企業概要
ニチレイは、冷凍食品・レトルト食品・低温物流サービスなどを展開する大手食品メーカー。1942年に国策によって国内水産会社を統合して設立。終戦後には水産・畜産・低温物流を主軸とした民間企業として再出発。1959年には冷凍トラックを自社開発し、日本初となるトラックによる低温物流を確立。1970年代からは食の多様化を追い風に冷凍食品事業を急拡大。1987年には日本初となるアセロラドリンクを発売、日本人にとって未知の果物であったアセロラを普及させた。現在では冷凍食品において国内売上高首位を誇り、冷蔵倉庫スペースにおいて国内1位・世界5位に位置する。
・冷凍食品において国内シェア首位の食品メーカー、低温物流でも国内最大手
・売上高・利益も安定的かつ過去3年は増加傾向、財務体質も良好
・平均年収702万円、総合職・30歳で年収490万~550万円が目安
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用実績は年間110名~130名と、大手食品メーカーとしては採用数はかなり多い部類。採用大学もハイレベル大学から中堅大学まで幅広く、有名企業ながらも門戸は広い。
採用大学:【国公立】神戸大学・新潟大学・静岡大学・小樽商科大学・東京農工大学・東京海洋大学など、【私立】早稲田大学・明治大学・法政大学・立命館大学・日本大学・近畿大学・成蹊大学・駒澤大学・国士舘大学・文教大学・相模女子大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
ニチレイの売上高は2020年まで5,300億~5,800億円で推移していたが、同年以降は増加傾向。2023年には過去最高となる売上高6,800億円に到達。営業利益は290億〜370億円ほどで長期的に安定推移。
*1:2021年から売上高が増加に転じた理由は、①世界的な原材料価格高騰を受けた値上げ対応による増収、②加工食品・低温物流における海外事業の好調、③共働き家庭や少人数世帯の増加による冷凍食品市場の拡大、など。
✔セグメント別の状況
ニチレイは、加工食品事業(冷凍食品・レトルト食品・農産加工品・アセロラなど)、水産事業(水産品加工・販売)、畜産事業(畜産品加工・販売、肉用鶏飼育・販売)、低温物流事業(輸配送・保管サービス、配送センター機能提供、物流コンサルティングなど)、不動産事業(オフィスビル・駐車場賃貸など)、その他事業(バイオサイエンス・清掃関連サービスなど)、の6事業を有する。
当社は冷凍食品において国内シェア首位を誇るだけに食品メーカーとして認知されているが、1950年代から低温物流事業におけるパイオニアでもある。現在では売上高・利益いずれも低温物流事業が加工食品事業に並ぶ規模にまで成長しており、低温物流事業も当社のコア事業となっている。
✔最終利益と利益率
ニチレイの純利益は180億〜240億円ほどで長期的に安定。2023年には過去最高となる純利益244億円に到達している。営業利益率は長期的に5%以上で安定的に推移しており、同業のマルハニチロ・ニッスイよりも高い水準を確立。
✔自己資本比率と純資産
ニチレイの自己資本比率は長期的な増加傾向が継続しており、直近では52.2%まで向上。安定的な利益体質も考慮すれば、財務体質は十分すぎるほどに健全と評価できる。純資産は2017年から右肩上がりで増加しており、直近では2,230億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ニチレイの平均年収は長期的に680万~710万円ほどで安定的に推移しているが、これは持株会社の221人のみの平均年収であるため注意が必要。持株会社の平均年収で比較しても同業のマルハニチロ・ニッスイよりもやや低め。総合職の場合、30歳で年収490万~550万円、課長職レベルで年収750万~880万円が目安。
✔従業員数と勤続年数
ニチレイの単体従業員数は直近でも221人に過ぎず、従業員の殆どは事業会社に属している。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.63万人ほど。平均勤続年数は直近で16.0年と、大企業の標準的水準。
総合評価
企業格付け:CCC
冷凍食品と低温物流において日本企業トップクラスの国内シェアと実績をもつ大手食品メーカー。戦時中の国策により設立された企業であり、設立当時は日本水産(現・ニッスイ)の陸上設備や工場を引き継いだ関係にあり、同社とは歴史的には縁戚にあたる。設立当時は水産会社としての性質が強かったが、1970年代からは冷凍食品市場の拡大を追い風に食品メーカーとしての地位を確立。水産品輸送に必要となる冷凍・冷蔵技術をベースに低温物流事業でも頭角を現し、今や冷蔵倉庫の保有スペースは日本企業トップとなっている。業績はかなりの安定型であり、売上高・利益いずれも景気後退局面を含めて安定。2023年には売上高・利益いずれも過去最高を更新したが、これは世界的な原材料価格上昇を価格転嫁したことや海外事業の好調が理由。財務体質も大いに堅実であり、自己資本比率は直近で52.2%にも達している。総じて、業績・財務いずれも安定しており特段の非の打ち所がない。冷凍食品市場は共働き世帯や単身世帯の増加によって拡大を続けており、市場拡大の恩恵が期待できることもプラス要素だろう。
就職格付け:CC
同業のニッスイ・マルハニチロと同様に水産会社としてのルーツを持ちながらも、冷蔵・冷凍技術をベースに冷凍食品を中心とした食品メーカーとして発展した1社。ただ、ニッスイ・マルハニチロと決定的に異なるのは、同2社が今なお水産事業を食品に並ぶコア事業としているのに対して、当社は食品と物流をコア事業としている点だろう。今や当社は水産事業が占める割合は売上高・利益いずれも10%未満となっており、水産依存度は極めて少ない。ただし給与水準ではニッスイ・マルハニチロにやや及ばず、平均年収は持株会社の241人に絞っても680万~710万円ほどで推移。総合職の場合では、30歳で年収490万~550万円、課長職レベルで年収750万~880万円が目安となる。その代わりに住宅補助は充実しており、若手社員のうちは月額1万円以下で借上げ社宅に入居できるために住宅コストの負担は軽く済む。