企業概要
リゾートトラストは、ホテル会員権販売・ホテル運営などを主力とするリゾート会社。1973年に伊藤勝康がホテル会社として設立。1974年には会員制リゾートホテル『サンメンバーズ』を開業。1980年代には大都市圏からアクセスがよいリゾート地に『エクシブ』シリーズを投入、会員制ホテル事業で業界1位にまで事業拡大。1994年には富裕層向けの会員制医療サービス『グランドハイメディック』を開始。現在では会員制ホテルで業界シェア1位、ホテル・リゾート施設を全国87箇所に展開して会員数は20万人以上を誇る。
・会員制ホテルで国内シェア断トツ首位で医療事業にも進出、本社は名古屋
・売上高・利益はCOVID-19から回復して過去最高圏、財務体質も良好
・平均年収615万円でホテル・旅行業界トップクラス、福利厚生も業界首位級
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:57(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
年間の採用数は400人~500人となっており、採用枠はかなり多い。ホテル業界の志望者からは一定以上の人気があり、選考倍率は低くなりにくい。
採用大学:【国公立】筑波大学・横浜国立大学・埼玉大学・都留文科大学・名古屋市立大学・横浜市立大学・愛知県立大学・静岡県立大学など、【私立】立命館大学・日本大学・南山大学・近畿大学・東洋大学・専修大学・拓殖大学・玉川大学・龍谷大学・愛知大学・流通経済大学・日本体育大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
リゾートトラストの売上高は2022年まで1,430億~1,795億円で推移していたが、2023年には過去最高となる2,018億円まで増加*1。営業利益は2021年に86億円に減少したが、同年を除けば110億~210億円ほどで推移している。
*1:2023年に売上高が増加した理由は、①物価上昇・人件費の上昇を受けた宿泊料金・会員権価格の値上げによる増収、②COVID-19外出自粛のリベンジ消費による反動増、③世界的な株価上昇・景気好調によるリゾートホテル需要の増加、など。
✔セグメント別の状況
リゾートトラストは、会員権事業(ホテル会員権『ベイコート倶楽部』『エクシブ』の販売・サービスなど)、ホテルレストラン事業(ホテル・リゾート施設におけるレストラン・ウエディング・リゾートエステなど)、メディカル事業(メディカル会員権『グランドハイメディック』の販売、医療機関の運営・居宅介護サービス、遠隔診断システム開発・販売)、その他事業(不動産賃貸など)、の4事業を有する。
当社は売上高においてはホテル事業が約47%を占めるが、全社利益においては会員権事業が約60%を占める。全国87箇所に及ぶホテル・リゾート施設の運営によって事業規模を維持しつつ、会員権の販売で利益を確保するビジネスモデルとなっている。リゾートホテルの会員権は500万円~4,000万円に及ぶ高額商品であり、高い利益率を確保できている(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
リゾートトラストの純利益は2020年のみ▲102億円に赤字転落している*2が、同年を除けば50億~170億円ほどで推移している。営業利益率は5%~10%ほどで推移しており、ホテル業界・旅行業界としては上位クラスの利益率を誇る。
*2:2020年に純損失に転落した理由は、①COVID-19感染拡大と外出自粛によるホテルの長期休業、②COVID-19感染拡大で収益性が低下したホテルの減損損失214億円の計上、など。
✔自己資本比率と純資産
リゾートトラストの自己資本比率は長期的に25%~31%ほどで推移しているが、これは当社のビジネスモデルにも起因している*3。純資産は2021年に1,068億円にやや後退したが、同年以降は回復傾向にある。
*3:当社は建設中から新規物件の会員権を販売しており、引渡前の顧客から前受金を受領している。この前受金1,102億円(2023年)が負債に計上されているため、自己資本比率が高まりにくい事情がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
リゾートトラストの平均年収は2021年までは500万~530万円で安定していたが、2023年には615万円まで上振れ。大卒総合職の場合、30歳で年収480万~530万円ほど、課長職レベルで年収690万~780万円が目安。平均年齢は36.5歳(2023年)と大企業の標準的水準よりもかなり若め。
✔従業員数と勤続年数
リゾートトラストの単体従業員数は2022年まで4,800人~5,400人ほどで推移していたが、2023年には5,741人の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は8,400人ほど。平均勤続年数は9.2年(2023年)と大企業の標準的水準を下回る。
総合評価
企業格付け:C
日本における会員制ホテル分野において断トツ首位のトップ企業。主力ブランドには『ベイコート倶楽部』『サンクチュアリコート』『エクシブ』があり、会員権の販売価格は500万円~4,000万円にも及ぶ。富裕層向けに最先端の医療・検診サービスを提供するメディカル会員権『グランドハイメディック』も展開しており、売上高・利益の約20%強を占めるまでに成長している。業績においては2020年にCOVID-19感染拡大をうけて純損失102億円に転落したが、2021年以降は早々に黒字圏に浮上。富裕層をメインターゲットとするビジネスモデルゆえに、ホテル業界としては利益率が高めの企業でもあり、営業利益率が7%~10%ほどで推移している。財務体質においては自己資本比率27.6%(2023年)と低めにみえるが、これは顧客から預かった前受金が負債として計上されている背景があるため実際の財務健全性はより高い。また、COVID-19感染拡大期においても営業黒字を保った強靭な利益体質を加味すれば、現状の自己資本比率でも十分な安全性は確保されていると評価できるだろう。
就職格付け:C
愛知県名古屋市に本社を置くリゾート企業。同業他社には東急リゾートが展開する『東急ハーヴェストクラブ』があるものの、実際には当社と東急リゾートの2社で国内シェアの約90%を占める状況にある。給与水準においては平均年収615万円(2023年)と、ホテル業界・旅行業界としてはトップクラスの水準。大卒総合職の場合、30歳で年収480万~530万円ほど、課長職レベルで年収690万~780万円には到達できる。富裕層をメインターゲットとする会員制ホテルにおいては通常のホテルを凌駕するホスピタリティが求められるため、人材投資を加速させている背後事情もある(参考リンク)。福利厚生においてもホテル業界・旅行業界トップクラスであり、従業員向けの独身寮・社員食堂が整備されている他、住宅補助として最大3万円/月が支給される。またホテル業界・旅行業界には珍しく、年間休日日数120日・平均有給取得日数9.5日(2023年)と休みやすい環境。総じて、ホテル業界・旅行業界を目指すのであれば有力な候補となりうる、業界の優良児であると評価できるだろう。