績においては売上高こそ過去最高圏で推移しているが、営業利益・純利益は2018年をピークに後退。とりわけ建設事業における資材費・労務費の高騰が逆風となっており、同事業の営業利益は957億円(2018年)から289億円(2023年)まで減少している。ただし、全国123万戸に及ぶ管理戸数を擁する賃貸事業は盤石の利益源となっており、景気後退局面も含めて赤字転落はなく、今なお営業利益率6%以上を安定確保できているのは強みか。当社にとって最大の課題は、今まで強みとしてきた地方都市における人口減少であり、地主を説得して賃貸住宅を建設しても長期的な採算が見込みにくくなる点であろう。また、2018年には同業他社が展開する『かぼちゃの馬車』の不祥事によって、賃貸物件サブリースのビジネスモデルが社会問題化(参考リンク)。高難易度かつ高価な賃貸住宅を素人向けに販売するビジネスモデル自体が、社会的に厳しい目を向けられるリスクがつきまとう。
就職格付け:CCC
土地オーナーに対して「遊休地に賃貸住宅を建てることで相続対策・資産形成になる」触れ込みで賃貸住宅の建設を提案する、サブリースを中核としたビジネスモデルで知られる。当社に限らず、サブリース商法には社会的にも賛否両論が強く(参考リンク)、インターネット上にはネガティブな評価も数多い(参考リンク)。そのため社会的評価はマイナス寄りだが、給与水準はかなり恵まれており、平均年収は830万〜890万円ほどで安定的。が、営業職は営業成績が良ければ年収1,000万円を優に超える一方で営業成績が悪いと基本給のみと薄給になるため、やはり営業成績が命となる。技術職の場合は、30歳で年収530万〜600万円、課長職レベルで年収950万〜1,100万円が目安となるだろう。労働環境については上場企業ゆえに相当に配慮がなされているが、2018年に労働基準監督署から長時間労働の是正勧告を受けている(参考リンク)他、週刊誌にパワハラ問題が指摘される(参考リンク)などの事例がある。が、当社における最大の美点は、業界大手の上場企業であるにも関わらず、採用において学歴は殆ど問われない点にあるだらう。営業成績さえ伸ばせば年収1,000万円を優に超える待遇を得られるのは大きな魅力であり、営業適性に自信があるならばチャレンジしてみる価値がある。