企業概要
トヨタ紡織は、自動車用シート・トリム・カーペット・樹脂部品などを製造するトヨタグループの自動車部品メーカー。1911年に豊田佐吉が自動織機を用いた紡績会社として創業。戦時中にはトヨタ自動車と合併したが、戦後には再分離。1960年代には紡績業で発展した他、ボウリング場経営にも進出した。1972年から自動車部品事業へと進出してイグニッションコイル・自動車用シート表皮の生産を開始。1980年代以降には日本国内の繊維産業の衰退により、自動車部品を主力とする自動車部品メーカーへと転換。現在では自動車内装品の分野において国内シェア1位、世界シェア3位に位置している。
・トヨタグループの自動車部品メーカー、シートなどの内装部品に強い
・売上高と利益いずれも好調、財務体質は普通レベル
・平均年収722万円で自動車部品メーカーとしては良好、福利厚生はまずまず
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:63(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用実績は年間70名~100名と企業規模なりだが、うち文系採用枠は15名~30名ほど。愛知県内では有名企業であり、同県出身者には根強い人気を誇る。
採用大学:【国公立】名古屋大学・名古屋工業大学・金沢大学・三重大学・岐阜大学・三重大学・豊橋技術科学大学など、【私立】同志社大学・関西学院大学・立命館大学・法政大学・東京理科大学・芝浦工業大学・豊田工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
トヨタ紡織の売上高は2021年まで1.2兆〜1.4兆円のレンジで推移していたが、同年以降は増加傾向。直近の2023年には売上高1.95兆円に到達*1。営業利益は470億~780億で横ばいが続いている。
*1:2023年の業績好調の理由は、①売上高の約90%以上を依存するトヨタ自動車の新車販売の好調による恩恵、②為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
トヨタ紡織は、日本事業(日本国内における自動車部品の製造)、北中南米事業(アメリカ・メキシコ・ブラジル・アルゼンチンなど)、中国事業(中国)、アジアオセアニア事業(タイ・インド・インドネシアなど)、欧州アフリカ事業(フランス・ポーランド・トルコ・南アフリカなど)、の5事業を有する。
当社はかつて紡織業を主力としていたが、1970年代からは自動車部品メーカーへと転換。現在では世界87拠点体制でトヨタグループ向けの自動車部品製造を担っている。ただし、現在ではトヨタグループ向け取引が約90%以上と極めて高く、トヨタ依存体質が色濃い。
✔最終利益と利益率
トヨタ紡織の純利益は長期的に250億~450億円ほどで横ばい。2022年には純利益146億円まで低迷したが、2023年には578億円まで増加*2。営業利益率は長期的に0%〜3%で推移していたが、直近では5.52%まで改善。
*2:2022年の純利益の減少は、①ロシアによるウクライナ侵攻を受けたロシア事業からの撤退費用の計上、②日本国内における車種構成の変化による利益減少、など。いずれも一過性の要因であったため、翌年の2023年には利益回復している。
✔自己資本比率と純資産
トヨタ紡織の自己資本比率は長期的に35%〜40%レベルで推移しており、大手自動車部品メーカーとしては高くも低くもない標準的な水準。純資産は右肩上がりで増加しており、直近の2023年には4,929億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
トヨタ紡織の平均年収は670万~720万円ほどで安定的。総合職の場合、30歳で年収520万~600万円、課長職レベルで年収950万~1,050万円が目安。当然に親会社であるトヨタ自動車より給与面は見劣りするが、自動車部品メーカーとしては良好な水準にある。
✔従業員数と勤続年数
トヨタ紡織の単体従業員数は8,200人~8,400人ほどで長期的に安定。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は4.69万人ほどであり、かなりの大所帯である。平均勤続年数は緩やかな増加傾向が続いており、直近で18.0年と大企業の標準的水準をやや上回る。
総合評価
企業格付け:CCC
トヨタグループにおいて内装部品(シート・インパネ•フロアマットなど)を供給している自動車部品メーカー。親会社のトヨタ自動車は当社株式の約30%を保有する筆頭株主であり、当社が手がけた内装部品はトヨタブランドの大衆車からレクサスブランドの高級車ラインにまで幅広く採用されている。業績はトヨタ自動車の業績好調を追い風に、2022年から売上高が急進。2023年には売上高1.95兆円にまで達しており、自動車部品メーカーとしては大手と言えるだけの規模となっている。利益率という簡単ではせいぜい営業利益率4%前後と高くはないが、規模の大きさによって年間の純利益は200億〜500億円ほどになっている。強いて言えば、当社の売上高の約90%以上をトヨタグループに依存しており、グループ外との取引関係が希薄である点だろう。良くも悪くもトヨタグループに「おんぶに抱っこ」であるため、親会社の匙加減ひとつで命運が決まるリスクは否めない。
就職格付け:CCC
トヨタグループの創始者である豊田佐吉が紡績会社として興したものの、1970年代から自動車部品メーカーに転換した企業。当社は1911年に事業を開始しているため、1930年代に誕生したトヨタ自動車よりも歴史は更に長い。主力工場のほとんどが愛知県周辺に集結しているため、中部地方内であればそれなりに知られた有名企業である。給与水準は平均年収670万円〜720万円と自動車部品メーカーとしてはやや高めレベル。総合職の場合、30歳で年収520万~600万円、課長職レベルで年収950万~1,050万円が目安となる。福利厚生は独身寮があるものの、愛知県内だと家賃補助制度の適用外となるのが痛い。とはいえ中部地方で暮らす分には何ら生活に不自由しない待遇であるため、トヨタグループへの収縮を目指すのであれば良い選択肢だろう。ただし、当社にはトヨタ自動車からの天下り先としての側面もあり、現経営陣を含めて同社の出身者が多く、生え抜きでの出世枠には限りがある。