企業概要
スズケンは、医薬品・一般医薬品の卸売を主力とする医薬品専門商社。1932年に鈴木謙三が医薬品商店『鈴木謙三商店』として名古屋市東区で創業。メーカー系列ではない独立系卸として、顧客が必要とする医薬品を調達する『購買代行』で事業を拡大。1965年には医薬品商社として国内首位に発展、1975年には医療機器製造にも参入した。現在では医薬品専門商社として国内3位の地位を誇り、全47都道府県に営業拠点を展開する。医薬品メーカー支援や物流受託、保険薬局や介護などにも進出している。
・医薬品専門商社として国内3位、愛知県地盤で日本全国に店舗・物流網を構築
・売上高・利益は安定的で景気後退局面にも強い、財務健全性は普通レベル
・平均年収705万円、手厚い住宅補助を加味した実質的な待遇は業界トップクラス
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:59(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用人数は年間20人~85人ほど、年度による採用人数の枠数変化が大きい。医薬品専門商社として業界3位の大手企業だが中堅大学からも幅広く採用しており、意外な穴場でもある。
採用大学:【国公立】筑波大学・金沢大学・静岡大学・熊本大学・滋賀大学・岐阜大学・佐賀大学・名古屋市立大学・北九州市立大学など、【私立】明治大学・学習院大学・立命館大学・成蹊大学・名城大学・中京大学・龍谷大学・亜細亜大学・山梨学院大学・東邦大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
スズケンの売上高は2021年まで2.0兆~2.2兆円ほどで安定的だったが、2023年には過去最高となる2.38兆円に到達している*1。営業利益は2020年のみ91億円まで後退*2したが、同年を除けば180億~350億円レベルでの横ばいが続いている。
*1:2023年に売上高が増加した理由は、①COVID-19治療薬が薬価収載され一般流通を開始したことによる販売増加、②希少疾病薬・バイオ医薬品・再生医療製品などの販売増加、③物流コスト上昇を踏まえた価格交渉の進展、など。
*1:2020年に営業利益が減少した理由は、①COVID-19感染拡大による病院の受診控えによる医薬品の販売減少、②独占禁止法違反事件に伴う入札指名停止による影響(参考リンク)、など。
✔セグメント別の状況
スズケンは、医療用医薬品事業(医療用医薬品・診断薬・医療機器・医療材料の卸売など)、ヘルスケア製品開発事業(医療用医薬品・診断薬などの研究開発・製造)、地域医療介護支援事業(保険薬局・介護サービスなど)、医療関連サービス事業(医薬品メーカー物流受託・流通受託など)、の4事業を有する。
当社は医療用医薬品事業を主力としており、同事業が売上高の約84%・利益の87%を占める。特筆すべきは医薬品メーカーから物流機能を受託する『物流受託』に注力している点にあり、メーカー物流と卸物流をすべて取り込み、製薬企業から医療機関までの供給を一手に支えている。
✔最終利益と利益率
スズケンの純利益は2020年のみ78億円に交代しているが、同年を除けば140億~300億円レベルで横ばい。営業利益率は1%前後での推移が続いており、事業規模の大きさによって稼ぐ構造となっている。
✔自己資本比率と純資産
スズケンの自己資本比率は長期的に30%台で推移しており、高くもなければ低くもない。純資産は2020年まで増加傾向が続いていたが、同年以降は3,900億~4,100億円レベルで横ばい。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
スズケンの平均年収は長期的に600万~700万円ほどで推移している。実際には、事業会社の総合職・30歳で年収480万~550万円ほど、課長職レベルで年収750万~880万円が目安。製薬メーカーと比べると給与水準は低め。
✔従業員数と勤続年数
スズケンの単体従業員数は長期的な減少傾向が続いており、2023年は3,176人の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.30万人に及ぶ大所帯である。平均勤続年数は21.8年(2023年)と大手企業の標準的な水準を大きく上回り、従業員の定着が良い。
総合評価
企業格付け:CCC
医薬品専門商社として国内3位の大手であり、2000年代に業界再編が進むまでは長年に渡って国内首位に君臨し続けてきた業界の名門。厳格な品質管理のために、すべての医薬品の流通経路をトレーサビリティシステムによって記録したうえで必要な時に必要量を配送する物流ネットワークを構築している。医療DXにも注力しており、2017年からは薬局・病院にIoT医薬品保管庫を設置したうえで在庫品をRFIDで遠隔監視する『キュービックスシステム』によって消費分を自動で補充する仕組みを整えつつある(参考リンク)。業績においては、売上高・利益いずれも安定的であり、良くも悪くも横ばい傾向が強い。医薬品は景気変動に左右されることなく必要とされる必需品であるがゆえに、景気後退局面にも業績が安定しやすいことは当社の強みである。財務体質においては自己資本比率33.9%(2023年)と普通であるが、業績が安定しているために欠点というほどではない。
就職格付け:CC
愛知県名古屋市発祥の医薬品専門商社。社名の『スズケン』は創業者である鈴木謙三の愛称に由来しているが、現在では鈴木家は当社の大株主でもなく経営にも関与していない。1975年から代表取締役として業績拡大を牽引してきた別所芳樹氏(現在は取締役最高顧問)が大きな影響力を持っており、大株主にも別所家が名を連ねている。与水準においては平均年収705万円(2023年)と業界上位級であり、総合職・30歳で年収480万~550万円ほど、課長職レベルで年収750万~880万円が目安となるだろう。福利厚生もかなり優れており、30歳以下の若手社員は借上げ社宅制度によって月額家賃の約80%が補助される他、転勤をした場合にも月額1.2万円で借上げ社宅が与えられる。こうした福利厚生を加味した実質的な待遇は、業界首位のメディパルHDやアルフレッサHDに勝るとも劣らず、まさに医薬品専門商社としてトップクラスである。