企業概要
住友化学は、石油化学・合成樹脂・機能材料・農薬・医薬品・半導体材料などを主力とする住友グループの大手化学メーカー。1913年に住友総本店が別子銅山の亜硫酸ガスの処理を目的とした肥料会社として設立、戦前からアンモニア・硫酸・過燐酸石灰などを生産した。1950年代には石油化学製品の生産能力を拡大した他、医薬品・殺虫剤・農薬などに事業多角化。1970年代にはオイルショックで打撃を受けるも、1980年代からは海外展開を加速させた。現在では総合化学メーカーとして業界3位の売上高を誇る。
・住友Gの名門化学メーカー、売上高は業界3位で広範な事業範囲を誇る
・売上高は2022年に過去最高を更新するも巨額赤字に転落、財務体質も悪化傾向
・平均年収842万円で福利厚生も良好だが、全国転勤は要覚悟
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:71(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間110人~170人、プロフェッショナルスタッフの採用は年間15人~20人ほど。財閥系化学メーカーゆえに人気度は高いが、直近数年は業績不振で人気がやや下降。
採用大学:【国公立】東京大学・大阪大学・名古屋大学・九州大学・筑波大学・横浜国立大学・金沢大学・佐賀大学・東京工業大学・東京農工大学・北陸先端科学技術大学院大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・立教大学・法政大学・関西学院大学・関西大学・南山大学・東京理科大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
住友化学の売上高は2017年以降は2兆円レベルでの推移が続いている状況。2022年には過去最高となる売上高2.89兆円に到達*1したが、2023年には2.44兆円に後退。営業利益は2021年まで1,340億〜2,500億円ほどで推移していたが、2023年には過去最悪となる▲4,888億円の巨額赤字に転落。
*1:2022年に売上高が増加した理由は、①世界的な作物価格の上昇による作付増加による飼料添加剤・農薬の販売好調、②合成樹脂・メタアクリル・リチウムイオン二次電池用セパレータなどの市況好調、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:2023年の巨額赤字の理由は、①医薬品事業を担う住友ファーマの統合失調症薬『ラツーダ』特許切れによる業績悪化(参考リンク)、②石油化学品・工業薬品などの市況低迷による赤字計上、③業績悪化を受けた事業構造改革費用の計上、など。
✔セグメント別の状況
住友化学は、エッセンシャルケミカルズ事業(合成樹脂・繊維原料・工業薬品など)、エネルギー・機能材料事業(アルミナ・アルミニウム・化成品・添加剤・合成ゴムなど)、情報電子化学事業(光学製品・半導体プロセス材料など)、健康・農業関連事業(農薬・肥料・殺虫剤・飼料添加剤)、医薬品事業(医療用医薬品など)、その他事業(電力事業・物流事業・エンジニアリング事業など)、の6事業を有する。
当社は総合化学メーカーとして広範な事業ポートフォリオを有するが、売上高の規模感が大きいのはエッセンシャルケミカルズ事業と健康・農業関連事業である。2023年はエッセンシャルケミカルズ事業と医薬品事業が巨額赤字を計上したことで、他事業の利益では補いきれない状況にある。
✔最終利益と利益率
住友化学の純利益は2021年に過去最高となる1,621億円に到達したが、2023年は過去最悪となる▲3,118億円となっている。営業利益率は2021年まで7%前後で推移していたが、2021年からは急速に悪化。2023年には営業利益率▲19.9%まで悪化。
✔自己資本比率と純資産
住友化学の自己資本比率は長期的に24%~31%ほどで推移しており、大手化学メーカーとしては低めの水準。純資産は2021年まで右肩上がりで推移していたが、同年以降は減少傾向。2023年には巨額損失の計上によって純資産1.16兆円まで後退。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
住友化学の平均年収は長期的に840万~910万円ほどで安定的に推移している。大卒総合職の場合、30歳で年収700万~780万円ほど、課長職レベルで年収1,150万~1,250万円が目安。化学業界としては上位級の待遇であり、総合職は35歳過ぎに管理職に昇格すると年収1,000万円に到達する。
✔従業員数と勤続年数
住友化学の単体従業員数は緩やかな増加傾向が続いており、2023年には6,706人ほどの組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3.21万人ほど。平均勤続年数は15.7年(2023年)と大企業の標準的水準。
総合評価
企業格付け:AA→A
化学業界において三菱ケミカルグループ・旭化成に続く、業界3位の売上高を誇る総合化学メーカー。事業範囲は石油化学・機能材料・半導体材料・農薬・医薬品など極めて広範に渡り、海外売上高比率は68%(2023年)と化学業界でもトップクラス。が、業績においては2022年から急激な悪化傾向にあり、2023年には過去最悪となる純損失▲3,118億円を計上。エッセンシャルケミカルズ事業の市況低迷による赤字転落に加えて、米国における統合失調症薬『ラツーダ』の特許切れや子宮内膜症治療薬『マイフェンブリー』の特許減損損失が痛撃となっている。財務体質においては自己資本比率24.5%(2023年)と大手化学メーカーとしては下位クラスにあり、巨額損失の計上によって純資産は1.7兆円(2021年)から1.16兆円(2023年)まだ後退している状況。過去の蓄積もあるため、今すぐ企業存続の危機に直面するほどではないが、業績再建への道筋を早期に示す必要があるだろう。
就職格付け:AA
創業110年以上の歴史を誇る、住友グループの名門化学メーカー。かつて別子銅山の亜硫酸ガスの処理を目的として設立された経緯から、現在においても愛媛県周辺に主力拠点が数多く稼働している。給与水準においては平均年収840万〜910万円ほどで推移しており、化学業界としては上位クラスの待遇。大卒総合職であれば30歳で年収700万~780万円ほど、課長職レベルで年収1,150万~1,250万円には到達する。ただし年功序列色が強い人事制度となっており、管理職への昇格は35歳を過ぎてからが基本かつ同期間での給与差は発生しにくい。福利厚生においては化学業界でも上位クラスであり、社宅・独身寮に月額1万~2万円ほどの自己負担で済むことができるため生活コストは浮きやすい。強いて言えば、家賃補助制度がないために住居選択の柔軟性が低いのは惜しいか。また、主力拠点が大阪・千葉・茨城・青森・岐阜・岡山・愛媛・大分など日本全国に分散しているため、総合職であれば定期的な長距離転勤への覚悟は必須であろう。