企業概要
ツムラは、医療用・一般用漢方製剤および一般用医薬品などを製造する製薬メーカー。1893年に津村重舎が東京・日本橋で漢方薬店として創業。1954年に女性薬『ラムール』を発売して知名度を向上した他、1960年代には入浴剤『バスクリン』が大ヒット。1976年には医療用漢方薬33処方が保健薬指定を受け、医療用漢方薬の地位を固めた。が、1996年には漢方薬(小柴胡湯)の副作用で死者10人が発生して経営危機に陥るも再建。現在では医療用漢方薬において国内シェア80%以上を誇る圧倒的首位。
・医療用漢方薬では国内シェア80%以上で圧倒的首位、中国事業に注力中
・売上高は増加傾向だが利益は横ばい気味、だが高利益率で財務体質も良好
・平均年収806万円で福利厚生も良い、平均勤続年数18年以上で定着も良い
就職偏差値
✔就職偏差値:66(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。給与・待遇は大手企業の中でも上位クラス、満足度の高い人生を安定して歩むことができる可能性が高い。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用数は年間20人~40人と少なめだが、漢方薬業界自体がマイナーであるため倍率はそこそこ。採用大学も幅広い割に待遇はかなり良いため、穴場かもしれない。
採用大学:【国公立】東京工業大学・東京農工大学・鳥取大学・岐阜大学・山形大学・名古屋市立大学・宮崎公立大学など、【私立】慶應義塾大学・東京理科大学・南山大学・成城大学・西南学院大学・日本体育大学・星薬科大学・長浜バイオ大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
ツムラの売上高は2020年まで1,100億~1,200億円で推移していたが、同年以降は増加傾向。2024年には過去最高となる売上高1,508億円に到達*1。営業利益は長年に渡って160億〜220億円ほどで安定的。
*1:2020年頃から売上高が増加に転じた理由は、①中国事業における原料生薬の販売増加、②COVID-19後遺症への処方増加、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
ツムラは、医薬品事業(医療用漢方薬・一般用漢方薬、一般用医薬品、原料生薬栽培・加工・保管など)のみの単一事業会社である。
当社は漢方薬分野に特化した事業展開を志向、かつては入浴剤・日用品なども扱っていたが主力事業との相乗効果がないとして2008年に事業売却。現在では漢方発祥の地である中国市場へと逆進出しており、将来的には売上高の半分以上を中国事業で確保することを目指している。
✔最終利益と利益率
ツムラの純利益は長年に渡って120億〜180億円ほどで横ばい。営業利益率は長期的に13%〜18%ほどで推移しており、かなりの高利益率となっている*2。
*2:大手製薬メーカーは新薬の研究開発に莫大な資金を投じることでブロックバスターと呼ばれる革命的新薬を生み出して利益を得ることが通例。が、当社は漢方薬という分野ゆえに新薬開発の競争は薄く、高い利益率を生み出せる(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
ツムラの自己資本比率は長期的に60%以上の水準で安定しており、財務体質は大いに健全。純資産は緩や右肩上がりでの増加傾向が続いており、直近の2023年には純資産2,473億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ツムラの平均年収は800万〜820万円ほどで長期的に安定。大手製薬メーカーと比べるとやや低めだが、他業界と比較すれば企業規模の割には高めの水準といえよう。大卒総合職であれば30歳で550万~690万円ほど、課長職レベルで1,000万~1,200万円ほど。
✔従業員数と勤続年数
ツムラの単体従業員数は長期的な微増傾向が続いており、直近では2,711人となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は4,100人ほど。平均勤続年数は18年~20年ほどで推移しており、従業員の定着はとても良い。
総合評価
企業格付け:B
創業130年以上の歴史を持つ、漢方薬分野における巨人。医療用漢方薬においては当社単独で国内シェア80%以上を掌握しており、事実上の寡占企業である(業界2位のクラシエで国内シェア10%前後。業績については極めて安定型であり、営業利益160億〜220億円・純利益160億〜220億円で横ばい。1990年代には薬害事件を引き起こして経営危機に陥ったこともあったが、リーマンショック以降はまったく安定的に利益を稼げる企業へと変革。財務体質についても自己資本比率60%以上で安定しており、極めて安定的といえる。強いて言えば、将来的に中国事業で売上高の50%以上を確保しようとする長期ビジョンについては賛否両論。人口減少に直面する国内市場に依存していては将来の成長も得られないのは事実であるが、漢方発祥の地である中国市場で成長を掴めるかについては意見が分かれる。2023年5月には中成薬メーカー・陝西紫光辰済薬業有限公司を買収するも、地元政府から「国家政策・関連法規の解釈違い」を理由に申し入れがあり、たった2か月後に再び手放す事態にも。
就職格付け:B
日本を代表する漢方薬メーカー。ドラッグストア等でも当社の一般用漢方薬が手に入ることもあり、(漢方薬の使用頻度がそれなりにある)中高年層を中心として一般知名度はかなり高い。製薬業界でも漢方薬分野ゆえにやや特殊な立ち位置ではあるが、給与水準は業界水準を考慮しているがゆえにかなり高め。平均年収は長期的に800万円以上で推移しており、大卒総合職であれば30歳で550万~690万円ほど、課長職レベルで1,000万~1,200万円ほどには達する。福利厚生もかなり恵まれており、住宅補助制度では家賃額の約75%が終身に渡って支給される。補助比率が75%と高いうえに終身に渡って家賃補助を支給できる会社はかなり珍しい。年間休日日数も128日とかなり多めであり、長期休暇もしっかり休める。特筆すべきは平均勤続年数が18年以上とかなり高い点にあり、従業員の満足度の高さが伺える。総じて良好な待遇にも関わらず、総合職の出身大学もハイレベル大学~中堅大学まで幅広く採用。なかなかの隠れ優良企業である。