企業概要
スクウェア・エニックスホールディングスは、家庭用ゲーム機・PC・スマートフォン向けゲームなどを手掛ける大手ゲーム会社。2008年にゲーム会社大手のスクウェアとエニックスが合併して誕生。RPGゲーム大手の2社が合併することでスケールメリットを生かして開発力を底上げすると共に、ゲーム業界トップクラスの大手へと躍進。現在はゲーム会社として国内7位の売上高を誇り、世界的認知度がある『ファイナルファンタジー』『ドラゴンクエスト』『キングダムハーツ』など著名ブランドを多数擁する。
・業界7位の大手ゲーム会社、RPGゲームでは世界的タイトルを多数保有
・売上高は増加傾向だが利益減少、無借金経営で手元資金潤沢
・30歳で年収500万〜600万円ほど、ゲーム業界では珍しく福利厚生も充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用実績は年間40名~60名とかなり少なめ、しかもゲーム業界の最大手の一角なので、門戸は相当に狭い。芸術大学・専門学校からの採用も多く、ハイレベル大学の出身者が必ずしも有利でもない。
採用大学:【国公立】大阪大学・東京外国語大学・東京芸術大学・豊橋技術科学大学など、【私立】国際基督教大学・武蔵野美術大学・東京工芸大学・名古屋芸術大など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
スクウェア・エニックスホールディングスの売上高は2020年頃から3,000億円超へと増加*1。同年以降は3,300億~3,600億円レベルで推移している。営業利益は2021年に592億円に達したが、同年以降は減益傾向。
*1:当社の売上高が2020年ごろから急増した理由は、①主力のゲーム販売においてパッケージ販売からデジタル販売への移行に成功した点、②継続課金モデルの完成による収入増加、など。
✔セグメント別の状況
スクウェア・エニックスホールディングスは、デジタルエンタテイメント事業(家庭用ゲーム機・PC・スマートフォン向けゲームなど)、アミューズメント事業(アミューズメント機器・レンタル、施設運営など)、出版事業(コミック・ゲーム関連書籍など)、ライツ・プロパティ事業(二次的著作物の企画・制作・ライセンス許諾など)、の2事業を有する。
ゲーム会社のイメージが強い当社であるが、アミューズメント機器・書籍出版・ライセンスビジネスなども一定の存在感がある。とりわけ出版事業は合併前のエニックスから引き継いだ経緯があり『月刊少年ガンガン』などを手掛けている。
✔最終利益と利益率
スクウェア・エニックスホールディングスの純利益は2021年・2022年に500億円前後にまで達したが、2023年には減益に沈んだ*2。営業利益率は9%~13%ほどで推移しており、ゲーム会社としては中庸な利益率。
*2:2023年に利益急減した理由は、①新作『ファイナルファンタジー16』の販売停滞、②一部ゲームの開発中止による特別損失221億円の計上、が主要因。新中期経営計画において『量から質』への転換を掲げたことも影響。
✔自己資本比率と純資産
スクウェア・エニックスホールディングスの自己資本比率は70%以上の高水準で推移しており、実質無借金経営も達成している。純資産は2022年まで右肩上がりで増加しており、直近でも3,171億円を確保できている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
スクウェア・エニックスホールディングスの平均年収は直近で1,313万と高めだが、これは持株会社の26人のみの平均年収。総合職の場合、30歳で年収500万〜600万円、課長職レベルで年収800万~900万円が目安。平均年齢も47歳と高めだが、これも持株会社の26名の平均であるため参考にならない。
✔従業員数と勤続年数
スクウェア・エニックスホールディングスの単体従業員数は長期的に20人前後で推移しており、ほとんどの従業員は事業会社に属している。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は4,770人ほど。平均勤続年数は直近で5.8年と短いが、これも持株会社の26人の平均であるため参考にならない。
総合評価
企業格付け:B
ゲーム業界において国内7位の大手であり、売上高においては業界6位のコナミグループに肉薄する水準にある。合併以前のスクウェアとエニックスはいずれもRPG(ロールプレイングゲーム)の大手であり、スクウェアの『ファイナルファンタジー』・エニックスの『ドラゴンクエスト』は今なお世界的人気を誇るビッグコンテンツである。業績面では2020年頃から売上高は3,000億円を超える規模に成長、とりわけゲームソフトのデジタル販売・継続課金モデルへの移行が追い風となっている。が、2021年以降は利益面で苦戦を強いられており、2023年には一部ゲームの開発中止による特別損失221億円の計上によって純利益が492億円(2022年)から149億円(2023年)まで後退している状況。こうした状況を受けて、2024年5月には新中期経営計画を策定(参考リンク)、過剰な開発体制を縮小して確実に売れるゲームを生み出せる開発体制への移行を図っている状況。
就職格付け:B
多くの熱狂的なファンを抱える著名ゲーム会社であり、なかなかに就職難易度は高い。直近の平均年収は1,313万円と業界トップクラスにも見えるが、これは持株会社の26人の平均年収であり事業会社の従業員の給与水準とは異なる。実際の給与水準は総合職・30歳で年収500万〜600万円、課長職レベルで年収800万~900万円が目安。最近は大手ゲーム会社において人材獲得競争が激化したことで、定期的なベースアップが行われているため緩やかには増加している。ゲーム業界には珍しく福利厚生も充実しており、退職金制度・確定拠出年金制度など大企業なりの制度が整う。ブラックな業界イメージに反して毎週水曜日は19時終業デーとして残業時間を抑制している他、キャリア開発研修・語学教育支援・先端技術研修などもしっかり整っている。総じて、ブラックが労働環境の企業が多いゲーム業界にありながら、異業種の大手企業並みの給与水準・福利厚生が整っているのは大きな強み。ゲーム会社を志す場合には候補に入れておきたい1社である。
出典:株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス(有価証券報告書)